EX.113 「大掃除」
『魚人島【おとぎ話の町】』
「よし······次······」
魚人街の者達による合図に並んで、魚人島に住む者達に踏まれるそれは、踏む者によって心を深く締め付ける物だった。
オトヒメ様の写真。
もう数え切れないほどの国民達に踏まれて、黒く、しわがれたそれはあの江戸時代、キリシタンを取り締まる際行われたものとそっくりだった。
(踏めねば命に関わる······背に腹はかえられん!オトヒメ王妃も許して下さる······!!)
写真を踏み、項垂れ泣く彼に小さく伝えたが小刻みに震える彼は失意に震えているのだろう。
「シッシッ!つまらねぇ。意外と皆踏みやがる······。オトヒメの威厳ってえのも大したことねぇな!!シッシッ!!」
ニドルがそう笑うと、後ろの群れの中から一人、旗を持った男が一人彼に言った。
「おい、ディザスター船長の放送が始まったぞ!!」
巨大なモニターに映された人物はレオナルド·ディザスター本人。その姿が町の至るところで流れていた。
『魚人島リュウグウ国民に——————伝えたいことがある』
「あいつが首謀者か······!」
「オトヒメ様の暗殺犯を撃った男じゃないか······!」
「元ネプチューン軍の······!」
『——————この国は一度······崩壊する!!——————そして生まれ変わる······!新しい王はおれだ!!』
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『サンゴヶ丘』
言葉と言う名の爆弾が落とされた魚人島は荒れていた。
「王位を奪うつもりか!!」
「この男、どこから放送してるんだ!?」
「国王はどうなった······!?」
「セブン·ウォーリアーズが龍宮城を占拠したって話はどうなった!?」
「この国はもうなってんだ!?」
『——————人間との『友好』を望む者はこの国から消えろ!!』
「「!!」」
『——————直に【魚人街】から新しい住民達が、ここへ移住してくる······!!共に人間達を嫌い······共にこの島の変改を望んでいる』
「えぇ!?移住って······」
「······あ、あの無法者達が全員この島に暮らすってのか!?」
『お前たちは見たはずだ、大好きなオトヒメ王妃の死を!!——————人間を信じ、笑顔で歩み寄っても、人間はまたお前たちを裏切るだろう!!何故それが分からねえ!!』
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『お前達はネプチューン一族に唆され、死へと続く道を歩かされているだけだ!!目を覚ませ!!』
「······そんな······」
海の森で涙を流し、言葉を発したのはオトヒメの義娘、ネプチューン一族であるテティスだった。
『これを見ろ······!!』
そこに表示されたのは無数の鎖で包まれたネプチューン王の姿。
「お父様!!」
その衝撃はかなりの物で、「国王様っ!!」と呼ぶ声があちらこちら、島中に響いていた。
ここで一人、申し訳なさそうにカレンが——————
「あの王様が捕まっている原因は······私達にあるっていうか······ユウスケにあるっていうか······」
「何をしてきたんじゃお前達っ!!」
「で、でも親分さん!勘違いでカレンちゃん達を襲ったのはネプチューン軍の人達で······!!」
リアさんがそう保護するが、全容を語ろうとしないカレンに、あっ本気でやべぇ事して来たんだな、と言う事だけ分かった。
『旧リュウグウ王国との決別の時だ——————。3時間後マンハッタン大広場にて、この無能な王の首を切り落とす!!』
それは王の『処刑宣言』。さらには背後の大きな籠を持ち運んでいた。その籠には山盛りの紙束。ネプチューン3兄弟が必死になって集めた過半数を超える署名だった。
『ここに名を書いた者達はおれの新しい王国に反発する者達······つまりこれは【裏切り者】のリストだ!!——————踏み絵はもういい!そんなもの、ウソをついてオトヒメを踏みつけるたけで簡単にクリアできる。この署名こそ、お前たちがこのおれの敵か味方かを自ら示した動かぬ証拠!!』
「そんな······!!」
『一人一人······!処分して行くとしよう!!』
『······!!身勝手な!!』
『王とは身勝手なもんだろう。おれたちにすりゃあ······身勝手な王だった——————』
『——————そして最後に、人間集団【セブン·ウォーリアーズ】!!』
パッと画面が変わり、そこに映し出されたのは。ひと一人が限度であろう檻に、岡田とユウスケの二人が詰めこまれている映像だった。
おまけに二人の意識はあるらしく、時折口喧嘩を始めているような様子を見せている。
「ともきさん!!ユウスケさん!!」
「何をやってんだアイツら······!!」
「捕まってんじゃんか!?あの二人」
あの場、抜け出すことが出来たリアとカレンは驚きこそはしないものの、納得出来ないものはあった。
『この部屋も国王の処刑が終わる頃には水でいっぱいになる······下等な生物【人間】はこれだけで死ぬんだよなぁ······!!【セブン·ウォーリアーズ】リーダー、ミヤタアキヒト!!お前達の首は地上の人間達への見せしめにちょうどいい!!——————さぁ!!旧リュウグウ王国の大掃除を始めるぞ!!3時間後、この国はプライドある魚人島に生まれ変わる!!』
そう言い切ると映像がブツと途切れた。
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ここは巨大な部屋。
実際ならばここで宴が行われていた部屋。
その部屋の天井に鎖で繋がれた檻の中。小さな穴から流れ出す海水に岡田は体を上下に揺らして暴れていた。
「ちくしょー!!水嵩がどんどん増えてく、何とかしてくれよ!!」
「わかった······じゃこの錠はずせ」
「俺にピッキング技術持ってると思うか!?」
最早お手上げという状況。
「まあ、カレン達は逃げたんだろ?アキヒトその他を呼んできてくれりゃあいい」
「来なかったらどうすんだよーー!!」
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だよー!だよ〜だよ·····と虚しく岡田の叫びが響く頃。海の森の奥地で、家らしきものから書物をピラリと捲る人影が一つ。
「······今まで読んできた本とはかなり違う······」
そう呟いたのは吉田。彼女が見ているのは、古文書と呼ぶにはあまりにも新しく、怪文書と呼ぶにはあまりにも整頓されていた。
この本は、一見個人が作り出したようなものではなく、様々な時代が生み出した文字が連なっている。
言わば土地が生まない文字だった。
一つの単語が書かれたと思ったら気づいたら一文字書かれていて、社会の勉強で学んだ甲骨文字なども書かれていた。
英語がそもそも読めない彼女が読めるのは数少なく、日本語と古代日本語、そしてハングル文字だった。
それだけでは穴だらけの文章の終わり、まるでここの人間に宛てたかのように自らの名前だけは日本語で書かれていた。
レオン·アリアス。
三大生命神である中の一人。【蘇生神】の称号を持っていた神。そして現代的には【初代キング】レオン·ハザァードの実の父親である彼が残したメッセージ。
「あなたは何者なの······?レオン·アリアス······」
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「明らかにケンカ売られてんなぁ······」
ハルトがそう呟いたのも事実。あれはアキヒトに向けてのメッセージ。
「まあ、売られたケンカは買うしかないよな?アキヒト」
「ああ、まあな」
山本からの問いに、俺は指を鳴らして応える。
「おい待てアキヒトくん!!」
「お父様が······」
それを一番の危機として感じたのはテティス。
彼女は素早くペットのサメ。【アルガ】に乗って助けに行こうとするが、
「待ちなさい!テティス姫!!止まれアルガ!!」
アルガはリュウギョウの一声に急ブレーキをかけ止まる。
「リュウギョウ親分様······でも!!」
「アキヒトくんも姫様も······二人共ちょっと待て······!!」
「ニュ〜〜〜姫、おれも行かねぇ方がいいと思う」
リュウギョウの制止に賛同したのはルゥだった。
「······ディザスターが今のリュウグウ王国で、最も恐れているのはテティス姫の『才能』だ。この先あいつがどれだけ理想的な魚人島を作っても、テティス姫の力によって潰されてしまうかもしれない。——————国王はその攻撃の盾にする『人質』だ······!!ディザスターは姫自身を捕まえその力を利用しようとは思ってねぇ。その力の存在自体を恐れてるからだ。——————だから姫の命を狙えるティーチと手を組んだ······!!厄介なものは全部消すのがディザスターだ······!!」
「——————けれど、わたくし······『力』の話は聞いていますが······『視る』だけですよ?」
「——————それだけで脅威と思われるのじゃ。人々の反抗心を生まれては奴にとっては困るからな」
「アルガ!じゃあ俺を龍宮城まで!ハルト!!テティスの事頼むぞ!!」
「おう!」
「待て、アキヒトくん!!」
一切話を聞かず、ルートだけ真っ先に決めたアキヒトに再びリュウギョウは止めた。
「お前さんらがディザスターと戦ってはいかん!!」
「ぼく達が······人間だからですか?」
「お前が言うとなんか話がこじれるわ!!」
モフ(人形型サイボーグ)にハルトは突っ込む中、リュウギョウはそれを肯定するように言った。
「そうじゃ······また魚人の残党が『人間』を恨む······ここはわしに任せてくれ!!」
人に······任せるのは簡単だ——————。
でも!!
「リュウギョウ!!こっちは仲間取られてんだ!!ディザスターっての放ってきゃ俺の友達もみんな困る。俺は行く!!止めたいんなら······止めてみろ!!」
「——————共に闘った仲だと油断したわい······。そういやお前さん······あの男の息子じゃった。止まる気がないんなら······仕方ないのう······!!」
手加減は······せんぞ······!




