EX.121 「【ノア】落下②」
『【ノア】魚人島頂上付近落下地点』
「全部守るだと!?ヒーロー!!ずいぶん大口を叩いたな!!それはもう手遅れだ!!」
「リュウの兄上······!!ゲホッ······。ティーチが今やられたと言うことは······」
「——————そうだ!!······ここじゃマズイ!ティーチの能力が魚人島の真上で切れては大変だ!!」
「テティス!コースを横にそれ······」
「【キリサメ】!!」
言を察したディザスターがすぐさま対処する。
「余計な事を吹き込むんじゃねェ!!ここで能力が切れりゃあいいと思うから、おれはティーチを仕留めたんじゃねえか!!」
「そうか!!ここにいたらまた船がみんなのいる魚人島に落ちちまう!!せっかくテティスがふんばって船を引きつけたのに!!テティスの兄さん!!あいつのところに行こう!!」
「ああ!!」
「いや!行かせねぇ!!おめぇの仲間達にゃ確実に死んで貰うアキヒトォ!」
「クソッ······!——————ん?」
アキヒトが毒づいたその先は、アキヒト達の現状を悟ったのかテティスが直線のコースを逸れ、横に動こうとしていた。
「生意気な、気づきやがったか!!」
「待て!!あいつのとこにゃ行かせねぇ!!」
アキヒトはディザスターの所に手を伸ばし、レインボーがそれに応じて【腕】をさらに伸ばす。
しかし深海。水圧は余程のもので波に揺らめくオーラがぞくぞくと潰れていく。
だがそれでも【腕】は仕事を成し、一時的だが引き止める事に成功した。
「放せ!!落下店がずれちまったら意味がねぇ!!ティーチめ、さっさとくたばれ!!虫の息でも意識がある限り船が落ちねぇ!!」
「いいぞ行けテティス!!」
その希望と願望とテティスの祈りが通じたのか、遂にノアが横に動き出した。
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『【ノア】船内』
ティーチが船頭から落下し、船内はその際の瓦礫が山のように連なっていた。
その山のてっぺんに怒りだけで意識を保とうとしているティーチの影。
「ハァ······ハァ······。チギショウディザスターの野郎······!!絶対許さん。『左手』のマトはお前だ覚えてろ······!!お前が死ぬまで身も心も追い込んで必ずコロ······ん!?」
必ず殺すと言い終える前。テティスが船動を変え横に動きだす。もちろんその影響は船内にも及ぼし、船の力に負けたティーチは岩の角に頭をぶつけ『意識を落とした』。
直後、『能力』の効力が消滅した。
本来テティスの命がなくなるまで、もしくは途中で勢いが殺されるまで動き続ける『ターゲット』の能力が使用者の意識が途絶えた事で向かう先は一つのみ——————下だ。
テティスが奮闘したとはいえ、未だ船の真下には魚人島とそれを包むシャボンのみ。
「シャハハハハハ!!勝者はおれだぁ!!」
「魚人島が危ない······!!」
「やっとくたばったか!!ティーチの能力が切れた!!【ノア】は一直線に『魚人島』に衝突する!!死ねセブンウォーリアーズ!!報復の邪魔をする者たち!!」
いくら何百万人も住める程の面積を持つ魚人島と言えども、ノアの落下には耐えられない。
——————と言うのも外面も覆うシャボンは簡単な損傷では破裂しないが多方面を一度に、もしくは巨大な穴があいた時に破裂してしまう。
破裂してしまった瞬間に訪れるのは轟々と奔流する深度2000メートルの水流。たとえその水圧にも耐えられる魚人族とはいえ、ディザスターの前で絶滅させられるだろう。
魚人島のシャボンが破裂した瞬間には、ここにいる魚人族も人族も皆同じ末路を辿る。
「激突すれば全て終わりだ王国も······。数百年守られてきたという【ノア】を背負う『使命』も!!」
ウバボシの脳裏に父の言葉がよぎる。
『いいか息子達。あの方舟【ノア】は歴史の残骸などではないんじゃもん!!数百年もの遥か昔に偉大なる人物と交わした『約束』をあの船は海底にて成し遂げ続けている。今となってはその造船技術すらも謎。約束の日まで【ノア】を傷つけてはならん!!』
『分かりました父上!!我々が行って動いた原因をつきとめ必ず対処を!!』
それがどうしたことか······。今や魚人島の窮地になりうる脅威になってしまった······!!
「シャハハハハハ!!【ノア】を止めてみろ!!全部守ると言ったのは虚勢か!?アキヒトォ!!」
「止めてやる!!」
策は一つ——————。
「島に着く前にこの船を粉々にしてやる!!」
「やめろアキヒト!!万が一それが可能でも【ノア】は、長い歴史と未来を背負った船だと言ったハズだぞ!!」
「じゃあ他に助ける方法があるのか!?時間はないぞ······俺にはそれしか思いつかねぇ!!」
「ティーチはまだ生きているかもしれない!!意識を戻せば——————船のコースを変えてどちらも救える可能性が!!」
「そんな事言って死んでたらどうするんだよ!!」
「シャハハハハハ仲間割れか!?」
「お待ちください【ノア】!!島にはわたくしの大切な人達が!!ティーチ様っ!!生きておいでからどうかわたくしを狙って下さいませ!!魚人島たまけはお見逃し下さい!!」
「テティス!!船に近づくなァ!!」
「【魚人空手】』
「テティス!!」
ディザスターは水を操り、叩いたその表面を振動に変えて放つ。
「【海太鼓】!!」
だが瞬時、ディザスターの脅威に気づいたマンボシが身を挺してテティスを守る。
テティスを守る者はディザスターとの間にいない。殴り捨てたマンボシを越えたその時——————アキヒトがディザスターの身につけていた狗の毛皮を握りしめてディザスターに辿り着く。
近距離決戦。
アキヒトは左手で、ディザスターはその牙でアキヒトの右肩に噛み付く。
だがその痛みに怯まずアキヒトはディザスターの肋骨を壊しにかかった。
足場が悪い中、上手く腰を入れなれなかったが【ノア】にぶつける事が出来た。
アキヒトの右肩にはトラバサミのようなディザスターの歯が深く突き刺さったままだった。
アキヒトはそれを乱暴に引き抜き、傷を治すのも放っておいてディザスターにトドメをさしに行く。
向かうのは落下する【ノア】。
「······落下する船で戦おうってんだな······。——————だがお前が欲しいのは······甲板の、空気だろう」
歯の抜けた歯茎から再び歯を生えかえらせる。
そしてその歯で甲板に張り巡らせたシャボンを切り裂く。
「あ!!」
「やはりそう出たか!!」
「シャボンはでけェ切り口にゃ耐えられねぇ······シャハハハハハ······」
その切り口から大きく開き、そこからゴボッとシャボンが割れて【ノア】から剥がれていった。
「くっそ!!空気がなくなった!!」
「ハハ······たったこれしきで何もできなくなる人間が!!『魚人』よりも上等なわけがねぇと知れ!!【ノア】を止めるどころかお前はおれを倒す事もできねぇ!!」
「ディザスター······!!邪魔立てを!!島にどれ程の命があると思っている!!——————一体何なんだ貴様ァ!!」
ウバボシは水を掴み、それを大砲のような威力で放った。
「【ウルトラマリン】!!」
魚人空手は【剛術】の極でその力は細かい水を操り放つ技が多く。魚人柔術はその名の通り【柔術】の極で大きな水を形成させて放つ技が多い。
ネプチューン王を始め、ネプチューン3兄弟は基本的に後者を際立たて、新たな技を使うようになった。
ひと一人貫く位の威力を持った砲水はディザスターに避けられる。
「なぜ!!こんな事ができるんだディザスター!!」
渾身の力を込めた豪腕の一撃も軽く避けられてディザスターの刃に落とされる。
「ウバボシお兄様!!」
だがウバボシの力はそれでも緩まなかった。
「············!!お前は何なんだ······」
ウバボシはディザスターを無理矢理引き付ける。
「人間達への『報復を』をと魚人族の怒りを背負い······!!その矛先を『魚人島』に向け······!!支配するつもりだった『魚人島』を今消し去ろうとしている!!——————共に『魚人街』で育った仲間達を見捨てて!!誰よりも強く人間を恨み抜き!!そうまでして事を成してお前に一体何が残る!!」
傷口が未だに疼く。それでもウバボシはそれを聞くしかなかった。
動機を——————。
「過去、お前の身にどれ程の事があった!?人間は一体お前に何をした!!」
ディザスターの——————
その口から——————
出たものは——————
「 」
「!?」
衝撃による硬直。そのスキにさらにディザスターはウバボシの体を切り裂いた。
「ウバボシお兄様ぁ〜〜!」
テティスの叫びが悲鳴に変わった時、アナウンスが聞こえた。
『アキヒトさん!!こちら【貯空庫】。先程お会いした者です!!とんでもない状況は全て聞いておりました!!島へと落下する【ノア】も視界に入っております!!準備が整いました!」
「···············」
@@@@@
『甲板に用か!?先に行くぞ』
『ディザスター!!』
その後の話だ。
「おいテティスのお兄さん!!急いで追ってくれ!!」
「ちょっと待て。ここは海中だが頼みの綱は人間のお前だけだ」
ディザスターに向かう前にウバボシとアキヒトが向かったのは、魚人島の正面入口だった。
そこにはネプチューン軍の兵士が数名戦線に向かおうとしていた中だった。
「お前達。今すぐ【貯空庫】へ向かってくれ!!大量の空気が必要になるかもしれない!!いつでもこちらに島の空調用の巨大な空気泡を供給できる様準備を!!」
そして彼らにウバボシが命令した後、ようやくディザスターのもとへと向かっていった。
「でも大丈夫だよ。甲板に空気があるんだろ!?そこであいつをぶっ飛ばせば!!」
「ティーチはともかくディザスターの奴がお前に都合のいい戦場を残してくれると思うか!?『亀電話』だ······!!お前も持っていろ」
そして受け取ったのは亀の甲羅に黒電話のようなダイヤルをつけた電話だった。
「準備は周到にだ!!急ぐぞ!!」
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「アキヒト様!!【ノア】をどうすれば!?お兄様方がみんな······!!」
今テティスは水中の機動力の為にアキヒトに抱きついて泳いでいる。空は飛べてもこの深海では瞬く間に潰れてしまう。その為にシャボンを身につけるがシャボンには『浮力』がない。その為にテティスが必死にヒレを動かす。
アキヒトはポケットから取り出した亀電話を取り出す。
「もしもし!空気ってどうやってくれるんだ!?」
『【貯空庫】にある全ての空気を使いシャボンで飛ばせば【ノア】を包み込む事が可能です!!シャボンは浮力を無効化しますので取り囲んだ空気が【ノア】を浮かす事はありません!!つまり落下が止まるわけではない!!心苦しいですがもうあなたに全てを託すしか!!』
「難しい事は今はいいからすぐやってくれ!!空気さえありゃ何とかなる!!」
『了解しました!!アキヒトさん!!魚人島を頼みます!!』
バルブからプクーと新たなシャボンが膨らみだす。
「アキヒトォ、テティス······!!ノアに付き添って何ができるんだ!?人間と人魚姫ごときがよォォォ!!」
「テティス!一旦離してくれ!!」
「はい!!」
ディザスターの【キリサメ】を『ソード』の能力て生成したロングソードで受け止め、へし折り殴り飛ばす。
「ぐぅ······!!」
意識が朦朧とする。だがディザスターは薬を使い再び雄叫びと共に覚醒した。
「何だあのしぶとさ!!」
「諦めろ人間!!——————おい人間!!おれはお前達を見るだけでムシズが走る!!たとえ命を削ってもらどれ程こ犠牲を払っても!!おれは必ずお前ら人間への復讐を果たす!!」
鬼形とした表情にテティスが慄く。
「おいアキヒト······聞こえるか?』
亀電話から受け取ったのはウバボシの声。
そこから聞こえたのは——————
「レオナルド·ディザスターの······正体がわかった······!!」




