年末は罪悪感無く夜更かしできる件⑦
鼻唄交じりで俺の前を歩く玲衣。
部屋の光を受け、艶やかに光る黒髪を靡かせて妖艶な雰囲気とうきうき気分の体の動き。スレンダーに成長した身体の中に子供心が見えて、とてもかわいらしい。
「玲衣ご機嫌だね」
「この時間の夜食はほとんど食べたこと無いもん!」
俺の質問にその場で軽やかに半回転をした玲衣は初日の出よりもうんと輝かしいとびきりの笑顔で答える。
子供っぽく可愛い笑顔を前に心がくすぐられる感覚になる。
その結果、いつの間にか玲衣の頭に右手を伸ばしていた。
(俺、何やってんだ……)
玲衣は俺の伸ばす手を抵抗せずに受け入れる。
拒否されなかった事に安心し、さらさらの髪を感じながらゆっくり手を前後させる。
「にい……」
(っっっっっ!!!………危な。意識飛びかけた。可愛すぎるだろ、俺の義妹)
恍惚な表情で吐息と一緒に漏れ出た声。一瞬遅れて玲衣がその事に気が付き、恥ずかしそうに頬が赤く染まった顔を俯かせている。しかし、俺に送る視線はもっと求めているように感じる。
息を呑んで半歩近づく。
視界が揺れると錯覚するほどに心臓が高鳴っている。
既に目は冴え切っており、眠気は微塵も感じない。
心の奥底でメラメラと燃える衝動に駆られるように左手も玲衣の顔まで伸ばそうとする。
「玲衣〜、お兄ちゃん起きた〜?そろそろ時間だよ〜」
「「っっっ!」」
義母さんの声に体が跳ね上がりかけ、声にならない声が出る。
俺の手は一瞬で引っ込み、玲衣は素早く後ろに下がって距離を取った。
(義母さん、ある意味ナイスタイミング…)
玲衣は瞬く間にいつもの調子に戻って言った。
「にい、早く行こ!」
「そうだね」
何事もなかったようにリビングへ向かう玲衣。
だが、黒髪から覗く玲衣の耳は火が出そうに感じる。
階段を下りる玲衣の背中をしばらく見つめる。
(なんか俺がっかりしてるな…。あれで良かったと頭では分かってるのに…)
まとまり切らずにぐるぐる回り続けている頭をリセットする為に肺を膨らませるため息交じりの深呼吸をした。
「にい〜、蕎麦伸びちゃうから早く〜」
「あ、ごめん。すぐ行く!」
(それにしても玲衣、こんなに可愛かったっけ?元々贔屓目抜きにも超可愛かったけど…)
2人で分けたカップ蕎麦の味を俺は何も感じなかった。
なんか⑦まで来てる…。本当は⑤くらいで終わると思っていた。




