EX.252 「回れ廻れ」
ここは尼崎市にあるアミューズメントパーク『NITRAC』。
ここでは保有されている能力を疑似体験できる施設であり、また放出された魔力は即吸収されるため効率よく運営出来ているらしい。
おまけにこの施設はS級ヒーローが監修しているため、耐震や耐破にすぐれているらしい(パンフレットにはそう書いてあった)。
なぜこんなところに来ているかというと、修行したいけれどもいつもしている国外には出れないので県内でとりあえず暴れられるところに向かったというわけだ。
ちなみに一番暴れられるだろう星王宮はおばあちゃんとレインボーがウザすぎたので逃げてきた。
「やべえ楽しすぎる。なんだこの能力は!強くなっているぞ!」
「そいつは『昇華』の能力だよ。魔力が続く限り肉体を強化し続ける能力なんだ」
「ほぉーーー。今ならジャンプで富士山まで行ける気がする」
「無しでも最終的に行きそう・・・・・・」
某格闘家みたいなポーズをしている山本(協力者)を俺も能力を発動してみる。
俺の中にいる妖精たちの大バッシングを無視して、適当に『ファイア』の能力で火を吐いてみる。
手のひらからはほんの少し温くなった程度の炎がぬらっと現れる。ただまあイメージした能力がそのまま出てこなかったような違和感があるというか、なんというか。
一言で言ってしまえば中途半端な気がする。
被害を抑えるために魔力を吸収しやすい鉱石を使っているためか、ちゃんと出したって結果が見えないしつまんないなぁ。
「これが・・・・・・『パーフェクト』の悩みってやつか」
「大富豪が小銭持ってない悩みみてえ」
「いや違うんだよ。普段は妖精たちが能力を強化してくれているためか俺の馬鹿多い魔力と相まって馬鹿みたいな砲撃になるんだよ!ロマン値高いんだよ!」
「ロマンもクソもねぇな」
はい、そうですね。
閑話休題。
「んじゃ、そろそろ練習に付き合ってくれ」
「いいけど何すんだよ」
こいつにはほとんど拒否権はない。このテーマパークの入館料やここまでの道のりは全部俺が払ってるからだ。
「超覚醒だと普段の魔力の底上げというか、普段よりも魔力を扱う効率がよくなるような気がするんだよな。んで、普通の覚醒と違うのはパワーよりもテクニックによってる気がするんだよな」
「ああ、さっき競走した時お前だけ宇宙空間だったもんな」
それパワーと関係ない。
「テクニックかぁじゃあこれか?」
山本が取り出したのはあやとり。
なんでこれを持っているのかわからないけれど、とりあえずこいつの足を蹴り折りたい。折れないけど。
「それは置いておいて魔力を扱うことについてより万能になった感じがするんだ。本職のカレン並みに」
「んじゃあすげえってことか」
いや、まあ分かってたよ。能力のほとんどを体を堅めることに使っているお前にこの話は通用しないってことに。
「そこで俺のこの姿は普段の俺の弱点を補えるんじゃないかって」
「アキヒトでいうと・・・・・・銃あたりか」
「そそ」
この世界は能力の他にも銃もガッツリ強化されており、実際トモキのような能力の恩恵をしっかり受けている人も多い。
もちろん普段から鍛えている人たちにとって能力や肉体単品でやれている人も多いが、能力+銃が当たり前の世界において俺はかなり割を食っている。
そう、銃がド下手で狙った的の真反対の方向に進むのが当たり前の俺にとって、銃の対策しか考えないのは極々当たり前のことだった。
だが銃というのは思っているよりも複雑なものであり、直撃と発射に最大のエネルギーを持っているので【フルカウンター】じゃ返したとしても相手に届かないし、現物なため【ルールブレイカー】が効かない。
「だからこれを使ってみるんだ」
俺は手を合わせてゆっくりと開く。
そして魔力を平べったくするイメージを整えて。離す。
すると長方形の魔力板ができる。
「結構デカいなこりゃあ」
「純粋な感想ありがとう。んで触ってみ」
山本は俺に言われた通り俺の前にある魔力板を触る。するとーーー
「おうっ!?」
大きく指先ごと手が跳ねた。
「これは【スティンガー】って言って確実に一度だけ反射する魔力板なんだ」
「一度だけか・・・・・・ここでいうのもなんだけどさ。その【スティンガー】って名前考えたのお前?」
「いや、レインボーが考えた」
「そうだよな。お前のセンスっぽくないもん」
なんだよ俺のセンスっぽくないって俺のセンスが悪いみたいじゃないか。
山本の失礼な物言いに心を痛めながらも、俺は続きを言う。
「これから【スティンガー】の分裂に向かって努力するつもりだけど耐久性にどれくらいあるのか気になるし一発やってくんないかな?」
そういうと俺はもう一度【スティンガー】を用意する。
「いいけどさ、俺でよかったのか?純粋な物理なら効くの分かってるのなら、もうちょっと特異な道具持ちに頼ったらいいんじゃなかったのか?」
確かに一番に呼ぶべきは銃を使うトモキではある。
「まあ一応考えたけどさ、これ以上変に巻き込みたくないのが一つ。簡単に連絡つかなかったのが一つ」
トモキとユウスケは実家に、ユウキは着信拒否しやがった。リーダーは悲しいよ。ハルトは東京に行きやがったし。
「ああ、ハルトは確かコミケに出るみたいだな。何出すんだろ」
「さあ?俺もスズも母さんも部屋に入れなかったから分からん。ただアイツは絵を描くのが苦手だから違うジャンルだろう」
俺は漫画は好きではあるがコミケに行くほどの熱量の無い人間なので逆に羨ましい限りではある。
そんな思いは山本の「お前は武器オタクだろ」と一蹴された。
ちなみに言っておくが俺は別に剣が連なっている博物館には一回しか行っていないぞ。
「まっ、結果的に一番話が通ったのはお前だったし、破壊力ならトップクラスだろ?やってくれよ」
「ふっいいだろう俺の【空圧拳】を食らって、お前の新技の鼻っ柱を折ってやるぜ」
@@@@@
結論から言うと、俺の【スティンガー】はしっかり反射しきった。
「俺の自信が折れたわ」
自分の放った【空圧拳】によって弾き飛ばされた山本は首をガックリとおとして帰ってきた。
「やってみたら分かるけど思ってた以上に綺麗に反射してきたな。俺の技って意外と持続力があるんだぜーーー?」
「?どした」
「いや、なんかノイズずずず!?」
突如山本はマリオネットに操られたようにガクガクと外に向かっていく。
「うぉおおおおお!?これはぁぁあああ!?」
よく周りを見ると家族連れもカップルもキャストも関係無しに外に向かっていっている。
「もしかしてこれ・・・・・・人避け?」
そう言えばおばあちゃんが言ってたような気がする。
これ、思っている以上に強制力が高そうな代物だなぁ。値段的な意味でも。
「また今度!!」
「何も分かんないんだけどどうすればいいんだ!?」
「どうもこうもそのまま前に突き進めばいいと思う!」
「誰も自己啓発本の中身には興味ねぇ!」
わーわーぎゃあぎゃあと山本が叫びながら進んでいく。
他の人の静かさをみると思ったよりも抵抗力がものを言うんだな。まだまだ山本の努力も足りないと言うことだろう。
じゃあ俺も頑張るとするか。
そう思うと俺は大きく背伸びをする。
@@@@@
大きな花火の下はテーマパークよりもそこに併設されている立体駐車場だった。
ここってテーマパークと併設されているからテーマパークも入っていると考えてもいいのだろうか?
前回の三宮駅周りの戦いもあって変に考えてしまう。
とりあえず俺はぐるぐると廻りながり駐車場を登っていく。
「・・・・・・・・・・・・いたわ」
思わず声に出してしまった。
この姿どこか見覚えがあるようなないような。
そう言えばこの制服スズが一度解決のために向かった阿木薔薇中学校の制服に似ているーーーっていうか本物か?
見た目はどちらかと言えば和服を着たらより美人と思えるような和美人だな。
ーーーって思うのは置いておいて。さっさと顔合わせするべきか否か。
「ーーーどうも」
俺が攻めあぐねていると彼女が話しかけた。
「どうも」
会話の主導権はあちらのほうにある。
俺は粛々と従わなければならない。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
気まずいなぁ。
話しかけられた瞬間に先行が勝者の特権だ。
相手のはなしをまtsud・・・・・・?
「ふふっ面白いですね」
体内から熱が溢れる。これは何度も見たことのある身体が治っていく熱。
何故、今、ここで?
「貴方は本当に痛覚が無いんですね?比較的酷いものらしいですよ?内臓がぐちゃぐちゃになる痛みって」
ぐちゃぐちゃ?何をどうやって?
いや、何をは分かりきっている。内臓だ。
つまりこの子は見えていない臓器を抑える能力者・・・・・・。
こうなったら!
「!?・・・・・・カハッ」
俺は考えた瞬間飛び出し、横腹を殴り飛ばした。
軽い、全然鍛えられていない身体だ。
このままなら行ける!?
ーーー俺は忘れていた。
これは能力戦であり、何も能力がわかっていない状態で飛び出すのは無謀だと・・・・・・。
俺は彼女と目が合う。
何十も重なっている瞳孔と目が合う。
「廻れ」
一言。
その一言で、俺の目玉は飛び出した。
十戒第五回戦
アキヒト 対 朝霧薊
場所 立体駐車場
戦いはもう始まっている。
次回:近日




