EX.277 「隠された秘密③」
ユウキは【ゴライアス】で地面を叩いたーーー!
大理石で作られたであろう頑丈な床は、クラッカーのように容易く壊した。
「ここは色んなものが多すぎる・・・・・・ちょっと逃げさせてもらうわーーー!」
そしてユウキは【ゴライアス】の腕伝いに下層へと滑り降りた。
自分以外何も居なくなった空間において、白衣を纏った女ーーーリーリアルは一つ溜息を吐く。
「ここで逃げるとわんーーー思ったよりも冷静なのねん」
今から上層に向かった二人を追いかけても間に合わない。特にあの四色髪の男ーーーアキヒトと呼ばれた男は太刀打ちできないだろう。
だとしたらここで彼ら追いかけるのは得策ではなく、追いかけるべきはーーー降りた女。
「それにしてもここで戦えたのならん。もっと楽に終わらせたのにねん・・・・・・」
女は自身の足元に散らばった弾丸をジッと見て、飛び降りた。
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ユウキの飛び降りた先は随分と古ぼけた廊下だった。
先程までが一階だとしたらここは地下。
一階の優美さと比べれば、ここは異様なほど暗い。
というよりもーーー
「ーーーずっと前に放置されたようなものね・・・・・・」
廊下の先からすえた臭いがする。
幾層にも織り交ぜたような薬品の臭いが。
「こっちねーーーっ!?」
前へ進もうとした瞬間ーーー横から棘が飛び出した。
ユウキは何から飛び出したか把握したがそれはーーー地下の廊下に点々と並ぶドアの取っ手からだった。
瞬時に彼女はこの現象を何者かによる能力の結果だと判断する。
そして彼女はーーー前へと飛び出した!
「【ゴライアス】!私を護りなさい!」
彼女は全身に小さく【ゴライアス】を産み出す。
ここに降りてくるまでに拾った小石からだ。
その一つ一つが走り出す彼女を止めようとする棘から守る。だがーーー数が足りない。
棘がどこまで伸びてくるか分からない!だとしたら私がやるべきなのはーーー。
「【ゴライアス】ーーー壁を創りなさい!」
小さな【ゴライアス】達は列を作って彼女を守る壁になる。
そして彼女は第二能力で創り出した槌をーーー壁に叩きつけた。
ーーー彼女も今までやってこなかったことだが、今まで『祈り』の能力によって二つの能力を同時に操ってみることにした。
「弾き出しなさいーーー【カグツチ】!」
小石で作った【ゴライアス】であるならば、多少不安定で脆いがーーー二つの能力を噛み合わせれば強力な盾になる。
そして予想通り個々に膨らんだ赤い魔力が【ゴライアス】を包み強力な盾となった。
「ふぅ・・・・・・」
ユウキは一度大きく息を吐いて煤けた自分の服を叩く。先程から瞬間的に走らされている無駄に頭が痛い。
それに今日ずっとお腹の辺りが痛い。絶不調だ。
「さっさと終わらせてゆっくりくつろがないと」
それが無駄なのは当人がよく分かっていることだが、それでも一番キツイのは自分ではないということもわかっているため前へ進むしかなかった。
瞬間ーーー彼女は反射するように顔を上げた。
「何か大きい魔力が膨らんで萎んだ・・・・・・?それにさっきからずっと地震・・・・・・。無事なんでしょうねあの馬鹿達は・・・・・・」
自分のいる場所とは大きく違い、間違いなく戦場が起きていることだろう。
「ふと思ったことはないん?自分が一番まともだと思ったことはん?」
「まともってどういうことよ。それにーーーここまでの道は閉ざしたハズよ」
「遠回りしたのよん。後ろっから行くほど真面目じゃないわん」
モデルウォークでゆったりと・・・・・・?そこまでのんびりした気はないわ。
だとしたらーーーなにかしらの能力かそれとも単純に抜道か・・・・・・ってとこね。
「シンプルにいきましょうん。ここから先にいかなければん私は何もしないわん」
「ある意味王道な条件ね。しなかった場合も聞いておきたいのだけど」
ユウキは大幣を構える。
そして半身後ろに回して何が起きても対処できるようにする。
「そりゃあ・・・・・・焼鳥に気持ちにはなりたくないでしょおん」
ジャキンと彼女の指先が針のように鋭く伸びる。
「随分と王道ねーーーもちろんノーってやつよ」
「あらあらん。私たちまるで映画のキャラクターのようねん。分かりきったはずなのにん、どうしても話してしまうんーーー癖のようなものかしらん」
「貴女の話し方も随分と癖のある話し方よ。それじゃあ行きましょうかーーー【ゴライアス】!」
リーリアルーーー能力『針』。尖ったものを延長させることが出来る。その難易度は自身が所有しているかどうかによる。
故にリーリアルとほとんど初対面である彼女の衣服を操ることができないが、微弱に揺るがすことができる。
『尖った精神性』すらも。
「【スパイラルテンタクル】ーーーっ!」
髪が触手のように唸って【ゴライアス】の腕に直撃する。
「グゥッアッ!?」
だが地面の硬さに加えて彼女の魔力で練り上げられた【ゴライアス】の腕はリーリアルに直撃する。
「弱いわね・・・・・・今まで戦ってきたどんな敵よりも」
「そりゃあん・・・・・・研究職だからねん」
「っ!?」
いつの間に足に!?
縛り付けられた足は簡単に叩いても解ける気はしない。
むしろ最初の髪のような細さではなくーーーそうとう太い。
「【スパイラルテンタクル】は私の先端であれば私の自由に引き延ばし、広げることができるのん。能力の解釈ってやつねん」
「もしかして手のひらを伸ばしたら腕も判定されるってこと!?」
「ーーー・・・・・・」
彼女の沈黙にユウキは肯定と受け取った。
「【スパイラルテンタクル・ウィップ】」
そう言った瞬間ーーーユウキは四方に嬲られる。
壁に叩きつけられたと思えば天井に床に、気が付けば投げ出されている。足だけはしっかり掴まれて。
「ッ・・・・・・!グゥッ・・・・・・!」
かろうじてダメージを最小限に抑えるために受け身を取り続けるがーーーこれ以上受け続ければ最小限でも致命だ。
彼女はーーー懐からあるものを取り出して捕まえた足に向けてーーー。
パァン!
「ッ・・・・・・!アアアアアアアアアアアアアアアッ!何したのよん!?」
乾いた音が空間に響いた。
リーリアルは激痛に悶えて一瞬力んだ後に手を離した。
ユウキが握っていたのは銃。
あの時トモキから渡されていた銃だった。
「どれだけ能力で補強しても、どれだけ魔力で身を固めてもーーー集中してなければ銃は痛いでしょ」
「それでも貫通が怖くないのん!?貴女も充分イカれているわ!」
「仕方ないでしょ・・・・・・こんな自分は案外好きだしーーー認めてくれる居場所があるもの」
「惚気かいん!」
「【ゴライアス】っ!私を投げ飛ばしなさい!」
「グゥオオオオオオオオオオオオオ!」
【ゴライアス】は言われるまでもなく、自らの主人をリーリアルへと投げ飛ばした。
豪速で投げ飛ばされる彼女はリーリアルへと直撃し、骨ごと弾き出される。
そして二人は壁を何重に破壊して、奥へ奥へと突き進んでいく。
一身となっていた二人はようやく勢いを無くし、離れて地面を削るように着地する。
ユウキは削れた肌を労わりながら、ジクジクと痛む体に鞭を打って立ち上がる。
「あ・・・・・・あーあ、バレちゃったのん・・・・・・」
「え・・・・・・?」
リーリアルを方を見た彼女は驚いた。
彼女が砂のように溶けてしまったからだ。
「ここが研究所・・・・・・」
彼女がたどり着いたのはーーーリーリアルがなんとしても隠したがっていたこの国の秘密であった。
次回:6月17日




