EX.124 「ゼロへと」
「空の上で何が起きてるんだ!?」
「ディザスターの正体!?」
「おい立ち止まるな!!逃げろ!!」
『こいつらの恨みには『体験』と『意志』が欠如している!実体のない空っぽの敵なんだ!!』
国営亀電話から放送に流れるウバボシの悲痛の叫び。その最中、魚人達は島を出ようと必死になっていた。
「ウバボシ王子は······何を言おうとしてるんだ!?」
「逃げるぞ!!もう上空にはノアの影が見えてる!!」
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通常E·Aを一粒でも摂取すると、たちまち凶悪な力を手に入れる禁薬。
だがそれをたらふく食べたディザスターは本来の姿を忘れ、凶悪なカイブツになりかけていた。
アキヒト、テティスとの距離はほんの50メートル。
たとえテティスが最高泳力を持った人魚と言えども、アキヒトを抱えたままでは一種でたどり着かれるだろう。
しかし、蓄積されたダメージははるか前から肉体の限界を発している。今でもはちきれそうな心臓を無理矢理抑え込んでディザスターは吠えた。
『人間というのは下等な種族だ。忘れるなディザスター。あいつらは『悪しき存在だ』』
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ディザスターが産まれ、育った所は【魚人街】そして時代は西暦に入って最も最悪の戦争とも言われた『第三次英雄戦争』の最中。
「くそが······!!第三次英雄戦争が始まって魚人島で毎日人が死ぬ!!」
「人間共が暴れまわり若え人魚達をどんどん攫ってく!!」
「行き着く先は死だ!!魚人島はもう終わりだぁ〜〜!!」
これは戦争の裏で硝煙の中に隠された、人間と魚人との決別の日。
人間は魚人を道具として扱い殺し、魚人達はそれに怒り人間達を殺していく殺戮の連鎖。
時には人と道連れに死んでいった魚人を『英雄』と名指し、祝杯をあげることもあった。
「これは【聖戦】だ!!大昔······人間というクズ共は······!!天に選ばれ、優れた能力を持つ魚人族を妬み······その存在を恐れた」
時折ライダーが戻ってきて、魚人街の子供達に怒りを説く日もあり。
「だした答えが【迫害】だ!!ウジムシの様に世界にはばかる人間共は、唯一おれたちに勝る『数』という切り札で魚人族をこの海底へ追いやった!!——————いいかお前ら······!!」
つねにライダーは子供達に言った。
「人間を呪え······!!」
と。
「人間は恐れている。いずれ必ずくる『裁きの日』を······!!」
「我々の報復の時を!!」
「歴史を忘れるな。死者達の無念を想像しろ、恨みを引き継げ!!」
当時若かったディザスターは、ライダーや強行派の魚人達の叫びを心地よく聞き、ルゥのような穏健派は吐き気がすると聞くことはなかった。
そんなある日——————、
「大事件だ!奴隷解放の英雄ロジャーさんが!!人間共に殺された!!」
「え!?」
その日からだった、ディザスター率いる『新解放軍』達が静かに動きだしたのは——————。
新解放軍が真っ先に行ったのは『魚人狩り』。その内容は人間に血液を提供した魚人の家を燃やすのだ。述べ百を越えた魚人達が新解放軍に襲われたという。
「この国は王族から頭が新イカレてやがる。人間を許そうってんだぜ」
「聞いたか!?リュウギョウさんが【アルゴノォト】に入ったッピ!!」
「ライダー一味だけだ。種族の体裁を保っているのは······!!」
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『十年前』
「おい!本島は今大騒ぎだ」
「オトヒメ王妃が人間に撃たれた!!」
オトヒメが亡くなったのは一日を跨ぎ、魚人街にも届いた。
「見ろ、これが人間だ!!」
「おれだけ人間に好意的な王妃にも人間は容赦しねぇ!!」
「ここで復讐し、プライドを示さねぇ王族なら、おれたちァもうこの国を一切信用しねぇ!!」
「そんなフヌケた国なんざ必要ねぇ!!」
オトヒメの死による魚人達の結託が次々に起こり、新解放軍は膨れ上がっていく。
その最中、その事件は実際に起こしたディザスター達は祝杯をあげていた。
「シャハハハハハ!!恥晒しの『主犯』が、天に裁かれた!!)
「人間を許そうなんて悪党は死んで当然だドスン!!」
幹部、皆で酒を飲み合い成功の余韻を煽るなか、ディザスターは懐から袋を取り出して机に置く。
「復讐の時······!!それは今だ!!ついに天はおれ達を選び、力を与えた······!!」
「キャッ、コレまさか」
「伝説のブツだっピ!?」
「よく手に入れたなドスン!!」
「量産できるかゼオ」
「やってみよう」
「国に呆れた魚人街はやがてまとまる——————これは聖戦!!準備を始めろ!!命の限り人間を殺す準備を!!」
彼らに焼いた『正義のマーク』は、人間の頭部と肉体を外した簡易的なマーク。——————それが『新解放軍』のシンボルだ。
「おれ達は選ばれた!!復讐という『正義』を受け継ぐために!!裁きの日は必ずくる!!」
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「シャハハハハハ······悪しき下等種族よ!!この報復におれ達は命を捧げる!!」
アキヒトは未だ尚、ディザスターを睨みつける。
『【貯空庫】』
兵士達は照準をしっかりとあわせ、タイミングを計る。
「注意しろ!!島を守るシャボンと違いコイツは船を突き通す!!【ノア】を取り囲むんだ!!行き過ぎては意味がない!!」
ノズルからシャボンが膨らんでいき、やがてボンッ!と外れる。狙いは【ノア】、たった一瞬の奇跡の為に放たれた望み。
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「手遅れだったんだ」
ウバボシは深く呻く。
「いつしか疎通を失った【魚人街】は、まるで切り離された【魚人島】の暗黒の感情。我々は······海底深い無法の溝に蓄積し続けた。いびつな『怨念』に見てみぬフリをし!!表面ばかりを整えて、前進した気になっていた!!」
『辛いでしょうけど······!!人間達の怒りを······!!憎しみを!!子供達に植え付けないで······!!」
そうこれが、これこそが母上の言っていた言葉の原理。
「手遅れだったんだ!!こいつらこそが!!母上が最も恐れていた存在!!我らはまず······内側と戦うべきだった!!母は魚人島の『怨念』に取り殺されたのだ!!」
『犯人がどこの誰であれ、私の為に憎しみに取り込まれないで』
「あの人はそれに気づいていたのかも知れない······!!しかし私は心のどこかでまんまと人間を恨んでいた。死者の無念は死者のもの。『怨念』は生きる者が勝手に生み出して増幅させる幻!!」
「ウバボシ王子······」
「わずかに人間を恨んだせいで見落としていた【魚人街】の怨念は······!!気づけば我らでは手に負えぬ程強大な力になっていた!!このまましゃあ!!魚人島は『人間を恨む心』で我が身を滅ぼす!!アキヒト······頼む!!」
「過去などいらない!!ゼロにしてくれ!!」
「——————この島をタイヨウから遠ざける······!!亡霊を消してくれ!!お前の手で!!魚人島をゼロに!!」
「ほざけウバボシ······魚人族の怨みは永遠だ!!」
『ウバボシ······』
アキヒトは亀電話を手にとって言った。
『俺の好きにしていいんなら······安心してろ!!』
「おいマンハッタン大広場でディザスターの一味と戦ってんの······セブンウォーリアーズだって!!」
「リュウギョウ親分も一緒に!!」
アキヒトの声はマーメイドハウスの人魚達にも聞こえていた。
これはアキヒトがウバボシ達に向けたメッセージ。
『広場に降りた時から、俺達はリュウギョウと一緒に魚人島は誰にも傷つけさせねぇって決めてるんだ!!——————全部任せろウバボシ』
『友達だろ?」
こんな人間を我々は疑っていたのか······!!
アキヒトの声が最後に聞こえ、再び放送は途切れる。逃げていた魚人達はいつしか歩を緩め、気づけば足が止まっていた。
「······おれ島に残る······!!」
これは誰が言ったのだろうか?——————だがその声を皮切りに、魚人達は口々に自分もと叫びだした。
彼らは9人の英雄達を信じたのだ。
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『【ノア】外周』
落下し始めたノアを【貯空庫】にいた兵士達はシャボンを入れる事に成功した。
「アキヒト様っノアに空気が!!」
「ああテティス!!俺の近くにいてくれケガはさせねぇから」
「は!!はいっ」
そう言ってテティスはアキヒトの身体を一瞬手放す。
アキヒトは身体をひねり、背後にいたディザスターに立ち向かう。
「あっと言う間に終わらせるぞ!!」
「何も終わらねぇさ!!おれ達には······!!天より授かる薬がある!!」
「【覚醒】!!」
アキヒトの全身に金色のオーラと、覚醒した姿を指す金色の髪が浮き出る。
「【ビッグバン——————!!」
「次こそその腕食いちぎってやる!!」
アキヒトの左手が異様な赤い閃光がほとばしる。レーザービームのように閃くその腕はアキヒトの新しい進化技。
「——————アクセラレータ】!!」
瞬きをする間に放たれた拳はディザスターのみぞおちを射抜き、その爆発力はディザスターの身体を貫いた。




