EX.123 「戦線境地③」
戦乱の中、吉田はミニゴライアスを生成。そのゴライアスに分離させた鍵を渡して『奴隷タンク』をさせられている人間の首輪を外す。
「錠が外れた!!」
「オイ何事だ!!誰だ奴隷達の錠を外したのは!!」
「うわ、どうした奴隷共!!」
首輪の拘束を解かれセルファーが乗る奴隷タンクが前から崩れ落ちる。
「お前か!?なぜおれ達を助けてくれたんだ!?」
「この場では人の頼みは断れなかったの。お礼ならリュウギョウ親分に」
「テメェ!!勝手なマネを!!」
「あっ」
セルファーの捕獲網に無防備だった吉田は捕まる。
「ハッハル!!捕まえたぞ!!」
しかし網にかけた筈の吉田が花のように溶けていって、網から力がなくなる。
修行により強化されたゴライアスには、『真似事』を行う事が可能になった。
言うならば有幻の分身。吉田自身の肉体に変化させる事が出来る。
「材質は肉······。このゴライアスは岩で出来ていない。故に柔軟に事を進めることが出来るのよ」
「うお!?テメェいつの間に背中にっ!!」
「すぐ終わるわ。大人しくして······」
その足から、その背中から吉田が生まれる。
その存在はゴライアスの力を持つ。
「【ダルブル·クラッチ】!!」
万国から攻められても傷一つつかない壁がモチーフのこの能力。それが力に組み込まれると生身で防げる術はない。
V字に背中を折り曲げてセルファーの背骨から固める。
無防備に、抵抗できずに折り曲げられたセルファーは、血を吐いて倒れる。
「うわぁ!!セルファーさん!!」
「恩にきるぜねーちゃん······お前らよくも今まで······陸じゃ負けねぇんだよお前らなんかにぃ〜〜!!」
「人間の奴隷達が暴れだしたぁ〜〜!!」
恨みを溜め込んだ人間達が、本来アキヒト達に対抗する為に持たされた武器で襲いかかった。
「あれ!?見失っちゃった!!あの人」
ゼオはカレイと同様に周囲に擬態出来る種族。彼は陸を泳ぎ気づかないカレンに刃を向け——————
「【カムフラージュ·カーペット】!!」
「え!?こよ辺りから声がした〜〜!!」
「ギャア〜〜〜〜〜〜!!」
【キラメラ】の炎を熱を持つ3つの【小刃】に変えて、自身の足元に投げつける。するとドドドッ、と鈍い音がしてゼオに刺さる。
「ゲホッ······見たか女!!能力破壊技『ボディ·チェンスブレイカー』により······貴様の技はボロボロになっている」
「刺さったし、これ投げた時にリンク途切れてますよ」
「そう思い込んで敗北しろ······愚か者!!」
ゼオは分胴鎖を取り出して、地面を急スピードで泳ぎカレンに首を締める。
「【絶首·ろくろく廊】!!」
「ウ······!!」
必死に鎖を解こうとするが、首に切れ筋が入り千切れ飛ぶ。
『私······わかったんです······。この能力の真骨頂を——————』
@@@@@
「それはどう言うことなんだい?カレンくん」
専用の対魔術のスペースで、魔術の限度値を超える特訓をかぐやに請ける際、彼女は気づいた。
飄々と汗一つかかずに(カレンは滝のように流していた)座っていたかぐやが聞いた。
「『怒り』——————ではないでしょうか?そもそも魔女と言う存在は魔女狩りと言う言葉から生まれたもので······」
「それは違うよカレンちゃん」
かぐやが汗で濡れた手を握る。すると太陽のような見た目の熱の球体が生まれる。
「え······?あれ?」
「ふふふ······。まあ驚きだろうね。君は『能力のコネクト』という言葉をしらない。今僕が行ったのは、カレンちゃんを起点に僕の能力を合成させる技をしたのさ」
今度はかぐやは手を離す。すると今度は熱の球体は溶け消える。
「カレンちゃん······君は知っておいた方がいい。能力というのはね······とある二人の神が与えた祝福なんだよ」
レオン·アリアスとステイシア·ハザァードの二神。この二神が唯一創り出したのは『地球』。本来ならばそれは二神の子供の揺りかごだった予定だったのだ。
「その子供の名前は······レオン·ハザァード」
「!!——————それって、初代キングの事じゃ······」
「そう、そしてレオンに与えられたのが『パーフェクト』——————唯一無二の特異的の能力だ。パーフェクトがこの世界に生まれたことで能力が分離し、不特定多数の人間にそれ以上の能力が付与され今のような能力者社会が出来たんだ」
かぐやはツンとカレンの眉間に指で突く。
「能力にはね、不幸というものはないんだよ。あるのはその能力で助けられなかった時か上手に使えなかったときの後悔さ。カレンちゃんの先祖——————アリア·メリアはその点で言えば後者さ」
だからこそ!と突いた指を立ててかぐやは言う。
「君のたった14年の人生の中で能力の『後悔』があっただろうか?いやないハズだ!——————なぜなら能力と言うのは強い思いで生まれるものだから」
シスターであったかつての魔女が子供達を助ける助ける為に動いた結果が、
ただの被害者であった少女が一人の英雄を追いかける為に努力した過程に、ずっと笑えなかった訳がない。
人生とは多種多様なものだ、際どい上り坂があれば急な下り坂がある。重要なのは——————
「今を生き、今と向き合う力を持つことだ」
「今と向き合う力······」
「ど〜せ過去を変えようと思っても変えれるのは過去の人間だけさ、そして過去の人間は今の時代を変える事は出来ない——————遠い遠い過去に産まれ、今まで生きている僕達にとっては今だけを生きていく君達は誰をとっても宝物さ。だからこそ考えさせ、疲れた時は助けを入れるようにしている」
「————————————っ!!」
私は思わずかぐやさんを抱きしめた。ほんのりと甘いクチナシの匂いが鼻腔をくすぐる。
「どうしたんだい!?突然抱きついて」
「甘えてるんです」
「あまっ······!甘えているだどぉ!!」
えっ、なになになに!?突然かぐやさん泣き出したんだけど!?
「よぉ〜しよしよしよし!!カレンちゃん今からかぐやおばあちゃんと言うのはどうだい!?」
「えっ······あ、かぐやおばあちゃん?」
「ふぅおおおおおおおお!!」
何!?最近テレビで見た芸能人見たいになってるんですけどぉ〜!!
「うふんうふん!!······あぁ〜すまないちょっと興奮しすぎた。忘れてくれ」
忘れられないよ!!アキヒトくん家行った時出会ったナオキさんが実は酔いつぶれていたなんて知った時ぐらい衝撃なんですけど!?
尚、アキヒト曰く「親父は酔うことはほとんどないんだけど、酔った時はテンションがおかしくなるんだよ。なんか昔、噺家目指していた時があったらしくてさ」とのこと。
「しかし、おばあちゃん······おばあちゃん······。なんと甘美な響きなんだろう。なあカレンちゃん!我が孫にも言わせてくれないかな!!」
「それは······人の事ですし、アキヒトくんの事だから何かないと言わないと思いますよ」
「もっとくだけて!!」
「ひっ······!!えっと、アキヒトくんの事だから何かないと言わないと思うよ?」
「ああ······君みたいな孫が欲しかったよ。なんせ歴代のキングはとことん頭がカタイ連中ばかりでさ」
「あはは······」
すると、オホンとかぐやさんは咳払いをして。
「脱線しすぎたね。そろそろ本題に移ろう。魔女の根源は『想像力』だ」
「想像力······イメージする力って事?」
「そう『能力』の4大元素って知ってるだろ?火·水·草·岩の事だが火は『知恵の源』、水は『生命の根源』、草は『意志の尊厳』、岩は『神話の形成』が能力の根源として形付けられているんだ。知ってたかい?」
知らなかった······。
私は口をパクパク動かして、ポーズを見せる。
かぐやさんはくすりと笑って。
「知らなかったみたいだね······。まあそれは相当歳を重ねてないと知らない情報だからしかた無いけどね」
「ちなみに歳は?」
「分からん!!」
そこまで言い切られると清々しいな······。
「君の能力は『想像力』——————つまりそこらじゅうに花を咲かせたかったならお花畑を広がらせる事だって出来るし、一面を火の海にすることだって出来る。後は君の魔力がなんとかしてくれるさ」
「······イメージする······」
私が手のひらで受け皿のようにすると、ボオッとロウソクのような火がうまれる。
【キラメラ】——————私の身体の精神の中にある小さな小さな種火。
「君のイメージには火がもっともリアルに出来るんだね。なにか火にまつわる経験があったのかい?」
「火······というか、森での出来事なんですけど」
私は産まれた森で死にかけた。その時に一人の、私と同じくらいの背丈をした英雄——————アキヒトくんと出会った。
あの時は確かに火が舞っていた。
「なるほどね。それが君と我が孫との出会いなのか······ふむ、ロマンチックなのかそうでないかは置いておいて、それが君の魔術の根源。ピュアで純粋な炎だ」
かぐやさんはつんつんと炎を突いて「熱っ」と言った。
「君はこれからどんどん伸びる。初代魔女と数年過ごした僕が言うんだ間違いない。——————頑張れ」
かぐやさんはニコッと笑った。まるで成長する孫にほほえみかける様に。
@@@@@
そう、全てイメージだ。
首が千切れ飛んだのは、かつてアキヒトくんとホラー映画観たときに知ったもの。
そして今からするのも全てイメージだ。
「【セブンウォーリアーズ】一人討ち取ったぞぉ!!」
ゼオは鎖を振り回しながら腕を掲げる。
だが眼前に広がるのは戦場ではなく暗闇。虚無だった。
「なっななななな、何がどうなってるんだぁああ!?」
『全ては私のイメージ通り』
「ヒィ!!だったがしかぁ〜し!!私の力にはイメージすらも——————」
『生きていた光跡さえも壊してあげる【壊浄すべきは貴様の剣】』
刺された過程はなく、結果のみが残される。
ゼオの全身が凍りきった時には十数本の剣が突き刺さっていた。
@@@@@
『【ネプチューン王のいる場】』
『左大臣でありますか!!——————こちら国境警備隊!!』
左大臣の手元にある亀電話から繋がっている。
「——————私は今国王様と共に広場の外れにいる!!【ノア】と姫や王子達についてわかる事は!?」
『詳細をお伝えする時間がありません!!王国中に通達を願います!!たった今、巨船【ノア】が動力を失い、再び真っ逆さまに魚人島へ落下を始めした!!』
「何だと!?今どこだ!!」
『【貯空庫】制御塔です!!』
「ならばお前達が国の危機を皆に伝えよ!!そこなら国中の『国営亀電話』と通信が出来るハズだ!!急げ!!」
『はい』
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『魚人島上海【貯空庫】より王国全土へ!!緊急避難命令発令!!巨船【ノア】が再び島へと落下中!!今すぐ島を離れていください!!』
国営亀電話から島全体から振りかかった現実は非常なものだった。
「見ろ!!恐れてた事が!!」
「急げ!!持ち物は諦めろ!!」
「シャボンが割れるぞ!!」
「島が潰れるぞ!!」
『外海へ避難して下さい!!』
その放送はもちろん戦場にいるカレン達の耳にも聴こえていて。
「ウソ!!さっきのまた来るの!?アキヒトくん大丈夫!?」
「テティス姫はどうなった······!?アキヒト······!!」
「またティーチが!?あのイカレ海賊!!」
「俺たちも逃げよう、やべえぞここは!!」
再びノイズが聴こえる。
『アキヒトさん!!こちら【貯空庫】。先程お会いした者です!!とんでもない状況は全て聞いておりました!!島へと落下する【ノア】も視界に入っております!!』
「何をやってる!!上の通信が国中に流れてしまってるじゃないか!!」
『アキヒト様【ノア】をどうすれば!?』
「テティス······!!アキヒト······!!」
『もうあなたに全てを託すしか!!』
「どういう状況なんだこの会話!!さっき姫様の声もしたぞ!!」
「アキヒトって連続誘拐犯だろう!?」
「人間の······!!」
『難しいことは今はいいからすぐやってくれ!!」
「マスターの声です!!」
『アキヒトさん!!魚人島を頼みます!!』
「なぜ国境警備隊が人間を頼りに!?」
「何とかしようとしてくれてるのか······!?」
「人間が!?ノアを!?」
そして今、現在に巻き戻る。
『おいアキヒト······』
「リュウギョウ王子!?」
『レオナルド·ディザスターの······正体が分かった······!!』
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アキヒトの手に鳴る亀電話にリュウギョウの掠れながらも、しっかりとした声が聞こえる。
『ディザスターの正体って!?なんだ!!」
そう、ディザスターの正体とは——————!!
「ディザスターは······!!環境が生んだバケモノだ!!」
『!!』
「【新解放軍】は怨念が作り上げたバケモノ達だ。先人達の怨みが忘れ去られる事を恐れ、人間達への怒りが冷めるひを恐れ······!!行き急ぎ!!己の聖戦が正しくある為、人間が良い者でない事を願っている!!血を欲するこいつらは魚人島の平穏すら望んではいない!!」
そう——————私があの時ディザスター聞いたのは。
『過去、お前の身にどれ程の事があった!?人間は一体お前に何をした!!』
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「なにも。おれ達は人間に裁きを与えるべく天に選ばれ······力を得た!!」
そうこいつらの恨みには『体験』と『意志』が欠如している——————、
「実体のない······空っぽの敵なんだ!!」




