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アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』

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EX.107 「それは遠い海の物語」

『時は少し進む——————』


『——————ここは24年前の魚人島』


 それは人並み外れて弱い体を持つ、金魚の人魚オトヒメ王妃が強盗を働かせた魚人に説教を説いた所から始まる。


 彼女は『幸せ』を説き、利き手である左手が複雑骨折をしながらも、強盗を働かせた魚人を説いた。


 彼女は言った。

 盗んだお金で育てられた子供達は幸せになれるのか!?と。

 そしてその上、


「子に胸を張れない生き方をしちゃいけません······!!」


 彼の心の痛みが、彼女の心の痛みであり、彼女はその負の連鎖を体を賭して止めようとしていた。


 故にその姿は魚人島にすむ魚人達の生きる光となり、彼女という『犠牲』があったからこその平和であった。


 そして、熱血な"愛の人„オトヒメは、日々島へ降り、国民達に呼びかけた。


「この『リュウグウ王国』を再び地上へ移すのです!!」


 彼女が目指したのはたった一つの当たり前の事。


 しがらみを解き、再び地上へ戻る事であった。


「肌の色が違う······姿形が違う······!そう言う人間達が私達を理解してくれる日を待つのではなく。こちらから寄り添い!彼らを知るのです!!」


 当時、一時的に『日の下の解放軍』が解散し、元の職業であった護衛軍に戻ったリュウギョウは、「歴史が答えを出しとる」と関心を寄せなかった。


 しかし彼女はめげず、演説を続けた。それでもその日その日の署名者は増えず、わだかまりは消えぬばかりであった。


 当時彼女には、ウバボシ、リュウボシ、チョウボシの3人の子供と、彼女の友人であるリアが海底で拾ってきた一人の子供——————テティスがいた。


 彼女は子供達に向かい、毎回毎回「私はあなた達の生きる未来を変えてみせます」と約束していた。


「オトヒメ様の演説なら映像をお使いになって下されば良いものを······」


 左大臣は王室で、ネプチューン王と話していた。


 ネプチューンは人間を何百人殺した事があり、そんな自分がこの夢をはっきりと応援出来ないと考え、彼女の背中をそっと支えていた。


「——————島には多くの人間が滞在しています。王の友人"星の王„レオン·ハザァードの威厳で一応守られているとはいえ······万が一と言う事が······」


「——————それは彼女も覚悟の上。オトヒメの夢見る世界はな、左大臣······たった数十年前の昔の話。我々の過去の先祖達が試みて······!無念のまま潰えた夢。そのものなのじゃもん······!」


「!?······それは一体どういう意味で」


「——————わしにはオトヒメを止める事はできん······しっかり守ってやってくれ!!」


『ある日——————』


「返しまたえ!それで何人分の署名だと思ってるんだ!!」


「何人分でも構やしねぇシャハハハ!こんな紙切れ集めて何ができる!?」


「おい!やめんか!!お前は魚人街のライダーだな!?」


「アァ!?少し違うな。海賊ライダー一味のライダー船長だ!!」


 署名を取り返さんと掴みかかる兵の喉元を軽々しく掴み、ノコギリザメの魚人である彼はそう言った。


「この近海をウロつく水中で息もできねぇ下等種族の人間達をエサに暮らしてる。代わりに人間を狩ってやってんだネプチューン軍······!礼に金でもよこせ······!」


「リ······リュウギョウ親分!そこで見てないで手助けを!!」


 彼が助けを求めた先には、岩に腰を置き、ふかしたばこをはいていた巨躯の男。


「······リュウギョウ······?」


「おいチンピラ——————その新米兵士を放せ!わしの部下じゃ——————それと署名の紙、わしゃ興味ねぇが······王妃にとって大切なモンじゃ······返せ」


「ネプチューン軍のリュウギョウ親分だ!!助かった!」


「シャハハハ!"親分"か、そりゃいい肩書きだ。こんなマフィアみてぇな兵士もねぇもんだ!!」


「言う通りにせいライダー!!」


 リュウギョウが睨みを効かせると、ライダーは「わかったよ!」と苛立ちながらも兵士を乱暴に放す。


「そう怒るなアニキ!久しぶりだな。同じみなし子の街【魚人街】の仲間じゃねぇかよっ!」


「一緒にするな······まだ海賊謎やっとるのか。クズめ」


「クズはねぇだろアニキ」「ゴミか」


 そんな二人の会話の中、一人の魚人が大声を張り上げた。


「冒険家ワルヒード·ロジャーさんが帰ったぞ!!」


 いち早く二人は、「タイのアニキが!?」「大アニキがァ!?」と反応する。


 すると、


「リュウギョウ!ライダー!!元気そうじゃねぇかお前ら!!」


 二人もロジャーと話すのは解放軍が一時的な解散後以来なので、歓喜に満ちた声を出していた。


「今回の旅は長かったのう!」


「ああ······色々あった!!龍宮城に用があるんだ」


「ウチの船にも寄ってくれ」


 魚人街とは——————事の始まりはみなし子達を預かる巨大な保護施設であった。

 しかし程なく施設は荒れ始め······管理者達の手に負えず。そこは魚人島のはみ出し者達の集まる『無法地帯』となった。


 当時魚人街のリーダー格であったワルヒード·ロジャーはやがて冒険家として国を飛び出し。

 それに次ぐアニキ分リュウギョウは王国の軍隊の精鋭に。

 最も気性の荒かったライダーは海賊となり、海底を暴れまわり。

 みなそれぞれの道を歩んだ。


 ——————しかし、馴染みの者も耳を疑う大事件が起きる。

 ワルヒード·ロジャーによる『大陸主要都市襲撃事件』。

 彼は『奴隷解放の英雄』と呼ばれ、同時に『大犯罪者』となった——————。


 これを受けて、世界協定と対峙したワルヒード·ロジャーを見殺しにはしないと、彼を慕うかつての【魚人街】の曲者達は集結した。

 ロジャーの連れ出した元奴隷達とそうでない者達を識別されぬ様。

 奴隷の烙印を覆い隠す刻印を全員が体に刻み込み。


 魚人達による『日の下の解放軍』は結成された······!


 そして、執拗に現れる。政府の追手を何隻も海に沈め。


「おいおいその辺にしとけよアニキ!!もう意識はねぇ!!」


「······奴隷はまかり通るが、奴隷解放は罪······!これでも人間を愛せと言うのか、オトヒメ王妃······」


『日の下の解放軍』は進撃を続けた——————。


 それは、たった20年前の事であった。


 @@@@@


『【魚人島】』


 その頃島では、ワルヒード·ロジャーが地上の人間の鼻を明かした事に歓喜し、英雄と呼んでいた。


『【龍宮城】』


 ネプチューンの腕に抱かれ、すやすやと眠りこけているテティスの顔を見ながら、本当にやってのけたのか、と呟いた。


 ネプチューンの脳裏に宿るのは、5年前ロジャーがネプチューンに対して話した言葉。


『奴隷達を解放するじゃと!?』


『耐えられない······奴隷なんてのは······生き地獄でしょう!?彼らはこうしてる今もなお人にあらぬ扱いを受けている······決めたのです!』


『おぬし······今回の旅で、一体何を見た······!!』


『——————"人間"です!!』


「【魚人島】はまた······立場が悪くなった······。当座『世界均衡』の会議にも出席できまい······」


「だけどあの日······とても彼を止める事など出来なかったわ。——————彼の心から聞こえる声が······大きな悲鳴を上げていたから」


 オトヒメは何か意味深な言葉を発し、ネプチューンの腕で眠るテティスの頬にキスをし、その小さな小指でいつもみたいに約束を結び、地上に降りた。


「人間達と共に生きましょう!!光差す太陽の下で!!彼らをもっと知るのです!!」


 いつもみたいに、元気よく。


「署名して!!あなた!!」


 いつもみたいに、強引に。


「む······無理ですよ。オトヒメ様。今、島中がロジャーさんの偉業に拍手を送っています。これは人間との決別さえ意味する事件。でも悪いのはやはり人間で、だから今はとても······」


「今は無理でも7年後でも!11年後でも!!15年後でも構わないっ!!いつかまた······この国が"世界均衡(ワールドエドゥコード)"に参加できる日の為に······署名してください!!」


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