EX.272 「間違えた世界」
ポストアポカリプスーーーというジャンルがある。
あれは戦争や疫病といった自然災害や爆発的事態により人類が絶滅した後の世界を描いた物語だ。
本来空想上の続きを描いたような物語作りでどちらかと言えばファンタジーに近いものだった。
だがこれが現実味を帯びてくるなんて思わなかった。
目が覚めれば宿から見える全ての建物が微塵にされていた。
昨日寝る前は活気に満ちていた街通りも、その光も、粗方消し飛ばされている。
本来であればこのような現象が起きて仕舞えば、すぐにその揺れが、音が発生するはずなのに、それに気づかず呑気に寝ていたーーー?
「ーーー落ち着け。別に今日初めて見る景色じゃない」
突如異世界に飛ばされたとなら絶叫ものだが、ありがたいことに衛星電波がこちらに届いている。
万が一があればすぐに応援要請も届くだろう。
それに魔獣騒ぎであれば、その大きさにもよるがこれほどの被害が起きてもおかしくはない。
戦争によって村を失った者たち。
魔獣によって住む場を奪われた家族。
『聖戦戦争』にいく前はそんな光景が当たり前だった。むしろこれを特別視するほうが失礼に当たるだろう。
やるべきことは分かっている。被害の確認と状況の判断。それが終わったらどのように動くかを考えればいい。いまは動かなくてはーーー!
「起きろハルト!今とんでもないことが起きてる!」
「ーーーあるまげどんぱーてぃ」
・・・・・・コイツは起こさなくてもいいか。
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結局のところ全員を叩き起こして(数名はすでに目覚めていたが)、この近辺を見て回ることになった。
「こちら空班、異常無し。むしろ不気味過ぎるほど何もない」
『こちら救助班。トモキの能力で視ても何も反応が出なかった』
『こちら損壊確認班。大きな爪痕を発見できたわ。ヒーローギルド跡に来てちょうだい』
電波は良好。スマホの機能を十全に使えるか不安だったが、電話は無事そうだ。
「ハルト!今からギルド跡地に向かうぞ!俺から見てハルトがいる方面!」
「分かった!先に向かう!」
最近ハルトの【スカイウォーク】が下手くそな時の【天空飛行】より速くて悔しい。
ーーーとはいえそんなことよりも見つけたものを確認しておかないと。
俺はそう思いながらいつもよりもちょっと速く飛んだ。
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ヒーローギルドは建てられる場所によって大きく姿を変える。
京都のマクドナルドと似たようなものだと思ってくれる程度でいい。
ーーーここは魔女の帽子を想像させるような建物だった。
中はどれだけ褒めようと思っても新しいとは言えないが、確かに立派な建物ではあった。
だがーーーそれは視る影もない。
「ーーー齧られてるところもありゃあ、溶けてるところもある。こりゃあ一体・・・・・・」
本来であれば不可思議な現象に誰もが口を閉ざす。その中で山本が呟いた。
「・・・・・・ヒーローギルドは何かあった時の避難先に指定されるほど頑丈な建物だ。これだけボロボロになってるってことはとんでもない魔獣か能力者にやられたってことだろ」
「それにしてもねぇ・・・・・・。これほどの破壊が起きたというのに誰も目が覚めないというのは些か腑に落ちないわ」
それはそうだ。ユウキの言う通りだ。そもそも寝ていたとは言え、何かデカい物音が鳴れば誰かは目が覚めるはず。
なのに俺たちは何事もなかったように睡眠を堪能できていた。
「ああ、そう言えば」
ハルトはすごすごと手を挙げる。
「建物はボロボロだったけど壁は無事だったんだ。あれはどうしてだろう」
「・・・・・・うーん。ハルトくんの言う通りだと。壁は壊されていないってことだけど。考える理由は二つできる。一つはそもそも壊す必要がなかったってこと。もう一つは壁がものすごく硬かったってこと」
「山本の腹筋よりも?」
「それは知らないけど。この都市はそもそも初代の国王が錬金術によって建てられたと言われているんだ。パンフレットに書いてあったんだ、知ってるだろ?」
「生きるスペースとは書いてあったけどそう言うものなのか?」
「アキヒト達がギルドへ報告してもらっている間に地元民に詳しく聞いていたんだ」
それをもっと早く教えて欲しかった。
「壊す必要がないのはこれを起こした犯人が翼竜種や空を飛べる人間であった場合。街を壊すならともかく、何の材料で作られたか分からないものに喧嘩はしなかったんじゃないかな」
「ーーーまだあるだろ」
静観を決めていたユウスケが口を開く。
「途中で殺されたーーーそれがもう一つの案だ。これだけ暴れりゃあヒーローは必ず動く。相手も逃げ切る前に殺されるだろうな。これだけの被害を与えたんなら捕縛じゃなくて殺害をメインにするだろうし」
「それは分かるけど一体誰が・・・・・・」
「そりゃあいるだろ。だってここにはーーー」
「良かった!君たちは無事なのかい!」
『!?』
声に驚いて振り向くとーーーそこには偉丈夫な男が立っていた。
ビシャエラ・バウワン。その人だった。
「バウワンさん驚かさないでくださいよ。わざわざ気配を消してまで」
「?ーーー消したつもりなんてないんだけどなぁ。まあいい、それにしてもよかった。ここには誰もいないんだ」
「はい。俺たちも現在人探し中で・・・・・・バウワンさんが初めての人です」
「それはよかった・・・・・・のかな?まあいい、君たちはパーティー全員いるんだね。それは良かった、本当に良かった」
「えっと、もしかしてバウワンさんも?」
「ああーーー私たちはあと二人パーティーメンバーがいるのだけれどもエドもイルもいないんだ」
「えっと・・・・・・だれ?」
「ヘビ使いの女と魔法使いの男」
「ありがとうユウスケ。その二人が現在行方不明と言うことですか」
「ああ・・・・・・無事ならいいんだが。この状況じゃそうはいかないだろう」
「ええ、ところでここからはA級のバウワンさんに指揮をとって欲しいのですが一つ提言があります」
「あっああ規則だとそうだね。確かにここの責任者は私だ。それで一体何を言いたいんだい?」
「俺たちもまだ行こうとは思ってなかった。王城リッケンシュタイン城に向かいたいと思っているのですがどうでしょうか」
俺たちは三パーティーに分かれる前に、俺が一度大きく飛んだ。その時にあれだけボロボロだった街並みに反して城は荘厳さを残して無事だった。
そこに違和感を覚えた俺は分かれる前に城にだけは近づくなと言っておいた。
「そうだね・・・・・・気になることもある。それじゃあ今から向かーーー」
彼が話し合える瞬間ズン!と地面に叩きつけられるほどのエネルギーを感じた。
「ーーーお前ら!今のはーーー」
「・・・・・・頭がくらくらする」
「地震じゃなさそうだな・・・・・・。デカい振動の割に後の揺れが穏やかだった。叩きたれられた分を地球が元に戻そうとした感がある」
「上から魔力で叩きつられたようなやつだなぁ。マッサージのようなものだろう」
「そう思っているのは師匠だけです」
「・・・・・・とりあえず無事っぽいな」
「ーーーどうだろう」
口を開いたのは眼鏡を外したトモキだった。
彼が眼鏡を外せば無限に近い情報量が彼に入る。
だからこその補助具として見えない眼鏡を用いているのだがーーー彼の反応が危険信号を鳴らしたのだろう。
「この街の中心部の地面から強烈な熱反応が視える。あればただじゃおかないかもよ」
「っーーー!バウワンさん!」
「落ち着け!」
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
「ヴッ・・・・・・ガッ・・・・・・」
耳を閉じ損ねてバウワンさんの馬鹿でかい声に叩きつけられた。
「失礼【ウォークライ】だ。冷静になってもらうため放たせてもらった。ここで大事なのはなぜ起こったのとどうやって起こした、の究明だ」
「はっはい、そうですね」
だからと言って直近でそれするのやめて欲しい。
「私はパーティーを分けようと思う。異論は無いかな」
「戦力が大きく分かれると思いますが」
「私の見たところ君たちは歴戦の猛者に見える。余程の隙を見せなければ大丈夫だと思うが」
そう評して貰えるのはありがたいがーーーおいこらそこ照れるな。
「分かりました。では片方は先ほどの熱反応があったところで片方はーーー」
「リッケンシュタイン城だね」
「じゃあ熱反応が見えたほうにはトモキをーーー」
「いや、ここの地図があるから熱反応が見えたところをポイントして貰えればいい。パーティーを戦闘が得意なものと調査が得意なものに分けよう」
「ではこちらから脳筋三銃士を出します」
「アキヒトユウスケ師匠の三姉妹か」
「アキヒトユウスケハルトだろう」
「いやいやアキヒト山本ハルトじゃねーの」
「そこのバカ共が行くのよ」
「分かった。私は熱反応の方へ向かう。調査隊のリーダーは君に任せよう」
「分かりました。無事に終わらせましょう」
「そうだね。この状況はもう無事とは言えないけど」
一度握手して笑い合う。
その後荷物の準備を終わらせたパーティーはそれぞれの役割の達成を目指して突き進む。
熱反応担当:山本、ユウスケ、ハルト、バウワン
城調査担当:アキヒト、トモキ、ユウキ
次回:5月13日




