普段言わない呼び方は恥ずかしい件③
佐伯歩夢と内村有美に連絡して約15分、家のインターホンが鳴る。
「いらっしゃい!有美」
「いらっしゃい歩夢」
「ありがとう玲衣ちゃん」
「命の恩人だ!良泰!」
歩夢は大袈裟な仕草で俺に抱きつこうとしてきたが生憎俺は男のハグに興味がないためするりと躱した。
「とりあえず上がって!」
「「おじゃまします」」
玲衣の言葉でみんな一緒にリビングへ向かう。
俺たち4人は友達と不和になる可能性がある妨害しながら手札を0にするゲームをしている。
「おい!良泰!2人の仲でしょ!分かってくれるよな!?」
「うーん、………プラス4」
「ああああああああああああ、クソが!友達やめる!」
歩夢は頭を掻きむしり声を荒げる。もし、自分の机があったなら台パンを連打するほどに。
その様子を見た玲衣と内村は「小学生かよ」と笑みを浮かべていた。
「お!次のターンの内村覚えておけよ!」
「私は何もしてないよ!」
良い妨害カードが引けたのか魔王みたいな笑みを浮かべる歩夢。内村の顔が少し引き攣っている。
内村の番、手札を引くも良いものが引けなかったらしく玲衣に番が回った。
「ふっふっふ!」
不適に微笑む玲衣、これは・・・
「良泰と違って私は友達を大切にする!リバース!」
何!?
「女神しゃま!」
ドヤ顔で胸を張る玲衣を大袈裟に崇める内村。その内村は無難な数字を出し注目の歩夢の番。
「さっきのお返しだ!プラス2が3枚でプラス6!」
良かった!そっちのプラスで。
それならば・・・
「じゃあさらにプラス2」
「良泰!?」
玲衣が目を見開いて一瞬固まった。
しかしすぐに動き出し迷う事なく出したカードは・・・
「私もプラス2。ごめん有美」
言葉とは裏腹に全く悪びれる様子もなく内村に10枚プラスを押し付けた。
「!?!?!?!?…玲衣ちゃん酷い!」
安全な位置だと思っていた足場が崩れて集中砲火を受けた内村は涙目になっている。
うんうん、俺も酷いと思う。玲衣は友達を大切にするんじゃなかったの?
「しゃあああああ!」
「ぐすん、玲衣ちゃんのせいで負けた」
結局俺が1番、玲衣が2番、そしてめちゃくちゃ熱い泥試合の末に歩夢が3番を勝ち取った。
白熱して喉が渇いたな。俺が飲む麦茶は…玲衣の奥か。
「おね、玲衣。そこのお茶とってくれない?」
危ない。朝からずっと玲衣を『お姉ちゃん』って呼んでるから言いかけた。こいつらの前で漏らしたらどうなる事か。
「はい、良泰」
「ありがとう玲衣」
ボトルのペットボトルを受け取り、自分の紙コップへ注ぎ始める。
「ねえねえ玲衣ちゃん、UΝ◎の時も気になったけど良泰の呼び方変えたの?昨日まで『にい』って呼んでたじゃん」
鋭い眼光を放つ内村。
「ついさっき雪蔵を呼ぶ時「おね」って言ってたよな」
「それは本当かね?佐伯君!」
内村は顎に手を当て、何かを考えはじめた。
これはバレたら面倒くさい。
分かってるよね、玲衣!
俺の視線に同じく目で「分かった」とサインを送られた気がした。
「まさか!なんかの理由で兄妹の立場を入れ替えているのでは?」
「何!本当か!」
大きく目を見開いた2人はお互いの親友との距離を詰める。
「いや、そんな訳ないじゃん。玲衣も俺の事名前で呼びたい気分だったんじゃないの?」
よし、我ながら良いポーカーフェスだったと思う。後は玲衣がうまく誤魔化してくれれば行ける!
横目でチラリと玲衣を見る。
「一時的に私が姉でにいが弟!?そんな事やる訳ないじゃん!何考えてんの!理由は!」
だめだーーー!玲衣の仕草は一言で表すと正に挙動不審。目が激しく泳ぎ回り、声も裏返っている。
「佐伯警部補、これは間違えなくクロですぜ」
「ああ、尋問確定だな内村巡査」
「何で私が下なの!?」
「だってUΝ◎俺の勝ちじゃん」
正論(?)のストレートを喰らった内村は拳を握りしめ「ぐぬぬ」と唸っている。
それにしてもあんたらノリ良いな。最近話した事ないのに。




