年末は罪悪感無く夜更かしできる件⑨
ちょっと間が空いてしまいました。Συγνώμη
「今年も色々あったね」
「そうだね」
玲衣の言葉に頷き、椅子の背もたれに身体を預ける。
今年か…。確かリビングで家族4人の年越しをしたっけ。
そして何より高校受験が大きい。倍率が低かったとはいえ1倍を超えていたし山白高校は割と進学校。落ちる、即ち玲衣と違う高校になる可能性もあった。今でもあの緊張は覚えている。
「ふふっ、受験の日のにい、緊張による食べ過ぎで気持ち悪くなってたよね」
玲衣がこれまでの興奮がまるで見えない優しい笑みを浮かべる。
玲衣も同じ事考えてるのか。流石義兄妹だな。
ただ、それはそれとして自分の恥ずかしい過去を笑われるのはなんと言うか、とてもつつきたくなる。
そこで俺も玲衣の様子をニヤニヤ笑いながら話す。
「玲衣は何も食べれなくなってたじゃん」
「それは忘れて!」
「じゃあ俺のも忘れて」
俺の言葉に玲衣は頬を赤らめながら真剣な様子で顎に手を置いて永遠に聴いてられる可愛い唸り声を上げはじめる。
今の玲衣は眼福であり耳福なのだが、どこに悩む要素があるのかが分からない。いくら10年間以上、11年近く義兄妹でもまだまだ分からないところ多いな。
「なにで悩んでんの?」
とても気になって夜も眠れそうになかったので聞くことにした。
俺の言葉に玲衣はもじもじしながら答える。
「私の恥ずかしい姿は忘れて欲しいけど、…にいのかわいい姿はずっと覚えておきたいなって」
「おう………」
満月のような優しく照らす笑顔を向けられて自分の体温が一気に上がったのを感じた。
不意打ちを受け、思わず腕で顔を隠した上で顔を玲衣から背けてしまう。
玲衣って思ったことをまっすぐ伝えるよな。
義母さんも多分似たタイプだから遺伝なんだろう。
「にい、急にどうしたの?」
不思議そうな顔で覗き込んでくる。
玲衣はよく照れるけど自分が照れさせている自覚はあまり無いと思うんだよな…。
そんなまっすぐなところも良いところの一つである事には絶対間違いないけど。
火照った体を冷やす為に深呼吸をする。
それでも収まらない鼓動を気取られないように玲衣の目を見て向き合う。
「ど、どうしたの?そんな真剣な目」
「どうしても今年中に言いたい事がある。玲衣、今年も一緒の学校に行けて、一緒にいられて嬉しかった」
玲衣は驚きと困惑の表情で目を見開くが一息ついて口を開く。
「ありがとう。私も嬉しかったよ、にい」
お互いが気まずそうに視線を逸らし、時計を見る。
「にい!あと10秒!」
これまでの真面目な空気を吹き飛ばす明るい声を出しながら俺の両手を玲衣の両手で握られた。
俺はピントが合わなくて見えなかったけど目が良い玲衣が言うならば間違いないはずだ。
「10!9!…」
カウントダウンを始めた玲衣がとても楽しそうなので釣られて交ざる。
「3!2!1!」
「にい!あけましておめでとう!」
「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします、玲衣」
手を離さないままぼんやりと俺の目を見つめる玲衣。3秒ほど置いて満面の笑みを浮かべた。
「こちらこそよろしくね。にい!」
その笑顔は今年とは言わずに毎年、何年でも近くで見たいと思わせた。
あと3時間あるし余裕で書けると思ったらギリギリになった。




