EX.116 「踏みにじられた希望」
「右大臣······!上空をご覧を······!!」
魚人島はるか上空。
命からがら逃げ切った彼らは、踏み絵を止める事もできぬまま、地上に降り立った。
一人の兵士が右大臣にそう言うと、右大臣は魚獣が優雅に泳ぐ姿に気づく。
「あれは······ディザスターか!?」
魚獣に乗るのはディザスターを始めに、魚人街の者達、ネプチューン王だった。
「国王様······!」
国王の名を語り······国王一人お守りできんのか、何の為の軍隊······!!
左大臣が唇を噛み怒りに燃え上がる中、魚獣に乗っていた魚人がちょうどこの街で踏み絵を行っていたリッヒに叫ぶ。
「イカロスさん!王の処刑はもう2時間後だ!!」
「一緒にマッハンタン大広場へ!!」
「ディザスター船長はどうしたっヒ!!なぜ顔も出さねぇんだっヒ!!ムッヒ!!」
「それが······!!」
「それは命を削って命を得る薬······!始めからそんな物に頼るからじゃもん」
ネプチューンは一人のたうち回る男に語るが、ディザスターは黙れと憤怒の声を上げた。
「ディザスター船長······今日人間の剣士から受けた傷が痛むってんで······それをごまかす為に次から次へとE·Aを飲んでて······そしたら······!!いや、止めたんだけど俺たちは——————」
「うわあああああああああああ!」
「ディザスター船長!!」
全身から汗を噴き出し、苦痛の声を張り上げるディザスターに部下達が声をかける。
「息が······苦しい······!!体が······破裂しそうだァァァァアアア!!」
「ムッヒ!まさか副作用かっヒ!?ディザスター船長!!やっぱりヤベェ薬だっヒ」
「ぐぅわアアアアアアアアアアアア!!」
副作用を危惧していたリッヒも、その他地上に下りていた(矛盾)彼らもディザスターの叫び声に細胞一つ一つ怯えた。
(グォォォオオオオオオオ!!)
「おいどうしたっ海熊!!」
「コイツ······様子が変だぞ、ここらの海獣達はみんなディザスター船長の支配下にゃああるが······」
「ここまで脅えた姿は見たことがねぇ!!」
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『魚人島【ギョバリーヒルズ】』
「結局······!!」
皆が唖然した。希望の一欠片も残っていなかった光景の中で、一人声をだした。事細かく話すために。
「海獣達のだけの力で······!!ネプチューン軍が!!やられちまったぁ!!」
「右大臣殿!左大臣殿!!」
光景は血を流し、白目を剥いて倒れている。海獣に蹂躙された街は『悲惨』としか言いようがなかった。
左大臣が呻く。
「——————もう少し······!もう少しだった······!!今年の世界均衡で!······あなたの想いが実を結ぶはずでした······ オトヒメ王妃!!それが突如こんな事に······。とうかご加護を、このままでは······一時間後······国王様が殺されてしまいます······!!王にご加護を!!」
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『魚人島【マンハッタン大広場】』
惨事はここにも一つ。
「兵士たち······!!」
地上の獣。そして海の獣とミックスされた獣を海獣と言う。
その海獣のポテンシャルはその二つの生物の才能を重ね合わせより強固の生物に進化してきた。
しかしネプチューン王の下、鍛えられ続けた兵士達もやわくは無いのだが、閉ざされた門の中よじ登り王を求めた住民達の期待を木っ端微塵に踏みにじられた。
「ギャハハハハハ!!国を守ろうって兵士達が何てザマだ!!」
魚人街の魚人達が腹を抱えて、屑のように汚れた兵士達を見て笑う中、一人の兵士がヨロヨロと立ち上がり懐からダイナマイトを取り出す。
「あそこの兵士、何かする気だぞ······」
「キャッキャッどこだ!!」
「ダイナマイトで自爆して誰かを道づれきしようってんだドンガ!」
「ムッヒ!そんな事されたらスルメになっちまうッヒ!!」
「······王子達がここに来られる前に······幹部の一人も消せれば上出来!!」
「【撃水】」
ディザスターの掌から零れた一粒の雫が、彼の手によって放たれその水滴が銃弾のように鋭く、素早く飛んでいきダイナマイト着火地点の根本から兵士を貫いていく。
そしてそれはマンハッタン大広場のサンゴ壁を貫き、ギョバリーヒルズ、人魚の入り江を抜けてようやくスピードを落とし、魚人島の波に変わらぬ水滴のように落ちる。
「【撃水】って······打撃程度の技じゃなかったか······!!」
「さっきまでE·Aの飲みすぎで死ぬほどのたうち回ってたのにっヒ!!」
「頭真っ白、体格も変わっちまって······。気分はどうだ?船長」
「············最高だ」
すると、ガシャンと音を響かせて鉄で出来た門を壊してネプチューン3兄弟が現れ、兵士達が倒れ、ネプチューンがはりつけになって捕まっている光景を目にする。
「ウバボシ!!リュウボシ!!マンボシ!!気をつけるんじゃもん!!海獣も魚人も皆薬を······!!」
「······何かなければネプチューン軍が容易くやられるハズはなソミ!!しばしお待ちを父上······!!」
3人が武器を船から引き抜くと、海獣達が皆牙を剥いて襲いかかった。
「なぜわからないエドワード·ディザスター!!お前たちはこの島の誰よりも弱い!!」
「!!」
「島の民たちは人間に虐げられた永い差別の歴史に目を閉じて、人間に殺された『英雄』と『王妃』の死を時間の河に受け流し······!未来を少し変えようと歯をくいしばり!その署名に名を連ねた!!」
「王子······!!」
「この強く優しい決意がお前たちにはなぜわからない!!【光陰流水槍】!!」
「【七珍里宝】!!」
「【龍宮楼門】!!」
3人が技巧みに己の武器を振り裂き、自らに襲いかかる海獣を皆倒していく。
「恨みのままに復讐するだけの愚かなお前たちには王の首も!!国民たちの居場所も!!このリュウグウ王国も!!何一つ奪わせやしない!!」
「お前たちを討ちまかして!おいら達は人間を愛する未来を選ぶ!!」
「お前たちが勝てば!その後数百年魚人族と人間が歩み寄るチャンスは来ないだろう!!」
「か······海獣達がやられたァ〜〜!!」
「つ······!強いっ!!」
「さすがはリュウグウ王国3強!!」
波倒れる海獣達を前に、未だ玉座に冷たく座るディザスターは言った。
「——————好きに言ってろ。だが結局この国は······勝者のもんだろ······!?」
彼の言葉を合図に周りの魚人達がE·Aを咥える。
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「急ぐんじゃアルガ!!」
魚人島【人魚の入り江】の上空。巨大鮫のアルガに乗ってテティスとリュウギョウが【マンハッタン大広場】に向かう。
「どうかご無事で······!!」
「大丈夫!なんとかなる!!」
二人は前へと進む中、祈るしかなかった。
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「王子達が【新解放軍】と大広場で戦ってるそうだ······!!」
「マンハッタン大広場へ行こう!!」
「この戦いに······魚人島の命運がかかってる。王子達が負けるような事があったら——————この国はディザスターの王国になっちまうよ!!」
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『魚人島【マンハッタン大広場】』
「王子達!!」
広場の外周が埋め尽くす程の人が集まり、王子達の名前を叫んでいた。
「ずいぶんギャラリーが増えたな」
「シャッシャッ!人が死ぬとこなんてそう見る機会ねぇからな!!」
「ジャハハハ!いい眺めじゃねェか!!」
「何をしたんだあの幹部たち!!」
「王子達が圧倒的に勝っていたのに······!あいつらが何か飲んでら一気に形勢逆転しちまった!!」
ディザスターを始め彼らの前には、斜め十字の磔に括りつけられたネプチューン王と王子達の姿。
「ぐ······何えデタラメなパワー······!!」
「申し訳ありません······父上······!!」
「言うな······あんなもの、偽りの力じゃもん」
「しかし!それで国を奪われは······!!」
磔にされた四人の姿を見て、周りのディザスターの部下達がはしゃぐ。
「死刑にしましょうディザスター船長!!」
「火炙りだ!!」
「いや串刺しだァ!!」
「プライドのねぇ王族にムゴイ死を!!」
「ギャラリーに見せつけてやれ〜〜〜!!」
「黙れ······」
己が持つオーラと先程よりも鋭くなった人相で人睨みをして黙らせた。
「ティーチの部下からまだテティスの死亡報告が入ってねぇ······。アレを誘き出さなきゃ意味がねぇ」
「妹には手を出すなディザスター!!あいつは戦士じゃない、お前の何を脅かす!!」
「マンボシ王子······。おれが何も知らねぇとでも思ってるのか。むしろ最も消したいのがあの【伝説の人魚】だ!!」
「ディザスター船長〜〜〜〜!!」
ディザスターの部下の声と共に上空から落ちてきたのは——————。
「テティス姫と!リュウギョウが罠にかかりましたぁ!!」
「テティス!!」
「······お父様、お兄様達······!!」




