EX.276 「隠された秘密②」
「ーーー・・・・・・はじめまして」
トモキは吐き出そうとした言葉をなんとか飲み込もうとして、その結果ーーー曖昧な言葉しか出てこなかった。
表情の読めない顔立ちに、存在不明な立ち姿。
間違いなく警戒すべき人間だ。
「ええ、初めまして。私の仲間内には最近ブームができておりまして、そう名付けブームなのですが。最近私の仲間が観測者によって名付けられましてね。思っているよりも名乗ることは楽しい」
「ああ・・・・・・えっと、名乗るのは分かったけどーーー観測者?」
いったい何者だ?とトモキは訝しむ。
この間違いなく歪な存在なのだが、それらをまとめるリーダー的ポジションなのか番外役なのかは分からない。
「ええ、ミヤタアキヒトと名乗る人物です。ここでは君たちのリーダーでしょう?」
「ここでは・・・・・・って、別に何か疾しい人生をーーー歩んでるかアイツは」
何故だろうか、ニヤニヤと笑うあの男の顔を思い出してげんなりとしてしまう。
と言うよりもあの男は波瀾万丈な人生を歩みすぎて問題定義が分かりづらいのも一つだろう。
他にも時々情報共有しない口があるのに、あの男の全てのやらかしをこちらが把握できるわけもない。
「ーーーということは何かしらの縁ができたってことか」
「今年の・・・・・・春頃ですね」
「最近じゃないか!?」
今年の春頃ってあれじゃないか!カレン事変があった頃の筈!?
(トモキさんはアキヒトが大体一週間を繰り返したことは知りません)
「貴方も結構なお話好きと見える。どうですか?貴方も我々の仲間の一人に」
「悪いけど会社背景が不明なところに行くわけにはいかないんだよ。家族の心配が勝る」
「なるほどそれは残念ですーーー」
パン!
男?は手を叩く。
パン!パン!
そして全身を覆う奴の姿に猛烈に嫌な予感が走る。
パン!パン!パンッ!!
トモキは反射的に愛銃を引き抜いてーーー撃った。
「『一夜一夜に煌いて、数多過ぎる万国前夜』ーーー」
固有結界ーーー。
【一腹、もうかの星】
「ーーー貴方の持つ銃弾の速度は大体時速約900から1400km。この固有結界の中ならジョギングの速度と変わりません」
男の言う通り、トモキが放った銃弾はまるでストップモーションの一瞬を写したようなスローペースになってしまった。
「私の固有結界【一腹、もうかの星】は外部世界である現実と心象世界である固有結界を入れ替えて、世界にズレを起こす能力です。本来は世界を己の世界で塗り潰す固有結界と違い、己の世界を包み込むことで強力な世界を作り出しました。ここでなら亜音速でも私は避けられます」
「ーーーっ!」
「そしてーーー包み込んだこの世界は、私が設定した時間出られません」
「・・・・・・・・・・・・は?」
固有結界は究極の魔法、だとしたら包み込まれた今、脱出する術はないのではないかーーー!?
「そしてその時間は外部世界で1日。ここだとおおよそ100日です。飲まず食わずで生きられますかね?」
「ーーー正直、自信がないかな・・・・・・」
トモキは自身が所持している食料を頭に浮かべながら、冷や汗をかいた。
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ーーー無能力者には神秘が宿る。
そう語ったのは、一人の医者であった。
能力飽和社会において60億人の人口のおよそ9割が能力者である。
能力は神から与えられたギフトであり、神が作りたもうた雫は人をさらなるステージへと進化させた。
だが神の手のひらから溢れた者も確かにいる。
能力を持たずして生まれた人間が確かにあり、人によっては罪を抱えて生きていると錯覚している人もいる。
朱に交わっても赤くならないーーーそれこそが悲しき現実。
しかし、本当に無能力は何も持たずして生まれたのだろうか?
医者は言ったーーー
ーーー人はいつしか力を持つことを慣れてしまっている。故に足元を掬われやすい。外部に浮き出た能力者よりも決して表に出てこない者たちが恐ろしいーーーと。
無能力者は能力者にあらずーーーだが、決して能力を持たないという訳ではない。という主張。
誰もが鼻で笑ったこの主張はいつしか消える筈だった。
だがーーー現代に生まれし魔王が再び世界を動かした。
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動き自体はとても単純だーーーと、アキヒトは思った。
子供は何かしらの能力があり、その能力が物凄く危険だということは、アキヒトの第六感が嫌というほど叫んでいる。
だが、その動きは単純で対人戦の経験を積み上げてきたアキヒトにとっては児戯に等しいものである。
ただーーー問題なのは、アキヒトが手加減しつつも確実に気絶させるに値する一撃を放ったとしても、倒れた後に必ず起き上がってくる子供とーーー。
「・・・・・・・・・・・・」
アキヒトの大きな隙を狙っている目測女の影。
それがアキヒトが大きく前に出れない理由になっている。
「しかし退屈だね・・・・・・。我々の時代の英雄にしてはーーー」
「褒めるのか貶すのかどっちかにしろよ!さっきからずっと砂のサンドバッグ殴ってる気持ちになんだよ」
「それは君が考えたまえ・・・・・・。私は君の先生じゃないんだ」
そしてスーツから何かを取り出す。
それはトランプを少し引き延ばしたサイズのカード。
微かに見える面には何かしらの絵柄が描かれている。
それはまるでーーー何かの建物のような絵だった。
「カードオープン『◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️』」
その名を聞いた瞬間ーーーアキヒトは吹き飛ばされた。
次回:6月10日




