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年末は罪悪感無く夜更かしできる件⑧

 少し遅れました。

 味が全くしない蕎麦を食べた後、歯を磨いて部屋に戻った。

 時刻は年越しまであと15分、だが体には確かな眠気を感じる。


 その場で少し考えた後、大きな欠伸をしながらベッドへ向かって歩き出す。しかし腕を掴まれてベッドまでは到達できなかった。


「にい、まさか寝るの?ここまで来て」


 上目遣いで俺の腕を引っ張る玲衣(れい)、その様子は出掛ける飼い主を引き止める犬のようだ。


 すごく甘えて来ている感じですごくかわいい。

 でもな・・・


「うーん、結構眠いから寝ようかな」


「分かったちょっと待ってて、にい」


 腕を離した玲衣はその動きのまま勢い良く俺のベッドに飛び込んだ。

 枕に顔を埋め、ベッドにしがみつく玲衣。


「寝れるもんなら寝てみな!」


 少し揺れてるにも関わらず部屋によく響く声で叫んだ。


 そう来たか…。くっそ、歩夢(あゆむ)の予想が当たってしまった。


 色々な感情が混ざり合い苦笑いを浮かべる。


「にい〜、私を好きにしていいよ」


 心臓が一瞬飛び出そうなほど跳ね上がる。

 顔は見えないが玲衣も顔を赤くしていることだろう。いや、していてほしい。俺だけこうなるのはなんか癪。

 それにしても好きにしていいと言われてもどうするべきか…。

 学校では常に肩身が狭い思いをしているが俺もれっきとした男子高校生。本当に好きにしていいなら一つや二つ…無いと言えば嘘になる。


 相手は家族であり義妹(れい)だ。

 いくら玲衣がブラコンでなんでも許されると気もするがやって良い事と歩い事がある。


 高くなってる頭と体を冷ますように大きく深呼吸をする。

 そしてお茶を濁すように緊張を隠せない声で玲衣に聞いてみる。


「そこを離れるのは?」


「ダメ、私を動かして」


 ダメ元で聞いてみたがやっぱりダメか。

 さて、どうしようかな。


 再び大きく深呼吸をして頭を回し始める。

 時間にして約10秒、頭をフルスロットルで回し続けて出した答えは・・・


「玲衣、モンスターゲームで俺が勝ったら離れてもらって良い?」


 玲衣はこちらに豆鉄砲を食らった顔を向ける。


「んー、対戦準備してないよ」


「『ゆびをまわす』勝負はどう?遊ぶ用にいるしさ、それに来年の運試しって事で」


 『ゆびをまわす』それは某モンスター系を対戦させるゲームでほぼ全ての技からランダムに一つ出る技である。そのラインナップは低威力技なら高威力技、効果がない技、強い積み技から自爆技を備えており、運試しとして人気が非常に高い技の一つである。それに何より対戦しやすい。


「それならいいよ!」


 提案を聞いた玲衣はベッドから勢いよく飛び上がってゲーム機を取りに行った。






「あはははは」


 お腹を抱えながら年末でなかったら近所迷惑になりそうな笑い声を出す玲衣。

 その様子を見て俺は眠気が吹き飛び、非常に冷静になっていた。


「玲衣笑いすぎ」


「だって、だって勝ち目前で自滅するもん」


 1試合目、玲衣はほぼ効果のない技が多く出て体力が満タンに近いのに対して、俺ら堅実な技が出た事で玲衣を後一撃まで追い詰める。しかし自爆技が出てしまいゲームの仕様上負け。

 2試合目は酷かった。同じように着々と削って行くが最後の最後で同じように自爆技、正確に言えば自分の残りHPをそのまま相手に与えて自分はやられる技で逆転負け。


 玲衣のテンションは最高に達していた。


「にい、どうする?まだやるの?」


 ニマニマとした顔で煽ってくる玲衣。

 とても義妹(いもうと)としてかわいい。かわいいがなんと言うか。

 負けず嫌いではないがとても悔しい。

 ただ、この流れだと絶対に勝てない。

 どうしようか。


 軽く唇を噛みながら時計を見ると、時計の長針は58分を示していた。


「あと少しで年越しだから年明けたらやろう」


「うん!」


 玲衣も納得したようで満面の笑みで頷く。

 昨日はMLB、今日はオランダ戦観てたらうっかり寝ちゃった。このような事が無いように気を引き締めるかもしれません。

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