普段言わない呼び方は恥ずかしい件②
「お姉ちゃんって呼んで」
「えっ?」
呆然として頭を上げた俺に玲衣は続けた。
「にい、私の事、お姉ちゃんって呼んで」
「なんで?」
「にいって私の事玲衣って呼ぶじゃん?」
「そうだね」
床に手をつきながら正座する俺は同意する。
「お姉ちゃんって呼ばれたい!」
こうして俺の過去一恥ずかしい1日が始まった。
「ああー!また負けた!」
「姉ちゃん、台パンはダメだよ」
「むっ!」
玲衣は眉を顰め、頬を膨らませながらこっちを見てきた。
近づいてきた玲衣にそのまま俺の肩をガッチリ掴まれ大きく身体を揺らされる。
視界が揺れる。
いつもの義兄妹(義姉弟)のコミュニケーションの一環だが今日は少し激しい。俺が完全に悪いから甘んじて受け入れる。
こうしたコミュニケーションにストレスは無い。寧ろ少し楽しいまである。聞くところによるとこの歳で俺たちのような仲の兄妹は少ないらしいからだ。
…それにしてもこの様子を見ると歩夢は悪態つきそうだな。
「今度は大乱戦やろ!」
「はいはい」
「やった!また勝った!」
「オネエチャンツヨスギルヨー」
玲衣はニッコニコで両手を上げる。
俺は大乱戦は何故か大の苦手ゲーム。それに対して玲衣は結構な猛者なのでいつもボコボコにされている。それに加えて今日は鬱憤が溜まっているのか初心者相手に大人気ないハメ技を連発している。
「もう一回!」
「コンドハマケナイゾー」
そのまま暫くサンドバッグ状態にされる。
「よし、また勝ち!」
「サスガオネエチャン」
『ピロン』
ほぼ同時に2人の携帯からメッセージアプリの着信音がした。
俺と玲衣は顔を見合わせる。
「一旦誰からのメッセージか見て良い?」
「私も見たい」
机に伏せていた携帯を見る。
『妹が友達を家に連れてきていて居づらい、助けて』
何となくだが歩夢の心境を想像して同情する。
「誰からだった?」
「歩夢、「妹の友達が来て居づらい」って」
「確かに良泰が私の知らない友達を呼んでたら居づらいね」
性別は違うが似たような状況を想像した玲衣は苦笑いを浮かべた。
「有美も似たようなものだって、弟の友達が…」
内村もか…。妹や弟がいると大変だな。
「良泰と2人が良かったらだけど呼ぶ?」
玲衣は自分天才、と言った表情で提案してくる。
俺と親友の佐伯歩夢、玲衣と親友の内村有美の4人は割と話せる。例えどちらかが来れなくても気まずい事にはならないと思う。少なくとも家よりは居やすいと思う。
「良いね、早速歩夢に聞いてみる」
「私も」




