EX.248 「勇気の証」
「あっアキトくん」
「おう・・・・・・」
夕方近くになって、今日はバイクで町内を周りながらやるべきことから逃げていたところ、聞き覚えのある声に止められた。
「何それバイク?」
「ああ、とてつもなく見覚えないフォルムをしてるけどバイクなんだよ」
一応この後おばあちゃんに教えられた内容をそっくりそのまま伝えておいた。
「へぇーー便利だね。太陽光パネルってどこに備えているんだろ?いつか私にも乗れるのかな?」
「とんでもない金が回ってるっぽくてオススメはしない」
アスナはバイクの免許を持っているのだろうか?俺はトモキを誘ったから他の誰が持っているのかは分からない。
「でもそんな隈を濃くして!だめでしょ、寝不足で運転するなんて」
「うぐぅ・・・・・・」
アスナの言葉がものすごく痛い、どのくらい痛いかというとアスファルトを地肌でゴリゴリされたくらい痛い。
「さっきスズちゃんと遊んでいたけど、アキトくん最近忙しそうだって言ってたし、不安だよ?」
「ああ、えっと、不可抗力というか、何というか、この頃の青少年ならなんて事ない悩みと言いますか」
「ゴニョゴニョ言ってないでハッキリ言う!」
「・・・・・・怒らない?」
「アキトくんが何を言おうと今更だよ?」
言いたくない!ーーー正直心の中で善性の俺が話している、いや叫んでいる。とはいえ、ピュアな心が「何で話すことになったの?」って疑問をかけてくる、うるさい黙れ。
どうしよう?本当にどうしよう?何でこんなことになった?思い出そう!
そう俺は昨日の戦いからレインボーさんに襲われ続けている。そんなのいい話じゃないかと言われると思うけど、俺にはどうしようもないデッドラインが見える。
レインボーに手を出した瞬間致命的になるのではないかという不安がある。
レインボーさんはぶっちゃけ俺たちの中で誰よりも強い。レインボー自体の鋼の精神と俺の気持ちを拾ってくれて今まで何とかなっているけれど、ここで一線を超えてしまえばレインボーの愛情がどのような形を作るか分からない。
誰が悪いかというと間違いなく俺なんだけど、俺は童貞だと叫びたい。こんなことでしてしまえばレインボーさんによる究極のマウンティングが発揮されるに違いない。
結論、何をしでかすか分からない。
だから逃げた。バイクに乗って。あの後俺は逃げ続けて今に至るーーー。
ーーーいやどう言う事だよ!訳わかんないよ!
一回実家に帰ろうかしら、と思っていた時に今この状況であるけど、、、
「アスナ・・・・・・いやアスナさん」
「う、うん・・・・・・」
「エッチがしたいです」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
かなりの静寂。体感時間7時間。何とか言ってくれ、いや何も言わないでくれ。
正直したいです!ええ!したいとも!俺は健全な漫画の主人公のような鋼の健全術師じゃないんです!友達と一緒にエロ本の話をする社会的には健全な高校生なんです!(当社比)
ーーーああ、そんな感情の抜けた顔で見つめないでください。罵ってください。いや変態的な意味ではなくて。
「・・・・・・別にイヤじゃないけどムードとか考えて欲しかったな」
「え?????????????」
「うわ声おっき」
「俺がアスナとゴニョゴニョゴニョゴニョ」
主語以外何も言えませんでした。はい、私は雑魚です。
「アキトくん」
「はい」
「今週はちょっと難しいと思う。やらないといけないことがあるし」
「え?え、え?アスナ?何をーーー」
突然アキヒトは気づきを得る。
スズネから再三聞かされている魂の叫び、女の勇気を男が邪魔してはいけない、という鉄のマナー。
「ああ、うん。俺も今週はまだやらなきゃいけないことがあって常に入れないんだ」
「ふーん・・・・・・今日誘われたかと思ったから驚いちゃった」
「拍子抜けとか考えてる?」
「うーん、急かすような人じゃないって知ってるから、聞かせて」
「ーーー何を?」
俺のスケジュールを、とか?
「いま、何をしてるの?」
「えっ・・・・・・と・・・・・・」
「さっき言ったでしょ?スズちゃんから聞いたよ。面倒なことにまた巻き込まれたんでしょ?」
「・・・・・・うん。アスナにはバレちゃうな。昔からこんなもんだ」
「アキトくんが分かりやすいのが問題じゃない?」
「そうかなぁ・・・・・・バレない方が多いんだけどな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
先ほどよりかは辛くない沈黙だけど、絶対に話させようとする圧を感じる。
ーーー降参だな。こう言う時アスナには勝てない。
「実はーーー」
@@@@@
「何それ理不尽じゃない!」
「理不尽なのはそうだけど、ぶっちゃけ納得してる」
「え?」
「俺が昔やったことの採算とか言われると納得できないけどさ、俺自身に懸賞金がかけられてそのために命を狙われるのは理解はできる。正直俺も昔やってたしさ」
「私も手伝うわ」
「大丈夫」
「確かに星戦戦争の時ほどは戦えないけど、力になれるはず」
「アスナの力に何度も助けられたのは分かってる。けどアスナだってやるべきことがあるんだろ?」
「それは・・・・・・確かにそうだけど。リスケとかいくらでも方法がーーー」
「俺を理由に大切な用事を抜けてほしくないし・・・・・・だから代わりに、勇気をくれないか?」
「勇気?」
「えっと、お守りとか、俺がどうしても諦められなくなるような物が貸して欲しい」
俺が追い詰められた時に、終わらせたくないと、心からそんなものをーーー。
「うん、じゃあこれを」
「ーーーネックレス?」
立体ひし形の綺麗な碧色のチャームが拵えられた綺麗なネックレス。
「うん、これは星戦戦争から帰った時に作ったんだ。アキトくん、昔教えてくれたでしょ?目の色、今は真っ黒だけど、前は碧色だって。だから私の好きな色になったんだ」
そんなこと・・・・・・覚えててくれてたんだ。そんな他愛もないことを。
「貸してあげる、だから必ず返してきて」
俺はそのネックレスを身につけて、ニヤリと笑う。
「ああ!必ず返しにいく!ーーーだから、待っててくれ」
「ーーーうん!」
@@@@@
腹ごしらえする時間は十分にあった。
夏でも十分暗くなってきた時間帯。
一戦目とはまた違う雰囲気。
「あっ・・・・・・」
頭上に照らされる空の光、巨大な花火が舞う。
「マジか、結構近いんだな」
俺は一度引き抜いたネックレスを見つめる。
「よし、行こう」
@@@@@
「どこだ?どこにいる?」
場所はJR三宮駅。終電でもない時間帯だが、いつものように人がいない。相変わらずどんな力を使用したんだろうか。
下手なトラップも仕掛けられていないし、電気が点けられているから隠れているようなものが見えない。
『ソナー』の能力を使ってもおかしなものは見えない。
いったーーー
とす、と静かな音がした。
足に鈍い痺れを感じる。そっと下を向くとナイフが自分の足に突き刺さっていた。
「っーーー!」
「おっとボウイ。随分と集中力が切れてしまったんじゃないかい?」
見た目の硬さと裏腹に軽薄な口調の男が、自分の影から飛び出していた。
十戒第四回戦
アキヒト 対 中保慎英
場所 三宮駅周辺
開ーーー
「【レッグ・ビックバン】!!」
「ぶっ!がっ!?」
サッカーボールのように蹴り飛ばしたソレはバウンドして柱に吹き飛ばされる。
思ってたより感触が薄いーーー?
「おつつ・・・・・・突然な挨拶じゃないの。まあいいや、聞きたいことがあるんだけどさぁ。物言わぬ屍か死ぬ前にかっこよく置き土産残す奴。どっちになりたい?」
「どっちもやだ!」
第四回戦
開始ーーー!
次回:今度こそ近日




