EX.266 「女王様の処刑場④」
能力『カメラ』は指定した瞬間を写す能力である。
指定した瞬間は秒数まで設定できるが、アキヒトの場合大雑把にこのぐらいという時間で撮影を行った。
なのに写った写真は何度か重ねたようなものであった。
だとしたら考えられることがある。
それはーーー
ーーーその瞬間は何度か繰り返されている。
同じ時間軸が重ねられて、繰り返されていたことによって不自然な写真が生まれたという考え。
同じ瞬間がつど繰り返されたことで、同じ秒数というのがいくつも生まれてしまった。
そのため一つの秒数を写す『カメラ』によって、全てを写してしまった。
それが『カメラ』の原因だと思われる。
「そうだとしたら、相手の能力はおそらくーーー『タイム』!」
無数にある能力の中で時間を操れる能力は一つしかない。
『タイム』という能力は能力者によって使用練度が変わるが、優劣変わらず時計屋という組織に押し込められる。
つまりヒーローになることは決して無いが。
「黙ってるのか。あそこは兼業は禁止だしな」
能力を『タイム』と限定すれば、今まで見えてこなかった『攻めて来ない理由』が見つかる。
例えば『タイム』の能力が時間を巻き戻す能力であれば、追撃をすれば位置がバレるという状況上襲いかかることは出来ない。
だが、事前に用意している場所に俺を送り込むことが出来るならば、自由に俺に攻撃できると言える。
追撃出来ない理由もそうだ。
いくら時間を巻き戻したとて、俺が食らうダメージは一つだ。
オマケに戻せる時間まで、俺がその場で待機していたら新しい罠を設置することは出来ない。
とはいえ先ほどは新しく攻撃された。
それはつまり既に罠を設置しきったか、それとも能力に限界が来たか。
巻き戻しの能力は俺の行動理由に由来する。
パラレルワールド理論と似たようなものだ。
俺の行動は一貫していない。
相手の予想している俺の行動は、最悪どれだけ巻き戻しても行われない可能性がある。
100面ダイスで1を何度も繰り返すのと同じ難易度だ。
何度もサイコロを転がすことをリスタートと言うならば、リスタートするごとに魔力を消費する。
どれだけコストを少なくしたとしても、100ある魔力を1ずつ消費したとしたら100回だけチャンスが訪れる。
魔力を回復する方法である食事や睡眠などといったエネルギー補給は30分という短いスパンじゃまともな回復は望めないはずだ。
問題は今まで俺がどれだけ巻き戻されたか、だ。
たくさん魔力消費をしていれば嬉しい限りだが、正直あの時の俺は油断しまくりだからあんまり自信がない。
「よし!決めたぞ!」
俺は動かなかった。
やることは一つ。
次の攻撃が来る瞬間叩く。
それはまさに先日の戦闘と同じ方法。
昨日と違うのはーーー。
ダン!ーーーと弾いた音が聞こえる。
音の方向性からしたらここから真正面の館だろう。
だが俺はその音が決まった瞬間に地面を思いっきり殴った。
俺がいた地面がクラッカーのようにボロボロに砕けていく。
俺はそれに身を任せて落ちていく。
そこは偶然か校長室だった。
生傷の絶えないソファに腰から落ちる。
偶然なクッションに体勢の崩した体は奇跡にもダメージは無かった。
そして喜ばしいことはもう一つ。
「ーーー・・・・・・っ」
「見つけた」
そこには俺と対峙している相手の姿があった。
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「見つけた」
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「見つけた」
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「見つけた」
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「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」
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九条綾華ーーー能力名『タイム』。
その効果は6秒時間を巻き戻す能力。
時を戻した地点から6秒間は時を戻すことは出来ず、最初に巻き戻した地点を起点とし、時を再度巻き戻すことが出来る。
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「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」「見つけた」
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心理学の一つに、「テンション・リダクション効果」というものが存在する。
大きな決断直後に訪れる注意力散漫の心理メカニズムのことであり、大まかに緊張からの緩和から起きると考えられている。
九条綾華は自身の能力の欠点を心理的に突くことで補っていた。
能力の弱点ーーーそれは時を大きく巻き戻すことも進めることも出来ないという点。
あくまでも6秒間というシビアな間でのみ行われる能力。それをどう活かすのかは当人次第という厳しい現実の中彼は多くの人間を殺し続けた。
能力と能力の隙間には新たには罠を設置することは出来ない。
オマケに対象がその場から動かない場合にはさらに難しくなる。
だからこそ必要なタイミングで能力を発動し、相手の行動をコントロールする必要が生まれる。
さらに人の行動は一貫性は無い。
その瞬間の思考によって心が揺らぎ、あらゆる行動に可能性が生まれる。
だとしたら、望んだ行動に向かわせる方法はシンプルーーー望んだ行動に向かうまで時を巻き戻すこと。
アキヒトの想像通り、気が遠くなる作業。
「ーーー・・・・・・やめだ。能力の無駄遣いすぎる」
ただ問題は、心理技術を使う暇がないほどの気の隙間に加えて、きっかけを生み出したのは自分のミスだった件。
そしてーーーアキヒトの性格も同様だった。
想像以上に覚悟を決めた瞬間の強情さがあらゆる心の揺らぎも乗り越えて強力な一貫性を持ち合わせていたこと。
そしてそれは本来殺し屋には向いていない才能を。
・・・・・・なぜ、先輩ーーー君がこの才能を持ち合わせているのかは分からない。
分からないーーーが、それとなく想像することも難くない。
君は、守りたかったんだな、この世界の平和を望んでいたのかな?
懸賞金ヒーローに命を狙われるのはシンプルだ。
この世界を壊す可能性のある人間のことを指す。
殺すことで世界が有意義になると判断された人間をたとえ手を汚してもいいというヒーローが受け取り仕事を行う。そのような仕組みだ。
自分のような、そうしなければ生きていけない人間ももちろんいるが彼にはそのような雰囲気を感じない。
ーーー・・・・・・先輩、君のことを少しは理解できたのかも知れない。
九条は少し安堵した。
死神と謳われた賞金首ヒーローが、不気味な存在ではなく、ただの純粋な子供だったことに。
そして覚悟を決めて能力を解いた。
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「見つけた」
初めて見るその姿は殺し屋というよりも傭兵に近い姿だった。
ここまで来るのにどれほどの戦いがあったのか、顔面に彫られた大きな傷跡は嫌でも想像させる。
俺はソファから体を浮かす。
男はその動きを見ても、何もしなかった。
この部屋には罠が設置していないのか、それとも設置しているが罠を発動するのは抑えているのか分からない。
もしも相手が何かしら発動しようものなら、男の後ろの壁ごと壊してでも脱出するのが正解だろう。
どうくる?どうやって攻撃に移すーーー?
「君のような子供が死神とは思わなかった」
「ーーー?」
一体何をしたいんだ?
相手は何故か対話を行う。
俺は相手の行動を予測できない。
「先輩がこれまで培ってきた力は賞賛すべき問題だからな。これは素直に言わせていただくーーーこれほどまでとは思わなかった」
「ーーー・・・・・・一体何がしたい?」
「そりゃあこうやってお互いが向き合えば、数分後にどちらかが死ぬのは明確だ。できるだけ死なない様に立ち回ったがここまで近づかれてはそうはいかない」
男は、だから最後に、と付け加えて言った。
「お互いに忘れない様にと、そう思っただけだよ先輩。それとも死神から見てはそうは思わないのかな?」
アキヒトは考える、ここで素直に会話をしても良いのかと。
これは時間稼ぎだ!だから今すぐにコイツを殺さないといけない!と思って行動するのは早い。
だが相手からはその様な様子は見られなかった。
「死神死神うるさいな、殺した数ならもっと別の人間がいるだろ」
「ーーー!・・・・・・ふふふ、そうか不満だったのか。神の称号を持つ人間としても、存外俗物的な悩みを持っているとは」
「いやだから俺は別にその称号に納得しているわけじゃ無いんだよ!」
「いいじゃないか称号は。称号はたとえ当人が死なるとも残るものだ。名前を忘れられても称号さえ残れば嫌でも存在が認知される。称号ってのはその業界にいれば脳を焼き切るほどの狂おしいものだ。私には随分と羨ましいと思う」
「ーーー勝手に付いていたものだから知ったのは辞めた時だし、そのころには気づいちゃったんだよ」
「何に?」
「殺しても対して問題は解決しないこと」
「だが君は殺し続けたじゃないか。これまでもそしてこれからもずっと」
「そうーーー俺は殺し続けた。その命の責任は正直払うつもりもない。・・・・・・でも、忘れない。殺した命の温かさを」
アキヒトがつい口に出したのは、相手に明確な殺意を感じ取れなかったから、そしてーーー相手に対する純粋な敬意が見られたからだった。
「俺は無くさない!これからもずっと、俺はそれでいいから。機械になるつもりはないけれど、大事な人たちを俺から奪うならそいつを殺す覚悟だって付けてやる!」
「素晴らしいじゃないか!それはとても綺麗なものだ!ならーーーこれまでの彼らを私の仲間たちを、忘れないでくれるかな?」
「ああ、ちゃんと殺した後でも忘れないでいてやるよ」
男はーーー九条綾華は少し安堵したように優しく笑う。
対してアキヒトは全てを吐き出したのか、口を尖らせていた。
「この仕事に就いてから名乗ることも無くなったが、ここは一つ名乗らしていただこう。『十戒』棟梁ーーー九条綾華だ」
「『セブンウォーリアーズ』リーダーーーーミヤタアキヒトだ」
ーーー・・・・・・ああ、私はこの後存在しない人間となるだろう。
だが問題ない。
私は神に召されただけだ。
死神というーーー全ての頂点に立とうとする人間に。
「もちろん抵抗はしよう」
男は歯に仕込んだスイッチを押す。
瞬間、室内全ての家具が爆発する。
これはもしもの保険、それを発動するというのはーーー男にはもう、逃げる以外の選択肢が残っていないということ。
「【スティンガー】」
アキヒトはその抵抗を一番最初に読んでいた。
足元に反射板を置き、その推進力でアキヒトを前方に飛ばす。
九条に届くまでの数瞬、アキヒトは九条の表情が読めなかった。
ドドンッ!!
気がつけばーーーアキヒトは強烈な衝撃と共に空へ浮いていた。
次回:近日




