EX.274 「不透明な侵略者」
「エド、イル・・・・・・無事か・・・・・・?」
ーーーこれはいつの記憶だったのだろうか?
揺蕩いながらシェイクし続ける思考の中で、ビシャエラ・バウワンは息を吐く。
「ダメね・・・・・・僕もエドも死んだ。今は能力でギリギリ生き延びてるってところ」
「死ぬなんて一度しか経験するべきじゃないってずっと思ってるけどホント事実。アンタが羨ましいわ」
「ハハハ・・・・・・そう違うよくいかないさ。私の能力だって無敵じゃない。カタログスペックなんてそんなもんさ。ーーーもう頭の中では死んだ後のことを考えてしまっている」
魔術師の男ーーーアムマ・イルは厳密に言えば屍術師だ。今は彼の能力で本人とエドは生かされている。
事実で言えば能力で死亡したところを能力で蘇らせられたところだ。魔力が尽きればこのまま本当に死んでしまう。
「それで・・・・・・どうする?正直アタシの能力は使い物にならないしイルはこれ以上魔力使うとアンタの話し相手になれないわよ!」
「分かっているよ・・・・・・だからーーーいつも通りに行こう!」
バウワンは背負った巨大な盾を引き出す。
このチームはヘビ使いのエドと屍術師のイルが相手の体力を削り、バウワンが強烈な一撃を放ち倒す。そういうチームだ。
「いつも通りーーーって、アンタそれが出来なかったからこんなことになってんでしょ」
「けど魔王の末席が相手なんだ、素直に勝てるとは思ってはいないさ。でもーーーコイツの未練に世界を巻き込むわけにはいかない」
「ああ・・・・・・イルの言う通りだ。ここにいるヒーローもこれが全員。助けも呼べない状況にーーー正直ワクワクしている」
我ながら空気の読めない発言だ。それは自覚している。けどーーー幼い頃から組んでいるこのチームは出来ないなんてことは今までなかった。
運が良かっただけかもしれないが、私の能力では決して不可能は無かった。
だからこそ出来ないことが面白い。
「ーーーフン!もういいわよ死んじゃったし、最期の最期まで付き合ってあげるわ」
「ええ。楽しいパーティーにしよう。これが僕たちのラストダンジョンだ」
・・・・・・ああ、とても楽しい。
心を通わせたパーティーと一緒にいけるだなんて。
「死んだらお互いあの世で乾杯を掲げよう!さあーーードラゴン退治だ!」
ーーーこれは一体何の記憶なんだろうか?
私の記憶に揺蕩っていく何か、それなのにどうして私はここにいるのだろうかーーー?
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「思っていた以上に簡単に着いたな」
ここまで着くのに一切の妨害もなかった。
ちょっとしたマラソン程度だったと言える。
「そうね・・・・・・でも何者かが居るわ」
「地下から攻めるか?それとも上を目指す?」
「そりゃあもちろんーーー上でしょ!」
「「ーーーはあ」」
カッコつけたつもりだったが、ため息を吐くとはいかがなものかと思います。
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「ーーー協力してくれるとは思わなかったよ。キミ達は世界を研究するのが趣味なんだろう?」
ーーーこの声は女の声だ。
だが何故だろうかとても嗄れていてハッキリとは聞きとりずらい。
まるで再建された声だとある者は判断した。
「私は確かに世界を知りたい。微かにも隙を生じずに、ね。だからこそ君に協力することにメリットがあると考えたよ」
「メリットかい。そう思えないのが普通だよ。だがそれ以上に疑問が残る。何故別の人間を用意した?」
彼女の疑問は至極最もかもしれない。ーーーしれないが、どうしても面白い。
「彼らを招待したのはこの国の総意ですよ。今度こそ終わらせて欲しいという願い。私は少々気になってしまう」
「何をーーーだい?」
「彼らがーーーいや彼がこの国の真実を知った上でどのような判断を下すのか・・・・・・それを知りたい」
黒服が判断した結果を私は聞いて面白いと思った。
我らが納得した結末をーーー彼は遵守した上で付け加えた。
この世はハッピーエンドとはいかないが、人々の選択次第で劇的に面白くなる。
「そしてーーー選択肢を選ぶのは彼だ」
「彼とは一体誰のことだい?」
「ミヤタアキヒトーーーヒーローだよ」
ふと、女は声を一層低くした声で言った。
「ヒーローか・・・・・・唾棄すべき存在だよ」
そしてそっぽを向いて歩いていく。
「ミヤタアキヒトとはこの後ぶつかるだろう・・・・・・殺しても構わないかい」
「ーーーいいよ」
「楽しみだ・・・・・・子供達の調整も済んでいる。トップヒーローとの経験を済ませておきたい」
「・・・・・・・・・・・・」
殺意がとても綺麗だ。本来であれば躊躇のようなものが混ざり濁るものなのに。
・・・・・・それにしても子供かーーー。
「貴女であれば知っているとは思いますがあえて言いましょう。この世界は人間にはとても興味深いと思っているようです。私は能力を持っている人間よりも持っていない人間の方には神秘が宿ると聞きます」
「・・・・・・・・・・・・」
「そうでしょう?ーーーかつてヒーローを志した人には耳が痛い話でしょうか」
「ーーーそうだね。忠告の一つとして受け取っておこう。その代わりーーー世界を壊した後楽しめる余裕があればいいがね」
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「【スティンガー】ーーーッ!」
俺は十六分割した反射板を全面に散らばらせる。
マシンガン相手では正直時間稼ぎではあるがーーー
「行くわよーーー『火神槌』!」
ユウキの能力『祈る者』の第二能力によりオレンジ色のオーラが盾として俺たちを包む。
「ホント便利だよなー。俺もシンプルに使っておけば良かったよ」
「だったら使いなさいよ。能力も錆びつくわよ」
「使おうと思ってるけどコツが掴めないんだよなぁ。結構その能力もあるからなー」
妖精たちに教えてもらっても出来ない技も結構あるから拗ねられることもあるんだよな。
「ーーー準備はどう?このままじゃジリ貧わよ」
マシンガンを撃っているのは機械だ。結構古そうなイメージだが比較的新しめな施設を保有している。それでも旧世代だが。
「分かってるよ。ほらコレをーーー」
トモキは銃とスイッチを差し出す。
「コレは・・・・・・?」
「スイッチはこのボタン型爆弾を起動させる為、銃は最低限の身を守る手段だよ」
「預かっておくわ」
「俺は?」
俺はスイッチだけ渡されているですけど、銃貰ってないんですけど。
「アキヒトなら銃自分で出せるだろ?」
「ディティールが足りないから撃てません」
「正直に言ってあげなさいよ、当たらないからって」
「あーあーあーあー聞きたくなーい」
「・・・・・・まあノーコメントにしておくよ。アキヒト、ユウキが解除したあと、また【スティンガー】で守っておいてくれ」
ボタン型の爆弾を設置する時間を稼いでくれってことか。
「了解。時間はーーー?」
「トラップ式のガトリングガンだ。10秒で余裕」
「オーケー!ユウキ!3秒後解除してくれ!」
「人使いが荒いわね!後で何か奢りなさいよ!」
「虫料理以外で、だろ!」
「当たり前よ!」
瞬間、ユウキは能力を解除する。
俺はすでに超覚醒は済んでいる。
「余裕だね」
トモキは能力を発動している。
どのような射線で投げればあの先のガトリングガンに届くのかーーーそれは既に見えている。
「いっけぇええええええええええ!」
掛け声と共に指に包んだ爆弾を投げつける。
それは予測線を通ってガトリングに吸着した。
「押して!」
「分かったわ
「させないわん♡」
瞬間、何かがユウキの肩を貫いた。
だがーーーユウキはスイッチを押した。
「ユウキ!」
「行きなさい!何も無かったら承知しないわよ!」
俺たちはーーー何も言わずに言わなかったが、一度目配せした後前へ走り出した。
「ーーーあら、置いていかれちゃったのん?思っていたよりも根性なしなのねん」
「思っているよりも人間を過小評価するのね。モテないんじゃない」
「研究職だからねん。恋人よりも仕事なのよん」
分かってるわよ、とユウキはそう考える。
見た目だけでもやけにグラマラスな感じがするが、なんというファンキーな見た目だろう。
パンクパーマというのだろうか、能力となにかしら関係があるだろうかと考える。
「私は・・・・・・貴女を倒して、貴女が隠したがっている全てを吐き出させてやるわ。ヒーローの強さを舐めないでちょうだい」
そして彼女はいつものように『ゴライアス』を呼び出した!
次回:5月27日




