深夜にお腹が空くと寝られない件①
昨晩は家族と豪華な夕食を終え、いつも通りの就寝準備でベッドに入った。
しかし、学校と夕方の居眠りが良くなかったのか短く浅い眠りを何回か繰り返すことになっている。
(お腹空いた)
お腹の虫が騒ぎ出し、ベッドに仰向けになる。
目を閉じるも腹の音が寝るなと強く主張している。
枕元にあるデジタル時計の数字は午前3時。
だらだら寝転がっていたら頭が完全に冴えてきたのでゆっくり身体を起こした。
(何食べよう。そうだ、ついでに玲衣の枕元にプレゼント置こう)
目を擦りながら静かに歩く。
キッチンへ行こうと部屋の扉を開けて廊下へ出ると・・・
「あっ」
「に、にい!?」
丁度一緒のタイミングで廊下に出た玲衣とバッチリ目が合った。
「にい、どうしたの?」
目を見開いた表情で玲衣が質問してくる。
「お腹空いたから何か食べようと」
「そ、そう…」
玲衣の顔がほんのり赤くなり下を向いた。
ん?玲衣の顔色、心なしか血色悪い?表情もいつもよりは…。
「玲衣は何しようとしてたの?」
「えっ!?」
玲衣の身体が確かに跳ねた。
「わ、私もお腹が空いて何か食べようかなぁって」
うーん、これは隠し事をしている。幼い頃から言動を見ているからバレバレなんだよな。
「本当は?」
重い瞼を目一杯上げて玲衣の瞳を凝視する。
「だから…お腹空いた」
引かずにしばらく瞳を見続けると玲衣が恥ずかしそうに視線を逸らした。
「にいに…プレゼントを置こうと思って…」
ぐはっ!
身体をもじもじさせながら耳まで真っ赤の恥ずかしがっている顔の義妹が大きく開いた目に入ってくる。
何かが弾けそうな程の威力のうまく言い表せない感情が頭の中を駆け巡る。
「ありがとう…」
異常な高鳴りを見せる体で感謝の言葉を捻り出した。
「まだ目開けちゃダメだよ」
「分かってる」
俺は今、リビングの椅子に座り、玲衣のプレゼントの用意ができるまで大人しく目を閉じている。
暗い視界の中で感じるのは玲衣が淹れてくれたインスタントコーヒーの香り。と言うことはスイーツ系か?帰ってきた時に甘い匂いがしたのもこれか?俺へのプレゼントであるならリビング兼キッチンに入らせたくなかったのも頷ける。
「目を開けて」
玲衣の指示で開けた目に入ってくるのは美味しそうなロールケーキ。視線を上げると不安、期待、恥ずかしさの混ざった玲衣の顔が窺える。
「おお、美味しそう。これ玲衣が作ったの?」
「うん。にい前さ、「ロールケーキを丸ごと食べたい」って言ってたから」
確かに言った。1ヶ月くらい前かな?玲衣と同じ部屋で漫画を読んでいる時にポロッと言った。記憶がある。
わざわざ作ってくれるなんて。これだけしてくれると俺のプレゼントがしょぼく感じちゃう。
「ありがとう」
「良いよ。プレゼントだし。それより速く食べて」
嬉しさの混ざった声で催促してきたので素直に従う。
切られていないロールケーキを崩さないように優しく手で持ち上げてかぶりついた。
生地の食感、甘さ、クリームの味、全てが丁度良く、俺の好みドンピシャ。
「うまい!」
「良かった。何回か試作してにいの好みに近づけたんだよ」
玲衣の顔のネガティブな感情が消えて僅かな安堵と大きな嬉しさに変わった。
マジマジと見つめる玲衣を気にせずにロールケーキを食べすすめていく。
「ほんとおいしい」
途中でコーヒーも挟みながらあっという間に残り半分になっていた。
「にい、美味しい?」
「おいしい」
「へえー、美味しい?」
「うん」
「好き?」
違和感を感じて食べる手を止めて玲衣を見る。
ほんの少し前まで元気だった玲衣は顔を上下に動かし始めていた。
今日から奇跡の3日連続投稿します。




