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年末は罪悪感無く夜更かしできる件⑩

 最近忙し目で遅れてしまった。

「にい、年も明けたし約束通り続きやろ!」


「良いよ」


 俺たちは中断していたソフトを再開し、対戦準備を始める。


「今回も勝つよ!」


 満面の笑みで楽しそうに宣戦布告する玲衣(れい)。普段の玲衣ならとっくにベッドで寝息を立てている時間だが昼過ぎから夕方にかけての昼寝が効いているのかまだまだ元気いっぱい。


 玲衣に癒される気持ちで読み込みを待ってると戦闘のBGMが流れ始めた。


 玲衣は先ほどの表情とは打って変わって真剣な眼差し。その顔を見て俺は様々な感情が混ざった笑みが溢れる。


 スイッチが入るアップテンポの曲に合わせてそれぞれのモンスターが繰り出される。


 本来ならここで考える場面。あらゆる事を想定しながら攻める手、安定択、やけくそな選択をするが今回は運ゲー。何も考えずに決定ボタンを2回押すだけ。

 後は神様に祈るゲーム。


「なんか勝てる気がする」


 通信待機中にぽつりと呟く玲衣。

 思わず言葉に反応して振り向くと打ち上げ花火を待つ子供のような仕草。眠気によって出た何とも言えない胃の不快感和らいだ。






「やった!また私の勝ち!」


 玲衣がすごく嬉しそうに両手を上げる。


 現在時刻は0時2分。1ターン目で瞬殺だった。

 流石に2連続自滅だし良い勝負にはなるだろと思っていたがおよそ800回に1回の一撃必殺を当てられた。


 運ゲーのハラハラ感を感じたい筈が瞬く間に終わってしまった。

 早く寝たい気持ちもあるがあっさり過ぎて逆に消化不良。このままだとなんか後味悪い。


 かと言って俺から「もう一回やろう」は負け惜しみみたいでカッコ悪いよな。……………と思ったが玲衣もどこか物足りなそう。だけど俺が眠たがってたから言いにくそうにしてる。


 俺は敢えて声を出しながらその場で大きく身体を伸ばした。

 ここは義兄(あに)として俺から提案するか。


「ねえ玲衣、また……」


 言い出そうとした時ゲーム用机に置いていたスマホが震えだす。


「!!!」「っっっっ!」


 あまり頻繁に電話を使わない為に電話の振動に慣れてない俺たちは飛び上がった。


「に、にいの?」


「うん」


 驚いたのを隠したいのかすまし顔ながらやや控えめに聞いてくる玲衣。


 (顔が赤いよ。あと安心したような表情。更に言えばびっくりした時の癖の自分の服を強く握りしめちゃうのが出てるよ。隠したいならもっと癖を直さないと。

 意地張ってる小さい子みたいでかわいいから指摘するつもり無いけど)


「にい?出ないの?」


 時間が時間だからか少し心配そうに見つめてくる。


 (大丈夫だよ、かけてくる奴は分かってる)


『ハッピーバースデー俺!』


 電話を取ると開口一番自分の誕生日を自分で祝うかつ俺に圧をかけてくる親友の歩夢(あゆむ)の声。

 正直知ってた。


「はいおめでとう」


 そこの付き合いは慣れているのでインスタント麺を作る時くらい心を込めて返す。


『まあ良しとしよう』


「俺はあんま良くないぞ」


『おっと厳しい!』


「用件は何?切って良いよな?」


『待った待った!明日の朝、初詣行こうぜ!』


 こういう時、俺は本当に切る時もあるので歩夢は慌てた声で提案した。


 歩夢の提案してを聞いて玲衣の顔を見る。


 玲衣は話を聞いていたみたいで察しよく口を開いた。


「行ってきなよにい。私も有美(ゆみ)と行く予定だから」


 へえ、玲衣が内村と出かけるの初めて知った。

 じゃあ俺も気兼ねなく行けるか。


「初詣行くか」






 電話の後、更に5戦モンスター勝負をやって結果、全敗だった。

 そして今年の運を不安視しながらほのかに玲衣の匂いがするベッドで目を瞑り、眠りに入る。

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