EX.117 「始まりの英雄奇譚」
「これは幸運だ!!シャハハハハハ!!危惧していた二人が一気に掴まるとは!!こんなムシのいい話があっていいのか!?」
声を張り上げて笑うディザスター。その眼前には鎖で拘束された二人の姿。
「ほ······本当に申し訳ごさいません!わたくしが気をつけていれば——————リュウギョウ様まで······!」
「——————もう済んだ事じゃ······!ええです」
「やはり来ていたかリュウギョウ······。アンタも尖ってた時代は好きだったがな······」
「なんじゃいディザスター······!さっきとまるで様子が違うな」
そう言いリュウギョウは首をぐわりと持ち上げ睨む。彼が先程まで知っていたディザスターとは違く、体躯も髪の色も変わっていた。
「リュウギョウ親分だ!【アルゴノォト】が解散された後この島を出たハズなのに······!!」
「テティス姫はセブンウォーリアーズに誘拐されたと聞いていたが、リュウギョウ親分が助けてくれたのか!?」
「シャハハハハハ······サァこれで必要な顔は出揃った!!思ったより容易い作業だったな······。あとはどう動くのか分からねぇのが【セブンウォーリアーズ】。今頃龍宮城の入口でも探して途方にくれてる頃だろう。仲間の死に怒り······ここへ現れても迎撃の準備は万端だ」
そう言うとディザスターは指を弾いた。
すると【マンハッタン大広場】の四方八方にある門から魚人たちが現れる。
「武器を使える魚人族——————7万人!!」
肩や腰に銃や刀を身に着けた魚人がニヤニヤと笑う。
「ここ一ヶ月で海中で捕らえた人間の奴隷——————3万人!!」
次に出てきたのは首と手に拘束具を付けられた人間が——————そのどれもが傷だらけだった。
「閉ざされた【魚人街】から移住してきた!締めて10万人の無法者共だ!!」
「ウオオオオオオオオオオオオ!!」
「——————戦えねぇ女子供もわずかに広場の外にいるが······それは落ち着いてからでいいだろう······。人間の奴隷共はどんどん増えていく——————だがまずは10万人!!お前ら種族の恥晒し共の家を開け渡して貰う。死ぬが逃げ出すか!今から腹を決めておけ!!」
「公共の広場でバカ騒ぎして······品のないコ達ね!お調子にお乗りでないよレオナルド·ディザスター!!」
「懐かしい顔だ······てめえ、何の用だ。シスター·シャロー!!」
マンハッタン大広場の高台に陣取ってる魚人島の住民の中に、泡タバコをふいた占い師の女性シスター·シャローが座っていた。
「粋がってるお前に······一言云わせて貰いたくってねぇ!!」
「······シスター·シャロー······!!」
「——————『ある男が······魚人島を滅ぼす』と出たんだよ。私の占いでね」
「実質滅ぼす事になるかもな——————そこにおれが映ってたのか!?」
シスター·シャローは一言「いいえ」と言った。
「この島を滅ぼすと出た男は——————『セブン·ウォーリアーズ』リーダー。【ミヤタアキヒト】だよ······!!」
「!?······何がいいてぇんだ!!」
ディザスターは激怒した。
シスター·シャローはテティスの占いの的中率とは1、2を競うもので『当たる』と云われたら当たり、『外れる』と云われたら外れる。いわば死刑宣告と同じものだからだ。
「わかることはこれだけ······!あんた達じゃあなかった······!!
「そ······そうか!シスターの占いは外れない!あの話を裏返せば······最終的にディザスターがこの島に君臨する未来はないって事だ!!」
一人の魚人がその言葉に希望を見出したその矢先。水滴が【飛んだ】。
「うっ!!」
その水滴は一直線に、ライフル弾のようにシスター·シャローの体を貫通した。
「あう!!」
「シスター·シャロー!!」
力が抜け、シャボン玉から転げ落ちるシスターに周りの魚人は慌てて手助ける。
「バカバカしい······!!」
ディザスターの手元には、水滴がこぼれ落ちていた。
「何への当てつけだシャロー!腹いせか!?おれはお前の兄とは違う!!そりゃあガキの頃は······お前の兄ライダーは【魚人街】中の憧れだった!!」
苦悶に歪むシスターを睨みディザスターは吠える。
「——————だがおれ達は『力』を手に入れ!実際今じゃ【ライダー一味】の名は結束の為の空っぽのシンボルでしかねぇんだよ!!見ろこの規模を!見てろこの実力を!!おれの作戦は10年前から既に始動してる!!教えてやろうか······!!」
「このリュウグウ王国の······お前らが愛してやまねぇ王妃!オトヒメを殺したのはおれだ!!」
「!!!?」
「······何じゃと!?」
「マジですか船長ぉ〜〜!!」
衝撃の告白。その事実は彼が指揮する『新解放軍』の面々も知らなかったらしかった。
「そんな······!じゃああの時の人間は······!?」
「フフフ······!」
「シャッシャッ!気づけねぇのがバカなのさ!!」
「あの日······人間の海賊に金を渡して、狙撃で『署名箱』に火をつけさせた······。そのスキにおれがオトヒメを狙い撃ち!!そして雇った人間を撃ち殺し!犯人に仕立て上げた!!」
「おのれディザスター貴様ァ!!」
「父上」
梁付けられてもネプチューンの動きは止められずディザスターに襲いかかる。しかし、ディザスターの【撃水】で反撃を喰らってしまった。
「邪魔だったんだよ!!——————なァテティス!!人間の復讐を『悪』とし······!人間と仲良くしようと島中に触れ回り!それを実現しかけたあの女が目障りだった!!」
「ヤメロォ姫に向かって!!」
「ムゴすぎる!!」
「お前の母親は死んで当然の女だった!!だから殺したのさ!犯人はおれなんだよ!!」
「············!!知ってました」
「テティス!」
「何じゃと!!?」
テティスは言った。目の前で吠える化物の罪を。あの日の惨状の現実を。
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時同じくして魚人街【ノア】——————。
「ちょちょちょちょい!ちょいとぉ〜〜!!ティーチ船長〜〜!!」
ズズズと動くノアの船を前にティーチの部下達は恐るべき物を見たような目をしていた。
事実【ノア】は廃船。その上海底の岩に挟まれて動かないハズだったのだ。
「こ、こ、これは一体どうなってるんですかァ〜〜!?」
「見りゃあわかるだろ!?——————大昔······魚人島民が総出で造ったという謎の巨船【ノア】!!こいつをおれは『右手』ではじいた!つまり!!この【ノア】をテティスに向けてぇ!おれぁ投げたんだよぉ〜〜!!」
ノアは魚人街を踏みつぶしながら前へと動き出す。
「【ノア】は魚人島の半分のデカさを誇る!!もう逃げ場はねぇ止めようもねぇ!!島ごとくたばれ、さらば愛しのしらほしぃ!!さらば魚人島ぉ〜〜!!」
徐々に動いていく【ノア】を目にティーチは高笑う。
@@@@@
「——————おれがお前の母を殺したと······知ってたとはどういうわけだテティスゥ······!!」
テティスは涙をこらえながら。
「——————事件から数年後······アルガがこっそり教えてくれました······!」
「!!?」
「——————この子は元々ネプチューン軍のペット。あの日全てをみていたのです······!!」
「············!アルガ······」
ディザスターがテティスの横に転がるアルガに睨みを利かすが、アルガもそれに対抗して威嚇した。
「テティス姫······!ではなぜそれをわしらに!?」
「——————言えば!誰かがディザスター様をお恨みになると思いましたので······!それではお母様が悲しまれます······!!」
「······え············」
「お母様と交わした······最期のお約束なのです······!犯人様がどちらのどなたでも、決して憎んではいけないと······!!」
王子達は思い出した。あの時の母の言葉を、
『犯人がどこの誰であれ、私の為に怒りや憎しみに取り込まれないで······』
「それで······10年前の······!母上の言いつけを守って!!お前······この事実を······!!隠し絵の塔で一人······!!ずっと抱え込んでいたのか······!!」
親を殺した者を憎まんじゃと!?
たとえ死にゆく母の願いだとて······それを実際に聞き受けるのは不可能に等しい······。
なんと素直で健気な娘じゃ······!!一体誰にマネができようか!!
「シャハハハハハ!!」
「笑うな貴様ァ!!」
「アルガァ······!!お前よく、このマヌケ女を選んで話をしてくれた!!——————他の誰かかはおれ達の計画は潰れてた。シャハハハハハ!!いいかテティス!!この世じゃそれを『マヌケ』と呼ぶんだ!!お前がおれを憎まなかった事で、これからこの王国は滅びる!!お前のせいで父も兄も!!お前も国民も全員が死ぬんだよテティス!!」
「違う!耳を貸すな姫様!!あんたのやった事は間違いじゃない!!」
「シャハハハハハ!!間違い以外の何だ!?」
ディザスターは水の滴った右手を振り抜いた。
「【矢振鮫】!!」
乱雑に放たれる水滴がネプチューンや王子達の身体を貫く。
「国王!!王子ぃ!!」
「シャハハハハハ!!」
水滴の勢いが落ちた頃、ネプチューン王は力無く崩れていった。
「ギャハハハハ!!みっともねぇ姿!!」
「お父様あ〜〜!!お兄様あ〜〜!!」
「めちゃめちゃだ······!!大騎士ネプチューンが本当に殺されちまう!!」
「戦士はもういない······!!敵は10万の無法者!!」
「シスター·シャロー!!4色髪の人間は······いつこの島を壊しに来るの!?」
「······え?」
絶望が蔓延する中、シスターの近くにいた子供達がそう聞いた。
「······それはわからないよ······。私の占いは、未来が見えるだけさ······。明日かも、一年先かも······」
「おれ······今がいいな!!」
「!?」
「今すぐここで大暴れしてくれたら、おれ達も困るけど!!あいつらも困るよね!!」
「私も今がいい!!王様が殺されちゃうなんてやだーー!!」
「オレもー」「ぼくも!!」と子供達の言葉に賛同していく。
「お前たちの言う通りだ······!!」
「私もそれがいい······!!」
「おい【英雄】アキヒト〜〜!!いつかこの島を滅ぼす気なら!!今来い!!」
「今すぐここで暴れろ〜〜!!」
「島のどこかにいるんならすぐにここへ来ぉ〜〜い!!」
「アキヒト〜〜!!」
「アキヒト!!」
「アキヒトォ〜〜!!」
子供達の親が起点に、周りの魚人達も一人の英雄を呼びつける。
「呆れたぜ······。ワラにもすがるとはまさにこの事······。第一、シャローの占いは······今回ばかりはウソだ」
「虚しい叫びだな······」
「血迷ったバカ共を現実に引き戻してやろう!!よく見ておけ。先代国王ネプチューンの頭が飛び散る様を!!」
無念······!!
「恥知らずのリュウグウ王国は······!!終わりだぁ!!」
「アキヒト様あ!!お父様をお守りください!!」
——————そして英雄はその声に応える者だ。
瞬時、アルガの腹から出てきた1人の影が、目にも止まらぬスピードで飛びつき、ディザスターのそのスキだらけの胸元に全力で蹴りをいれた。
鞭のようにしなやかな、腰から入った蹴りでディザスターはマンハッタン大広場高き壁を粉々になるまで蹴り飛ばした。
「えええええええ〜〜〜!?」
「あれは——————!!」
「アキヒトだぁ〜〜〜〜〜!!」
「本当に現れたァ〜〜〜!!」
「ネプチューン王を助けてくれた!!」
「今確かにテティス姫があいつに助けを求めた!!」
「サメの口の中から!?」
「シャー!!ずっといたのか!?なぜ!?」
「······おぬし············」
「アキヒト様あ!!」
「もう出てしもうたか——————じゃが、今のは致し方なし!!」
アキヒトは、大きく息を吸って——————。
「急げお前達ぃ〜〜!!」
仲間を呼んだ。
「ダッピ!!何だ!?誰に話しかけてるッピ!!」
『大丈夫!始めから急いでたから』
すぅーと蜃気楼が解けていくように、コツコツと姿が見えてくる。
「アキヒトくんが皆の声に黙って待つなんて、そんな悲劇あるわけないもん!」
魔術の基礎中の基礎。『火』と『水』の合同術式で編み出された空間の光の屈折を自発的に行う技。『ミラージュ』を解除した。
「うわぁっ!!女が急に出てきたッピ!!」
「これでいい?リュウギョウさん!『貴族の書状』!——————あと錠のカギはユ〜ちゃんに」
「上出来じゃようやった!!」
「あれぇ!?書状!!しまった、いつの間に石に変わってる!!」
「わー!!錠の鍵もない!!」
その間、同じくカレンの魔術で身を隠していた吉田が王子達の鎖の鍵を外す。
「おお······!!錠が······!!」
「空をみろ、アレは何だ!?クジラと船!!」
「【タクティカルAAM】!!【ロケットランチャー】!!」
重装備を身に着けた岡田が両肩に乗せた爆撃器で反対の壁を木っ端微塵に破壊した。
「行け、今だクジラ!!」
爆風で荒くれ共が吹き飛ばされる中、ホエールは見事王と王子達を救い出す事に成功した。
「待てドゴォン!!王族を返せバガァン!!」
「ハァ······何が起きた······」
「どうやら······リュウギョウがセブン·ウォーリアーズ達と一計を案じていた様です······!!」
うらしまが造った船は遥か上空からの着地でもビクともせずに辿り着いた。
「【セブン·ウォーリアーズ】が全員来た!!」
「おいアキヒト〜〜!!」
「ん?」
「お前らは本当にこの島を滅ぼす気なのか!!?」
「なぜ龍宮城を占拠した!?」
「人魚達を誘拐したのはお前たちなのか!?」
「答えてくれ!!お前達は魚人島の敵なのか!?味方なのか!?」
「敵か······味方か?······そんな事」
アキヒトは全員が勢揃いした事を後ろ目に確認し、
「お前達が!考えろ!!」




