EX.279 「龍神攻略戦」
総計300話なんだってさ
一つ羽を振るわせるだけでこの地下ではミキサーに混ぜられるのと同意だ。
山本達は目の前にある龍に対し、低い体勢をとった。
もちろん降伏するためではない。
敵の攻撃に確実に対応するためだ。
「ララ・フラア・アファースト」
「一瞬時間を稼いでくれ。必ず私が仕留めるーーー!」
その言葉を聞いて山本は後ろの二人を見る。
二人はゆっくりと頷く。
ユウスケは抜き身の刃を仕舞い、居合の準備をする。
ビシャエラ・バウワンはA級ヒーローで、彼自身盾がメインであり、硬さが自慢だとは言っていた。
だが、その彼の自信満々の発言を信じて、確実な隙を作る。
「ーーーあまりやる気を感じられない」
「「「!?」」」
速いーーーっ!?
仕留める方針を伝えようとした瞬間、ドラゴンーーー否、トト=ラシェラス・ビビアンは前に立っていた二人の奥、ユウスケの目の前に立っていた。
ユウスケは思わず生唾を飲む。
これほどまでのプレッシャーは春に出会った魔王と同じだ。
心臓を針で撫でられる嫌な感覚がユウスケを襲う。
「もしかして・・・・・・死にに来た?」
「違ぇよ。ヒーローはチームプレイなんだ。いつだって一対一はまた今度な」
先ほどまでの歪なドラゴンの姿ではない。
ジェット機を思わせる風流口に、はじめに見つけた時の人型ーーーそれが合体した姿。
「時雨流ーーー」
「【トライーコール】」
時雨流の抜刀は神速ーーーだが、それ以上にビビアンの一撃は速かった。
衝撃が面で打ち込まれる。
全身をノッキングされたような一撃はユウスケを軽々と吹き飛ばした。
「ユウスケさん!」
「ユウスケッ!!」
「【ルルルヴァズダード】」
ビビアンを中心にしたカマイタチが全員を襲う。
吹き飛ばされたユウスケを除いて、三人はカマイタチの隙間を通り避ける。見ればユウスケはそもそも狙われていなかった。
既に倒したと思っているのか、それとももう関係ないと思っているのか。
分かってるよなユウスケ。お前の出番は今じゃない。
山本は頭の中でそう叫びながら、指先に魔力を込める。
「【空圧弾】!」
指先で作り出した圧縮した空気を、山本は全力で弾いた。
銃と同等の威力で撃ち込んだーーーだが、当てた羽はびくともしなかった。まるで微風に吹かれたようなものだった。
「【トライーコ
羽の突起を山本に向ける。
すればまたとなく山本はユウスケと同様、吹き飛ばされるだろう。
だがーーー
「【ボンバージュ】!」
ハルトは既に飛んでいる。
加熱した足は、焼いた鉄が如く輝いている。
【スカイウォーク】で飛んだ瞬間、その背中に蹴りを喰らわせるーーーが、目にも止まらぬ速さで蹴り抜いたハルトの背中に現れる。
「【トライーコール】」
「グゥっ!」
背中の中心に一点の一撃を喰らわせる。
痺れるほどの衝撃で地面に叩きつけられる。
「ーーー頑丈ね。まだ死なないの?」
「・・・・・・まだまだっ!」
「なら、そっちね」
「しまっ・・・・・・!」
標的はバウワン。
一瞬の隙間の中で羽の突起が突き刺さるーーー盾を構えているが確実なダメージは入ってしまうのでは。
「【武装・ブラシオス】」
だが、強大な一撃がつるんとバウワンを抜ける。
「今だよ山本くん」
「【空圧拳】ッ!」
山本は空気と空気の狭間の面を殴りつける。
その瞬間、能力により圧縮された空気が爆発するように突き進む。
「キャッ!」
今度こそ確実に一撃が入った。
「よしっ!」
思わず山本はガッツポーズをあげる。
「痛いなぁもう・・・・・・」
「全然ダメージが入ってる気がしないな」
「けどやり口は分かった!けどーーー」
このドラゴンは先ほどから急加速と急ブレーキしかしていない。速度の調整が得意なのかそれともーーー。
「違和感を感じる・・・・・・」
これほどの力を持っているのならば、こんな地下室など抜けて好きに暴れることが出来るのに一体なぜーーー。
(準備はできたよ・・・・・・)
「っ!」
突き刺さる魔力が全身を襲う。
確実に準備は出来ている。
(合図は出来ています。それが終わればすぐに)
「ーーーハルト!」
「はいっ!【ボンバージュ】!」
捻り抜いた一撃がビビアンの横腹を襲う。
だが、再びビビアンはその一撃を避ける。
「馬鹿の一つ覚えなのーーー?」
「【空圧ーーー」
「それはもう見えてるよーーー【トライーコール】」
「ぐあっ!」
山本が拳を振り抜こうとした瞬間、ビビアンの一撃がそれを防ぐ。
「弱いーーーね・・・・・・」
「一人じゃないからなぁっ!」
その瞬間、ビビアンの身体に刀が突き刺ささった。
「え・・・・・・?」
「へっ時雨流【車軸の雨】ってだ!」
最初に吹き飛ばされたユウスケが刀を蹴り飛ばした。
そう吹き飛ばされた時にユウスケは待っていた。確実に隙を与えられたこの時を。
それがたまたまあのタイミングであっただけ、彼にとっては大分不本意なタイミングだったかもしれないが。
だが確かにダメージが与えられて、隙ができた。
「ありがとうーーー【武装・コンヴィクション】」
盾が魔力によって巨大な斧に変わる。
この威力ならーーーこのドラゴンを倒せる!
「オォオオオオオオオオオッ!」
ビシャエラ・バウワンは思いっきり叩きつけたーーー山本に。
「「!?」」
あれだけ頑丈な山本が地面に伏せて動かない。
あれだけ強大なドラゴンを倒せると確信した一撃だ。生きているとも限らない。
「いや、いやいやいや。何やってんだよアンタ!手元がブレたってレベルじゃ!」
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!」
「!?」
ビシャエラ・バウワン突然の豹変。それがユウスケ達の眼前に起きた事実であった。
「生きてるよな!山本ォ!」
ユウスケは叫ぶが山本はそれに応えない。
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないーーーあれあれあれあれあれ?」
気がつけばドラゴンーーートト=ラシェラス・ビビアンも何か狂ったかのように「死にたくない」と叫んでいる。
「無事か!みんな!」
「その声はーーー!」
自分たちが抜けた天蓋の穴から漏れる光が一瞬無くなる。
自分たちにとってずいぶん聞き慣れた声が耳に入る。
「遅かったなーーーいや、俺たちが速すぎたんか?」
「変なこと言わないでちょうだい。こっちの方が大変じゃないどう見ても」
「うるせぇこっちの難易度の方が鬼高えんだよ!」
アキヒトとユウキが天井から、いや地上から現れた。
ユウスケとハルトは既にボロボロの身体で立ち上がる。
「俺以外ボロボロじゃねぇか。鍛え方が足りんな」
「うるせぇ。勝手に身体が治る癖にーーーで、だ。トモキはどうした?」
「それは後々話す。それ以上にーーーやっぱおかしくなっちまったか」
「どういうことだーーーアキヒト」
情報組であるアキヒトたちは何か納得したようにこう話した。
「細かい情報は能力で伝えるよーーーだから結論から言えば・・・・・・あの人たちは既に死んでいるんだ」
次回:7月29日




