EX.110 「声よ届け」
『リルの故郷——————【マヤルーバ島】』
「グァァァァアア!!」
「オメェ〜がライダーかぁ〜······。何しに来たんだぁ〜。のこのことぉ」
ライダーの前に現れたのは、世界政府最高幹部のジャスマーニュ。一個師団の力量を持つ彼にとってはライダーも足元にも及ばなかった。
「タイの大アニキを売った人間共を皆殺しにするんだよ!!通報した島にも行くぞ······!!ワルヒード·ロジャーは死んだ!お前ら下等種族に殺されたんだ!!」
「お〜〜〜。そうかいそうかい死んだか······まぁしかし、お前ぇ······あっしと来てもらいやすよぉ〜」
こうして、奴隷解放の英雄ワルヒード·ロジャーは死に——————その恨みのまま『人間』にキバを剥いたライダーは投獄。
「拒否しなきゃ······生きられた!!魚人の血液さえあったなら······ワルヒード·ロジャーは死ななかった!!」
「お前ら人間が!!あの人を死に追いやったんだよ!!」
——————当時の映像にはこう残されていた。
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『【日の下の解放軍】仮船上』
「『人間に献血を拒否され。【日の下の解放軍】船長ワルヒード·ロジャー。死亡』······多くは違わんが······」
リュウギョウは新聞紙に書かれたその言葉に溜息を付いた。
すると後ろから同じような溜息をした人物が一人——————アルファントだった。
「原因はと問われれば······『人間』だからな······」
「——————ライダーの奴が世界政府にウソを······」
「英雄ロジャーは人間に裏切られ······人間の恨みで自ら血液を拒んだ。さらに奴隷の過去もある——————真実はもっと無残だ。お頭の名誉も傷つける······ロジャーはそんな事吐くまい」
リュウギョウは、うむ、と答えることしか出来なかった。
「ニュ〜〜〜!!リュウギョウ船長!!敵船だぁ〜〜!!」
リュウギョウはそのルゥの叫びと共に、心の奥の奥で帯をキュッと締めた。
「——————お頭亡き今でも、もう引き返す事はできん······!!」
「戦闘準備!!誰も殺しちゃあならんぞ!!」
「うおおおおおおおおおお!!」
リュウギョウの声と共に魚人達は武器を持ち、高らかに声を上げた。
【日の下の解放軍】は船長を新たにリュウギョウとし——————止むことのない戦いに明け暮れた。
『魚人島——————【龍宮城】』
そこに住むネプチューン王の手に一つの小さな手紙があった。
そこには、筆で書かれたソフトな文字で——————
「『あなた方には······全ての真実を伝えるべきと筆を執った次第——————日の下の解放軍船長リュウギョウ』」
『決めたのです!!』
ネプチューンの脳裏によぎるのは、あの時のロジャーの言葉。
ネプチューンは背をもたれながら、畝った。
「ロジャーはあの生き方を選ぶ他なかったのじゃもん······」
「あの日の——————彼の心の叫びが······理解出来たわ。私なら大丈夫······負けません!!」
そうして彼女はまた——————
「タイヨウの下に住むのです!!人間と解り会える日は必ず来ます!!」
声を枯らし尽くすまで、協和の言葉を張り上げる。
「署名を!!移住の意志をここに!!」
「無理です!!オトヒメ様······!!もう無理です!!」
「あらゆる種族の奴隷達を差別なく助けたあのロジャーさんを、人間達は見捨てたんだ!!どう解り合うんです!?」
——————
「今日も一人も署名してくれなかったわ······」
オトヒメが唯一弱音を吐くのは、限って子ども達の前であった。
「お母様大丈夫〜〜?」
オトヒメは当時4歳のテティスの小さな体を抱きしめる。
すると他の子供達もぞろぞろと集まってき、母親であるオトヒメを慰めた。
「ええ、もう大丈夫。約束しましょう。あなた達の未来」
そう言って、オトヒメはいつも子供達の小さな指に絡ませて、約束する。
——————
オトヒメは来る日も来る日も駆け回った。
「——————しっかりしろォ!!」
「また人間ですな」
「島へ運びましょう」
難破船の人命救助——————。
「これは昨日話した『木』がたくさんある所。『森』よ」
「もり〜?うみのもり〜〜!?」
島の子供達への地上講習。
「待って——————!!」
署名活動、街頭演説——————。
「オトヒメ王妃」
ある日、オトヒメの下に魚人の団体がぞろぞろと現れた。
「まあ、あなた達。署名してくださった方々ね」
もちろんオトヒメは、彼ら全ての顔を覚えており。彼らの笑顔を共に快く聴き寄せた。
「今日はお願いが······署名はどのくらい集まったので?」
「5年以上集めていますが······1枚10人の署名紙が100枚くらい······千人は賛成してくれています。魚人島の人口は5百万人だから······正直もう少し······」
すると魚人達は申し訳無さそうに言った。
「自分達のお願いですが、勝手ながら。その内50枚程······取り消しにして戴きたく······」
「え······」
そうして、オトヒメがようやく集めた100枚の内半分が無くなった。
右大臣は、オトヒメ様、と署名箱をただ見つめている彼女にそう呟いた。
「オトヒメ様——————!!」
「あら子供達。地上の話をする?」
「あの〜。前書いたこの紙······母ちゃんが······」
1枚、
「あなたが王妃だから······話も聞いたが」
2枚、
「問題は人間の方で······」
10枚、
「演説も······もう、結構ですから······飽きたし······」
そして、かろうじて残っていた署名箱の中身は全て、始まりと同じ空っぽになってしまった。
——————
「はぁ〜〜今日も頑張ったわ!!」
「おかえりなさいませお母さま〜〜っ!!」
「ただいま天使たち。ちょっと今日は一人にしてくださる?」
オトヒメは泣き言は子供達には言ったが、実際に泣いた所を見せたことがなかった。
だが、今日は——————
子供達の目にも、ネプチューンの耳にも聴こえるような、大きな声で泣いていた。
——————
『ウソつきよみんなァ!!』
その次の日の事だった。
国中の放送スピーカーからオトヒメの声が響いたのは。
「オ······オ!!オトヒメ様っ!!——————今の、国中への放送がオンに!!」
「うるはい!!さらいじん!!」
「あ、あなたお酒を!?」
左大臣が駆けつけた時には、オトヒメの足元に転がる無数の酒瓶。そのどれもが空になっていた。
「うるへぃ!!よって······酔ってにゃい!!』
「酔ってますよ!!』
国中に広がるオトヒメの声に、住民達は突然の事にどよめいていた。
「あたしぃ達が!!水中だけでも生きていける私達が!!——————広い広い海の中······暗い暗い海底で!!」
『ただこの場所だけを選んでいるのはなぜ?ここには小さな【光】と【空気】があるからではないですか!?地上には!!もっと大きな光がある!!もっと高い空がある!!——————子供達がこっそり地上の都市を見上げに行くのはなぜる世界にはもっと素敵な場所があるのに!!行ってはいけない場所なんてあるはすないのに!!何か大人びた理由をつけて!!自分を納得させ······諦めているだけじゃありませんか!?』
『勇気を出して一番欲しいものを欲してください!!その障害が【人間】ならばみんなでぶつかりましょうよ!!』
『そうすれば······!!魚人島の子供達の生きる未来が······少しだけ······変わるかもしれない!!』
この声に、その涙に国中の住民は全て押し黙って声のする方向を見ていた。
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そしてある日——————
「わしが······!!『荒くれ者達の生き場』に······!?」
リュウギョウ達が乗る船に、一匹の蝙蝠が手紙をかけて持ってきた。
リュウギョウは怪しがりとも、一応目に留めて置くことを考え開いた時、かぐやの字で推薦文が書かれていたのだ。
「今や懸賞金3億9千万$······!!これに留まらず今後も世界にとっての脅威になると判断されたんだろう!!
左に銃を磨いていた【あくれ者】ノバシャが嬉々として言った。
「やっと思い知って来たって訳か······そんな話ケッて。もっと悪名を高めてやろうぜリュウギョウ船長!!」
「——————いやこの話······わしゃあ、受けようと思う」
「え!?」
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「よく戻ったリュウギョウ」
そして数日後。
皆を連れ、一時的に帰郷。そしてこのアルゴノォトへの参加することを伝えるためにリュウギョウは戻ってきた。
「わしが『アルゴノォト』になれば、キングの恩赦でアルファントを始め······海賊紛いの事などやりたくもない者たちも追われる事なくこの国で暮らすことができる——————何よりわしがこの地位を受ければ。少し魚人族が世界均衡に近づけんじゃろうか。迷惑をかけた王妃の為にも······」
「ウム······ありがたい。今は少し調子を崩しているがなぁ」
「初代キング達への大恩の一部を返すことであり——————これは亡きロジャーの願いでもあるはず。しかし少々······恩赦による。不安要素もありますがなぁ······」
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『【日の下の解放軍】船員ライダー釈放』
「【アルゴノォト】だってなァ······!!リュウギョウのアニキ······。人間の狗になるんだなぁ!!」
巨大な監獄、アリガダズから出てきたライダーがリュウギョウに最初に放った言葉だった。
「タイのアニキの言葉を忘れたかライダー!!恨みや怒りに生きるのはよせ!!」
「日和ったなアニキ······。おれもこのままアンタの安全圏なんだろうがそうはしねぇ」
「!!」
「大アニキは死んだんだ!!おれは元のライダー一味に戻る!!同胞たちも連れてくぜ!!」
——————
アリガダズから離れて、アメリカ近くの小さな孤島。
そこがライダーが降りると指定した所だった。
「お別れだ······!!どうしても止めたきゃ······今!!ここで······!!おれを殺せ!!」
降りたその地にて吠えるライダーにルゥを始め、元ライダー一味の一員だったメンバーが止めようとするが、リュウギョウは黙っていた。
「できねぇんなら、おれは自由だ······」
「······························」
「おれこそが魚人族の怒りだ!!」
「生意気言うなァ!!」
リュウギョウの拳骨がライダーの顔に飛び、それでもなお倒れない彼にリュウギョウは何度も殴った。船員達が止めることを無視して。
——————
「気に病む事はないリュウギョウ。魚人街で共に育った弟分······!!理由があろうと、息の根まで止められぬものか······」
ライダー達が抜けたあと、静かになった船内でアルファントはリュウギョウにこう言った。
リュウギョウはうなだれながら、
「なぜわからん······あのバカには······!!タイのアニキの真意が······」
「世界中どこに行こうが······暴挙を働けば英雄が動く!!さもなくば、もしもの時はおれたちの手で止めに行こう······必ず!!」
【日の下の解放軍】はリュウギョウの【アルゴノォト】の加入とライダーの帰還により、三つ派閥に別れ、それぞれの道を歩み始める——————。
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『龍宮城龍宮城。こちら【国境警備隊】!!巨大難破船が緊急入国を求めています!!』
「何をしとる。当然さっさと受け入れ······」
『何の間違いでしょうか······【貴族】が乗っています!!』
その兵士の話を聞いたオトヒメはすぐさま飛び出した。
「受け入れなさい!!救急部隊を海岸へ!!」
「オトヒメ様!!」
「すぐにそっちへ行きます!!」




