EX.280 「亡者達の祈り」
普通に投稿日忘れてました。
アキヒトは指先をユウスケに向ける。
「一瞬チクッてするかもよ」
アキヒトの能力はーーー『パーフェクト』。
それはこの世にある全ての能力を妖精という媒介を用いて発動する能力。
最古の能力であり、最新の能力。
それがアキヒトの持つ能力だ。
その数多ある能力からアキヒトが選び出したのは『侵入』。
端的に言ってしまえば人の思考に入り込む能力である。
「【思考盗聴の罪】」
アキヒトの指先から送られた魔力がユウスケを伝って、ハルト、山本に送られた。
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それはおおよそ30分前。
アキヒトは王室にある巨大な黒い真球に立ち往生していた。
どんな能力を使ってもビクともしない謎の球。
【ルールブレイカー】やムーンフェアリーがあればなんとかなるかもしれないが、前者はそれを使える人と絶賛喧嘩中であり、ムーンフェアリーの方はどれだけ呼んでも来てくれない。
困ったことにここで最大火力でブッパしても壊れそうなのはこの黒い球ではなくて王宮になりそうなので躊躇してしまう。
「これは・・・・・・もしかして固有結界?」
話には聞いていたが実際に見ることはなかった結界。
たしかーーー世界を自分の心で埋め尽くす究極の魔術、だっけか。
魔術はなぁ・・・・・・超覚醒があるけど、根本的なのはイメージの問題だからなぁ。
「これは一体なにかしら?」
「おっ!ユウキ。これはなぁ多分固有結界って奴だ」
ここでグダグダしていると後ろから、ポンと肩を叩いてユウキが現れた。
「随分とボロボロだなぁ。そんなに厄介な敵だったのか?」
「厄介だったけどそれ以上に面倒くさいものが多かったわ」
俺は軟膏を差し出す。
ヒーロー協会が積極的に売り出しているサポートアイテムだ。特殊なアロエが材料で気持ち早く怪我が治るらしい。
ユウキはそれを塗りながら話す。
「私が戦った白衣の女は覚えているわよね?」
「おう」
「その女を叩き潰した後ーーー溶けたのよ」
「溶けた?叩き潰した時にミンチになったわけじゃなくて?」
「そんなに野蛮じゃないわよ、私は」
「私は」のところにやけに力が込められているような気がする。失敬なと言いたいが、困ったことにここ2年の殺した数を考えると相当俺は野蛮だ。
「能力は自分の身体を変形させることで戦う奴だったのかーーーだとしたら自分の身体を溶かして逃げたんじゃないか?」
「アンタは逃げられたけど私の場合は違うわよ。逃げられた、と言うより消えてしまったという印象が強いわね」
ふーん、とアキヒトは唸る。
困ったことにそのような能力はありすぎる。どれがその能力だと言うのならばもう少し情報が必要だ。
とは言えユウキの直感がそう言うのならば、それは正しいと思う。
「だとしたらーーーもっと根本的なところでズレてしまっているんだよな。能力だとか環境だとか」
今の違和感はささくれをうまく処理できていない時と似ている。指先に残るどうしようもない違和感がそこにある。
「2009年のパンフレット」
「ん?」
「どうして2009年のパンフレットだったのかしら?普通毎年変わるわよね。内容は変わらないとしても発行日は変わるでしょう。地元の新聞だってテーマは変わらなくとも話の中身は変わるし」
「ああ。俺が貰った時も思ったな。在庫処理としても相当古いし、あのパンフレットの中にはオススメの料理店とかあったしな。今年は2018年だし9年前だし」
これが違和感だったとしたら相当なものだぞ。
正直あの時はギャグでスルーしていたけど、気にするところはそこだったのか?
2009年・・・・・・そういやトモキが言ってたな。
『それであの人の名前も姿も見たことがあるんだけどーーー確かあの人はもう死んでいるはずなんだ』
その情報は確か俺が星戦戦争の頃に流れたと言っていた。
俺が聖戦戦争に向かったのは2013年。
直接死を確認されない失踪状態から死亡認定されるまで大体3年から5年。
時期は、おそらく合っている。
「ユウキの言っていた研究所に行ってみたい」
「写真撮ったわよーーーあれ?」
「どうした?」
スマホを自慢げにひらひらさせていたユウキが驚愕の声を上げる。
「無いのよ!撮った写真が一つ残らず」
「その研究所での撮った写真が全てか?」
「ええ、何もかもが」
何が原因か分からない。
正直何もかも予想の付かないことが点々と続いている気がする。
「研究所へ連れて行ってくれ。直接見てみたい」
@@@@@
そして俺たちは真っ白な研究所へ辿り着いた。
そこで俺は気がついたことがある。
「古いなぁ」
「古い?物によっては古くてもおかしくはないでしょう。宇宙開発のパソコンだって最新式ではなくて古くて頑丈な物って聞いたことがあるし」
「それは確か誤作動を防ぐため単純な回路の旧型が採用されてるって話だったな。それとは違くて情報が古いんだ。ここにある全ての参考書が古いんだ」
「温故知新を大切にしているかもよ」
「それはあってもおかしくないけど実験なんて極論同じな結果を作ってはいけないんだよ。理科の実験じゃない仕事なんだから」
それにここに置かれているパソコンも機械も相当古い。この程度のスペックじゃ今はかなり更新が遅くなるというのに。
「消えたその女と人工ドラゴンの男が気になるな。そこに連れて行ってくれないか」
「女の灰はここにあるわよ」
「・・・・・・・・・・・・」
ヒョイと懐から灰を取り出すユウキさん。
お前さぁホントさぁ。俺たちのこと野蛮だと言ってるけど同じ穴のまじなだと思うよ。
「何よ」
「なんでもないよ。うん」
女の逆鱗には触れてはいけない。
それが俺の15年で学んだこと。
「こっちよ。あんまり驚かないであげてちょうだい」
「了解です」
俺はユウキに連れられて研究所の奥へと進む。
そこには巨大な人のホルマリン漬けの瓶が並べられていた。
「グロいなぁ」
「感覚による物じゃ無い?確かーーーここだったはず。あら?」
「どったの先生」
「先生じゃないわ。それと居なくなってしまっている。私の服ごと」
「どっかに隠れているのか逃げたんじゃないか」
「元々死んでいて無理やり合成された人よ。そんな簡単にーーー」
ユウキが言葉を失った目線の先を追うと、瓶の影に人の気配があった。
だが、その気配はあくまでそこに何かがある程度で、しっかりと見ると、隠れていない肌らしきものは樹木のように皺がれてやけに骨張っていた。
「あなたーーーちょっとどうしたのよ」
ユウキが彼の肩を揺らした瞬間、ポキっと彼が折れた。まるでーーーとっくの昔に枯れた木だったように。
「死んでるーーー?」
「ありえないわ!確かに骨張っていたけれども、この数分で死ぬような栄養失調具合じゃなかったもの!」
「だよな。ちょっと見せてくれないか」
俺はユウキを後ろに動かして、彼を調べる。
言われていた通り所々ドラゴンっぽい部分があるなぁ。
けどなんだろうこの違和感は。
この姿はまるで、まるでーーー
「まるでミイラみたいだ」
皮膚を掴む、するとボロボロと皮が崩れていく。
剥き出した中身は真っ黒だった。
「やっぱり死んでいるな。それに相当なぐらい死体が放置されている」
ここまで形が整っているのが奇跡なぐらいだ。
それも混ぜられた結果なのか、それとも彼自身もホルマリンに漬けられていたからなのか、その答えは見つからない。
「ーーー能力で調べられるかしら?」
「・・・・・・やってみるよ」
俺は能力『タイム』で作り出した針を指先で掴む。
そして彼の大腿骨を目掛けて突き刺した。
「取り敢えず目安は彼が死んだ日に設定してみた。これで分かるはずだ。いつ死んだのか」
するとギュン!と針が曲がるとーーー突然回っては止まるを繰り返し始めた。
「ーーーこれ、どう言うことなのかしら?」
「普通タイムは決められた時間になったら止まるはずなんだけどーーーなんか狂っているな」
本来であればありえない状況だ。
能力を発現したての5歳児でも能力を上手く使いこなすというのに。
「9年前とーーー昨日を繰り返しているな。一体これは」
「・・・・・・・・・」
「どうした?」
「いや、何となく思ったことがあるけれども・・・・・・あまりにも突拍子もないことだから」
「話してみてくれ」
ユウキは一旦は閉じた口を開いてこう言った。
「もしかして時間が何度も行き来しているじゃないかしら」
「それって・・・・・・!」
ユウキの言っていることはつまり、この人は何度もタイムスリップをしているということだ。
ありえないと言い切るのには否定できる要素がなかった。
唐突にこの国が壊れたこと。
突然人が灰に変わったこと。
ここにいる彼がとっくの昔に死んでしまっていること。
それに加えて俺は去年の秋ごろ、鈴音が一週間を逆に過ごした話を聞いたことがある。
限定的であれば時は巻き戻せることを知っている。
「それならばこの人だけじゃなくてーーー!」
俺は彼から針を抜いて床に突き刺した。
するとーーー針は先ほどと同じように動き出した。
「この国は錬金術で出来ているーーーなんで気づかなかったんだ!?」
「それってつまりーーー!」
「ああーーー錬金術で時を巻き戻しているんだ。それも何度も!この針の動き的に大体2日ぐらいだな。この国が限界になった日を繰り返しているんだ」
タイマーのストップとリセットを繰り返している。そんな簡単なことだ。
「けどそんなに繰り返しなんてしたら魔力が持たないんじゃないかしら?」
「多分ーーーそこは意地なんじゃないかな?人は死んだ時に大量の魔力を発することは発見されている。この国が謎の生物か機械か分からないけど滅亡させられた時、こう思ったんじゃないかな『この国の恥をさらすわけにはいかない』って」
「それと化け物を外に出さないでおきたい、ってとこかしら」
「そんなとこだろ。けどまあこれでやらなきゃいけないことがようやく分かった」
俺は『フラワー』の能力で花を生み出して、彼の足元に供える。
「やってやろうぜ元凶討伐!そしていい国だったって帰ってやるんだ」
ユウキは俺のそんな言葉に、ハッと鼻で笑うと。
「アンタそんなに楽しめなかったんじゃないかしら?」
「思い出話担当は任せるよ。原稿10ページくらいで頼むわ」
「面倒ねぇ・・・・・・。男どもにもやらせてやるわ」
「そのいきだな!」
俺は一度息を大きく吸ってーーー吐いた。
「きっとユウスケたちは件の元凶と戦っている!さっさと加勢に行くぞ!」
@@@@@
そうして再び話が今に戻る。
「っつーことはつまり、オレたちゃバウワンさんを倒さなきゃいけねーってか」
「心苦しいか?」
「いや。ちゃんと弔ってやらねーとなぁって思ってよ」
「そろそろ話は終わった?」
「!」
ユウスケたちの記憶を除いた時に知ってはいたが、深淵を覗かれたような悪寒が全身を撫でた。
魔王末席ーーー魔王と戦って勝利した身分ではあるが、ここまでのオーラを前にして武者震いは止まらない。
「思ってたよりもいいやつなんだな。話をする時間を与えてくれるなんて」
「そう・・・・・・?貴方たちは黙ってただけだよ?」
「そりゃそんなもんか。頭ん中で話している程度だし」
「それで・・・・・・貴方は誰?魔力は私よりも大きいなんて初めて見た」
「ん?俺か?俺はなぁ」
俺は一度ぐるっと周りを見る。
一度は倒れた仲間たちも、一呼吸終えて無事ではないだろうがしっかりとその足で立っている。
ーーーやることは、分かってんだろ?
「お前を倒して、この国を解放してやる者だよ!」
次回:8月12日




