EX.271 「錬金都市アルケミア」
巨大な壁に包まれた巨大な都市『アルケミア』。
初代国王がこの地域で細々と暮らしていた者たちに心を痛め当時は希少であった『錬金術』を用いて生きるスペースを作った以来、この国は『錬金都市』とも呼ばれている。
頂上から見れば巨大な錬成陣を模して作られており、各街には四大元素をイメージした作りとなっている。
錬成の力の中心には国王の城『ヘキサグリアム』が築城されており、権力を象徴している。
「byアルケミアについて2009年バージョン」
「10年前かよ!最新版持ってこいよ!」
俺はパンフレットに書いてあった文章を読んだだけなのにーーー人間とは暴虐なものなのね!
「最新版がこれだったんだよ。文句があるならさっき門を通ったときに取っとけよ」
「・・・・・・・・・」
「どうしたのかしら?さっきからずっと黙っているけれども」
「いや・・・・・・なんでさっき門番がいなかったんだろうって。普通門番は門を守る存在だろ?だのにあの時は誰もいなかったーーー本当にこの国を守る気があるのか?」
「敏感じゃないですか?門番だって休みたい日だってあるでしょう?例えばーーーこんな祭りの日だって」
そう。俺たちの眼前に広がっているのは巨大な祭り。
家ごとに露店が建てられて競いあっている。
その顔はーーーとても熱い。
「それにしてもスゲー祭りだな!誰か生まれた日なのか!とにかくなんか食おうぜ!腹減ったよ」
「待て待てユウスケ。まず換金が先だって言ったろ。この国の金を誰も持ってないんだよ」
「そうだったなーーーよし!行けリーダー!」
「・・・・・・普段はそんな呼び方しないだろ」
俺は呆れながらも取り敢えずこの国のギルドに向かうことにした。
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中世のヨーロッパを彷彿とさせる街づくりには奇妙な違和感がある。それは重力を無視したかのようなヘンテコな住宅模様だ。
建築想定にはなさそうな形ではあるがそれでも成り立っているところを見ると、この国が『錬金都市』と呼ばれている所以か。
「・・・・・・それにしても眩しいなぁ」
眼前には錬金陣の灯に照らされているが、その量が異常だ。四方八方から詰められている光は祭りだと理解しても目を背けたくなるような光量を持っている。
「そこの兄ちゃん!筋肉すごい筋肉だねぇ!何か食べてかない!?」
「筋肉目をつけるとは!だが悪いなおっちゃん。今ツレが金策中なんだ。営業するならもうちょっと待ってくれ」
そう言うとガタイのいいおっちゃんはガハハと豪快に笑う。
「『誕城祭』の露店には金はいらねぇんだよ兄ちゃん!」
「マジか!知らなかったなそりゃあ・・・・・・つか『誕城祭』ってなんだ?」
「なんだ兄ちゃんはパンフレット読まなかった口か!明日はなぁ・・・・・・この国が初代国王アルマ様によって作られた日なんだよ!そして六日前から大きな祭りを広げるってワケ」
「祭りの理由は分かったがタダなのが解せんな。毒とか盛られたら困る」
「毒なんか頭のおかしい奴しか盛らんよ!この祭りの最後にアンケートが配られるのだが、その時に一番評価された奴はなぁ・・・・・・国王さまから大金が配られるんだ!それに今年一番の錬金術師って評価されるからそれだけでもとんでもない褒賞モノだぜ」
「ほうほう・・・・・・なるほど。もしやコレはコンクールみたいな物か。タダの理由も納得できる」
「兄ちゃんも良かったらオレんとこ評価してくれ!ほら!これがオレの最高傑作プロテインとバナナを錬金したアスリート御用達間違いナシ『プロテインバナナ』だ!」
「名称はそのまんまだが戴こう!」
山本は向いたバナナに豪快に齧り付くーーーがすぐに歯と歯がぶつかった衝撃を受けた。
「ーーーうん。口がパサパサするな」
プロテインの粉っぽさが際立ってバナナの甘みだけがむしろ気持ち悪い。果肉の部分が粉と入れ替わっているようだ。
「せめて牛乳と一緒に提供したらどうだ?」
「ちくしょー!どうせ俺なんかド三流だよー!」
「それが言いたかったワケじゃないよな?」
「お兄ちゃんお兄ちゃん。私が作ったこれはどうだい?水風船とリンゴを錬金した代物は!水風船のゴムの部分は皮に集約するから剥いちゃえば完璧よ!」
「噛んだ瞬間に破裂したんだが」
「アアアアアアアアアアアアアアア!やっぱりド三流なのねぇ!」
「流行ってるの?そのワード」
その後色々言ってくれる山本にあやかろうと人の群れに巻き込まれている所をハルトは遠くから見守った。
「・・・・・・大変そうだなぁ」
@@@@@
「あれ?登録されてない?」
「はい。ヨシダユウキ様はヒーロー登録されておりません」
「俺も?」
「はい。ミヤタアキヒト様も同様です」
ユウキはともかく俺のヒーロー活動は小学校入りたてからずっとだ。認定カードはカレンに預けてあるからなんとも言えないのがもどかしい。
ーーーここは妥協案だな。
「ドラゴンの角と爪を持っているのですが換金できますか?」
「真偽判定があるので時間をいただきますがよろしいでしょうか?」
「よろしくお願いします」
俺は懐のマジックアイテムから剥ぎ取った角と爪を受付棚に置く。・・・・・・一瞬ギョッとされたのは見間違えだろうか?
「一体なんだったんだろうな今の一連」
「私もクエスト登録しているところは見ていたから単純に伝達ミスの可能性しか考えられないわね」
「ヒーロー協会がかぁ?」
ヒーロー協会は星王が経営しているからこそ細かなミスはあり得ないと思っていたのだが、これは本人の性格が映し出されているのか。
俺は星王の顔を思い出しながら納得することにした。
「まあドラゴンの素材だけでも幾分か金にはなるだろうしクエストチェックは帰ってからにしようぜ」
「いやよ。クエスト登録出来ませんでしたとかは」
「俺だってヤダよ」
すると俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「総計2000万リヤルでございます」
「・・・・・・それって幾ら?」
「大体50万くらい」
「ドラゴン素材安いわねー」
確かに、とは思った。
それこそ数年前はドラゴンが出まくったお陰かめちゃくちゃ安くなってたけどここまでとは。
ヒーロー協会も周りの物価とか考えて報酬にするからまとめられた気がするなぁ。
「ドラゴンも安い時は安いと思っとこうぜ。一応全部預かっといて日本に帰った時に換金しよう」
「それが一番ね。こんな量の紙束持ってられないもの」
俺は能力を使ってお盆に乗せられたお金をしまう。マジックアイテムは機能上しまえないようになっているため、こっちを使うしかない。
そうしてギルドを後にしようとした時、もやもやした疑問を晴らそうと思った。
「なぁユウキ」
「どうしたのかしら?」
「ドラゴンが大量に発生して討伐された時期があったろ?あれっていつだったっけ?」
「・・・・・・そうね。結構前だったし私も幼かったからあんまり覚えてないけれどーーーたしか10年くらい前だったかしら」
「そっか・・・・・・サンキュ」
10年・・・・・・10年か・・・・・・ーーー。
そういえばあのパンフレットも10年前だったよな。
俺は一番手前のを取ったつもりだけどそもそも年の違うパンフレットをわざわざ置いておくか?
結局のところモヤモヤは晴れなかったものの、一旦思考に区切りを付けた俺は今度こそギルドを後にする。
「適当に宿を見つけてみんなと合流だな。良さそうなところがあればいいけれど」
「結構な時間だしね。足早に行きましょう」
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こうして俺たちは、何とか3部屋取れる宿を見つけ出しみんなと別れたところへ向かうーーーと、そこには
「ーーーん?君たちは一体・・・・・・」
「ああ、コイツがうちのリーダーっすよ」
「へぇ・・・・・・!君が彼らの」
頭を除いた全身に鎧を纏った男がそこにいた。
頭には目立つ耳ーーー獣人族の証が見えた。
「えっと・・・・・・。どなたか存じ上げませんが初めまして」
「そこまで畏まらなくて結構だよ。私はA級29位ビシャエラ・バウワンだ。よろしく」
愛嬌のある笑顔をニカッと光らせて男はーーーバウワンは手を差し出す。
「君たちの国では挨拶はこうだろ?」
「ああーーーえっとそうですね。俺はセブン・ウォーリアーズのリーダー。ミヤタアキヒトと言います。よろしく」
俺はその手を握った。
次回:4月22日




