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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1.5章夏 『十戒』

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EX.256 「能力戦」

 浩然ーーー能力『心音(ハートビート)

 相手もしくは自身の心音を読み定める能力。

 シンプルな能力であり、浩然の技のほとんどはその能力を用いた技術である。


【壊拳】ーーーそれは心音のブレが頂点に達した瞬間、胆を叩く、すると心身のバランスが崩れて肉体とズレを起こす。


 アキヒトが仕留めた瞬間を狙うーーーそれが浩然の最大限の策。

 実際うまくいったが、問題はその後。


 天の巫女と名乗る人物が乱入したことだ。


 相手が見せた技は一つだけ、大幣を無数の槍を取り出したこと。

 自身の能力はちんけなもの、確実に仕留めるタイミングで仕留められたからこそ絶大な効果を得た。

 だが一度知られてしまった以上効果はほとんど無い。


 それにしてもやけに心臓が落ち着いている。


 浩然は静かに能力を発動し、相手の心音を確認する。


 あのような心音の落ち着きようーーー我々暗殺者やヒーローではなく軍人や戦士、しかも命をとうに捨てた死兵に近い。


 浩然は相手の不遜な登場に異議を唱える気はなかった。

 先のナベリウス・ウゴンボ戦によって見つけられたルールの穴をもう一度突く気になったのはあちら側なだけ。

 より強力な兵士を呼べばいいものを、あの者は目測Dランクヒーロー程度の実力。万全ではアキヒトとは遙かに劣る戦力。


 ナベリウス・ウゴンボの時に現れた頑強な人物の方がもっと恐ろしかった。星王妃が用意出来なかったーーーいやそれならばあの者は最初からいた?


 浩然は自らの推論に思わず笑みを浮かべる。


 だとすると一戦目、二戦目にそれを思わせる発言は無く突如三戦目に投入したことになる。

 つまりーーー彼はあの者の存在を認知していなかったのだろう。

 ずっと伏兵として潜んでいたーーー彼が殺されないように。


「時間稼ぎとは行かぬ。我が技は一日は保つーーーそれ以上は見たことが無いが」


「技のチャージを待っていたと考えなかったのですか?」


「考えたがーーー貴女の能力は一度解除すると大幣に戻る。そしてまた能力を使用した時に大幣から武具に変化し攻撃しなければならぬ。とすれば貯めて攻撃する術は無いと私は考えました」


「では、魔力のチャージは?」


 そう答えると彼女の全身から迸るほどの魔力が発せられる。元来どの人間にも存在する魔力だが、これほどクリアに見えるのは珍しい。


「十全のようですな」


「時間だけはありましたので」


「では、中国四千年の技法を見せてあげましょう」


「ならば私は日本舞踊をーーー冗談です」


 @@@@@


 二戦目が始まった瞬間、セイはアキヒトをさらに後ろへ蹴飛ばした。


「アアアアアアアアアアアアアアア!?」


 再度情けない言葉がどんどん遠くなってしまった声を聞きながら再び大幣を槍に変えて投げる!


「【火雷の槍】!」


 狙うは二本中心点!

 それも二本同時に!


 男は一点を絞ることでこの槍を止めることが出来た。

 だとすると同時攻撃ならば攻撃を止めることは出来ない!


 投げた二本の槍はそれぞれ見える速度で彼女の腕から飛び出す。

 だが避けられる速度ではないそれを、浩然は止める選択肢を強制的に取らされる。


「ぬん!」


 速度ではなく威力に振った槍は薄皮を剥いて、骨に届かせる。


 予想通り後ろに吹き飛ばした彼をセイは追いかける。


【火雷の槍】は本来威力では無く数とその後の爆発でダメージを与える技。これが限界ーーーならばもっとダメージを与える!


 セイは一度大幣に戻して、そこから剣に置き換える。


「【霧斬剣】!」


 セイは揺蕩う煙を纏った剣を取り出して、後ろに吹き飛ばされた浩然に斬りつける。


 ーーー槍ほどの速度はない!だとしたら上手く止められる!


 斬りつけた剣を横に弾くように殴り飛ばす。


「ぬっ!?」


 彼女は剣を()()()()()


 浩然は殴り飛ばそうとした剣は何事もなかったかのように切り裂いた。


 本来服も切り裂かれるはずが、同様に何もない。


「薄皮を裂かれただけですか・・・・・・」


 なるほど。この剣は守りを貫通する代わりにダメージは薄皮程度で済ませる武器。ですが地道にダメージを与え続けられるとすると致命傷を負わせられる。


「ですが先ほどと同じ武器はーーーっ!?」


「【雹捲刀】」


 しゃがんだ彼女が視界の隅に映る。


「【武雷掌】!」


 瞬足の居合い抜きと貫手が重なる。


「「っ!」」


 パキンッと音を立てて刀が折れる。


「【岳岳十二連等掌】!」


 先ほどの打ち合い打ち負けたのはセイの方。

 崩れ落ちたダメージで動けなかった隙に十二連撃が突き刺さる。

 一撃一撃に鈍痛が走り、身動きが一瞬取れなくなる。


 このダメージでセイは能力が使えなくなる。

 砕けてしまった刀は一度能力に収まるまで、再び発動することが出来ない。


 彼女が出来ることはーーーある物を投げること。それ以外出来なかった。


 ーーーだがセイが投げた物は・・・・・・。


 極細に近い時間の中で浩然は見た。


 彼女が投げたのはーーー指。


 浩然は再び己の右手を見る。

 自身が貫手として突き出したそれは第二関節以降が斬り取られていた。


 居合と貫手の勝負。

 本来ならば浩然の貫手は彼女が作り出した刀は簡単にへし折る硬度を持っていた。

 だが、彼が後手に回るしかなかった上、さらに居合の速度が優っていたため斬り飛ばされていた。


 浩然は一瞬動きを止めた。


 その一瞬の中にセイは大幣を投げた。


(どのような能力だとしても受け流すことは!?)


「【地刃砂嵐】」


 大幣が爆発する。


 高速回転する砂が皮膚を削るーーーだが、それはセイも同じ。

 ーーー自爆技なのか?


 浩然は斬り取られた指をちぎり取った布で押さえながら、一度停止する。


 ーーーこの技は致命傷ではない。ここで気にするべきは刀か槍。叩き折った刀が直るのに時間がかかるとしたらこの戦いの中で作り直せる物なのか?

 それに気になるのは彼女の技。

 どこか繋がりがあるのではないか?

 そこを突き止めればすぐに能力が分かり、弱点を見出すことが出来る。


 対アキヒト戦では『パーフェクト』の能力の都合上、対応しても別の能力があるからむしろ全力で攻めた方が強い。だが彼女の場合敢えて分かりにくい技を使っている印象がある。


 むしろアキヒトは無数にある能力が脳みその中で図書館のように連なっているため、相手の能力が二度三度喰らえば理解することが出来る。


 ーーーだが本来の能力戦。

 シンプルな能力ほど火力が強く、複雑な能力ほど機能性が高い。

 そして複雑な能力ほど耐久性は低いが、理解するまで相当な時間がかかる。

 そしてもう一つ能力の特性がある。


 理解するまでどれだけかかるだろうか。

 だが仕留められるまで耐えればーーー。


「【雨月弓】」


 ーーーそしてもう一つ能力の特性がある。


 それは、能力を理解しても突破する難易度が変わらない能力。


「なるほど・・・・・・貴女の能力はーーー『天気』ですね」


 彼女は弓を射る。


「ーーーっ!」


 矢のない弓から水球の矢が腕を貫通する。

 これが心臓に届けば致命的なダメージが入ってしまう。


「なるほど・・・・・・貴女の場合はーーー理解しても難易度が変わらない能力なのですね」


「正直ーーーここまで速く読み取られるとは思いませんでした」


 そう言って彼女は再び槍を取り出してーーー構えた。


次回:近日

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