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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1.5章夏 『十戒』

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274/303

EX.255 「援軍」

 痛みよりも先にーーー何かが欠けていく感覚があった。

 大切で、無くしてはならないものが。


 @@@@@


 24時にリセットされる都合上、最も危惧していたのは二人がほとんど同時に襲いかかってくることだ。

 23時59分と24時丁度に対戦が始まる場合、アキヒトは同時に二人を相手しなくてはならない。

 雑多な相手ならともかく問題は有名な賞金首ヒーロー。


 今まで運が良かったのはこのチームが我が強くチーム戦を行わなかったこと。

 今回も似たようなものではあったが、23時に始まったシュウ・ハウゼンの戦いは、シュウ・ハウゼンの健闘により1時間掛かることが出来た。


 彼の能力の関係上チーム戦が不可能だったが、強力的だった彼はもしも自分が仕留められてしまったときにも活躍できるように用意した。


 爆発後の粉塵ーーーそれが彼の目的であり最後の奥の手。


 全ては彼の為に。


「【壊拳】」


 意識を隠した一撃によってアキヒトは壊された。


 @@@@@


 肉体にほとんど痛みは無かった。

 むしろ不可思議な一撃を貰ったというショックの方が甚だ大きい。


 速く起き上がらないと!


 脳から身体全体へと強烈な電気信号が走るーーーだが、問題の身体が全く動かない。


「な、んっ・・・・・・でだッ!」


 頭がどれだけ動かそうと命令しても身体が決して動こうとしない。


「それは身体では無く心を壊す我が奥義【壊拳】。一度壊さればなす術も無く動かぬが通り」


 煙が払われたそこに居たのは背幅の大きい僧侶服を着た中国人。それもかなり初老に見える。


「貴様は悪意に強く反応する感覚があるらしいな。ならば昆虫が如き感覚を用いて仕留めるーーー二度は要らぬ一度のみだ」


「心なんて不可解な・・・・・・ッ!?」


 身体が必要な反応を起こさない!これって、つまりはーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()


 金魚のようにパクパクと口を動かしても酸素が入ろうとしてくれない。心臓もやけにゆっくりと感じる。


「ここからゆっくりと死んでいくのは忍びない。ならばここで一息に仕留めよう」


 貫手をゆっくりと自分に翳し、今度は目にも止まらぬ速さでーーー!


「【火雷の槍】」


「!?」


 瞬時に強烈な轟音と共に無数の槍が!?


 抵抗、迎撃?否、回避だ!


 浩然は大きく後ろに跳ぶ。


 カカカカカカカカカカッ!


 十本の槍が浩然が居た場所に突き刺さりーーー爆発した。


「あああああああああああああああ!!」


 爆発の威力に吹き飛ばされて浩然との逆の方向にコロコロと転がされる。

 ヤバいこのまま転がされると落ちる!


「随分と情けない声を上げるのですね」


 踏みつけられて潰されたカエルのように「グエッ」と情けない声をより一層に漏らす。


「おっ、お前はーーー!」


「貴方の身体が動かなくとも能力は使用出来るでしょう。少なくとも心臓や肺は」


「そうか」


 俺は能力で酸素を無理やり肺に詰め込み、電気ショックで心臓を動かす。

 このまま能力を使用し続けていれば死ぬことはない。


「魔力はまだまだ十全のようですね。触れば痛そうです」


「お前っ!なんでここに!」


「共犯者に死んで貰われると困るのです」


「ふむ。共犯者とは珍妙な」


「「!!」」


「このような死地に参るのに、生者はいてはならぬ筈。何故ここにーーー?」


「以前人権が剥がされた者もこの戦いに参加出来ると聞きました」


「つまり貴女にも人権が」


「いえ、私には元々無いのです」


 その答えに浩然は驚く。それは人権が無いと話したことよりも、そのあっけらかんとした態度に。


「我々の一族は神に召される時要らないものは全て捨てる決まり。私は次の巫女で御座いますので」


「ーーー風の便りで聞いたことがあります。星王に連なった一族であり、自ら天の生贄になることで天災から回避させることが出来る者が居ると。貴女がそうですな」


「ええ、貴方の名前を聞いても良いですか」


「はい。私の名前は浩然。しがない中国拳法の使い手でございます。して貴女はーーー?」


「私は新たに天の巫女を襲名しました。雨宮(セイ)と申します」


「ここまでの話をしてーーーつまり貴方は代理と?」


「はい」


 セイは大幣を取り出してくるりと回す。

 するとーーー大幣が槍に置き換わる。


「あれが先ほどの槍ですか!」


「【火雷の槍】!」


「ですか先ほどの量を出せるのでしょうか?」


「出来ますよ。ですが今は『速さ』です」


 浩然は構えるーーーが!セイが振り抜いた瞬間、槍が爆発的に加速する。


「!!」


 セイは直撃を確信した。

 だが、彼女が投げた槍は強引に突き出された手のひらに止められる。


「目にも止まらぬ速さであるならば、直感を信じて止めるのみ。私は運が良い方だそうです」


 ーーー思っている以上に貴女の攻撃は大雑把、であるならば的が大きい胴体を狙うと考え、信じて良かったがーーーダメージがこれほどとは!


「なるほど私の技術に気づけたようですね。だとしたらこれからは量を増やしていきましょう」


 次に彼女は槍を二本取り出す。


「もっともっと大雑把に行きましょう」


「能力の速度では無く、読みで行きます。私が死ぬまでにーーー」


 浩然ーーー能力『心音(ハートビート)』。

 雨宮泚ーーー能力『??』。


 崩れ始める明石海峡大橋の上で再び強者は集う。

 男は確信するーーー己の勝利を。

 女は確信するーーー己の勝利を。

 その確信はどちらが欺瞞になるのかは、神のみぞ知る。


 十戒第7回戦 代理戦ーーー始まる!

次回:近日

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