名探偵の憂鬱 1
ある晴れた午後。
今日もリックは、店舗兼自宅であるカルサンドのカウンターに顎を乗せ、日がな一日ぼんやり過ごしている。
先日の迷宮探索はものすごい不発に終わり、ギルドのソフィアに鼻で笑われ、報酬は銅貨一枚だけペッと投げられただけだった。
床に転がった銅貨の「チャリーン」が、ギルド事務所のホールに響いた。
金はあるから生活に困ることはないが、周りでヒソヒソ話されるのは若干辛い。
「エロ本だけってさぁ…。
せめて石炭でも採掘してくりゃ良かったのに」
ソフィアが低い声でブツブツカウンターの奥で言っているのが痛かった。
ちなみにくだんの遺跡で石炭が出た実績はない。
噂さえない。
そんな先日の記憶もありつつ、店先でうたた寝をしていると、通りの先で悲鳴が聞こえた。
「キャァアァ!!」
何事かと思ってカウンターから乗り出して見てみると、
「大変だ、人が燃えてる!!」
という騒ぎだ。
昼間から町中で物騒なことだ、と思いながら、とりあえずリックはカウンターをひょいと飛び越え、騒ぎの方向に走った。
海空が燃えていた。
ヴァンパイアだから、日差しにやられて燃えたのだ。
「あー、皆さんすいません、こいつバカだから、バカが移るから触らないでねー」
「あぁあぁぐるじぃいぃ」
「黙れバカ、てめぇはもう死んでるんだから今さら苦しむな」
リックは焼けただれる海空のハゲ頭をしばいた。
海空は黙った。
リックは道端に落ちていた大きな麻袋に海空をねじ込み、くすぶる麻袋を担いで店まで戻った。




