EX.106「魚人達の英雄」
『海の森』
「え〜〜〜んお父様がぁ〜〜!!」
「テティス姫大丈夫じゃ。奴ら実際はまだ国王に手出しなどできん!!」
カレンから告げられた『龍宮城侵略』を聞いて、テティスは溢れんばかりの涙を流したが、リュウギョウの言葉を聞いて、その涙は収まり始めた。
「え······本当ですか?」
「ああ······少しアキヒト君達に話をする時間をいただきたい。王は必ずわしがお助けする!!」
「······はい、お願いします親分様······」
「ん〜〜だったらお茶を持ってきたぜ〜」
「ハルト、文脈が分からん」
「まだ、脳に血が回っていないのかもしれませんねぇ」
しかしハルトは言動とは違い、器用に、そして丁寧にカップ3個を両手と頭に乗せてやってきた。
そこら辺りのプライドはあるのか······。
「リュウギョウさんどういう事?あなたがライダーを地上へ解き放ったって······」
「にゅ〜リュウギョウさん······」
「ああ」
「ポロネーズ·ライダー······ノコギリザメ型の魚人か······聞いたことありますね。たしかそれは、マスターが倒したと聴きましたが」
「俺は殺したと聞いた」
同じように言葉を合わせる二人、カレンは驚いていたが俺は二人にはこの事を話した事がある。
アメリカに行った際、口裏合わせに手伝って貰ったからだ。
まあ、それよりも——————
「おいリュウギョウ······何か言い訳してぇってんなら聞くけどさ、言葉には気をつけろよ······!」
「ポロネーズ·ライダーってやつがカレンのいる北アメリカ大陸へやってきて、そのカレンこそやつの殺しのターゲットになったんだからな」
「!!」
「あいつ自身、駆けつける前に何をされたのかも分からない。姉だって殺されかけたんだ······!!」
なんで俺がこんなにも怒っているのかは分からない。
カレンこそこの件に対して怒る権利があって、俺には関係ない。
けど······、
「話次第じゃお前を······俺は許さねぇ!!」
「························」
カレンは黙っていた。
今ここでアキヒトのように激昂しても、当時のカレンやその姉が流した涙が、駆けつけたアキヒトが流した血が戻るわけじゃない。
そう、知ってたから。
何よりも辛い事件に遭った者程、諦める事は易くなる。
だけど、遠く遠く耐え忍んだ結果。彼らに出会った事もまた事実。
共に戦う仲間たち、異郷の地で心を許せた友人。
心の底から愛した存在。
彼はあの時言っていた。
ポロネーズ·ライダーに全く知り合いでもない人間をなぜ道化師如く笑って助けるのか?と。
彼は言っていたのだ。その口で、
『俺が今、怒っているからだ!!』
と。
「私は——————」
カレンは口を開いた。
「何があっても、今更ライダーを不憫だなんて思うつもりはない······。でも、私はここに着くまであんなに強かった魚人達が人間か、迫害を受けてたなんて知らなかった」
カレンは思い出す。
「——————リアさんに連れられて色んな場所に行ったけど、その時に何度も思った。そこの街並みが、さして地上の街並みと変わっていなかったことに······!」
ルゥはようやく傷が癒えてきた状態で言葉を発した。
「······憧れてたんだ············許して欲しくて言うんじゃねぇぞ······カレンさん······!ライダーさんは人間が大嫌いで人間を恨み、オレたちはやりすぎた······でも」
「ガキの頃から人間達の住む地上に憧れを持っていたのは事実だ」
ルゥから後に告げられたのは、第一次英雄大戦まで魚人や人魚は"人類„に分類されていたこと。
そして、その大戦を境に「人間と構造が違うから」と言う、単略的思考で追われてしまったこと。
そして、ようやく今になって友好を結べ始めたこと。
——————でも、人間達は魚人族を嫌い続けたことも。
「オレの生きてる中で一番ひどかった時代は、第二次英雄大戦の始まり······!人間達がオレたち魚人や人魚を攫い続け、食料を手に入れる為に暴れ回る恐怖は今でもはっきり覚えてる」
「——————そこを救ってくれたのが······今は行方知れぬ初代キング達じゃ······」
『こいつらは俺の、配下にする!!』
名もしれぬ、存在すら最近まで彼らには伝えられなかったらしく、その時の怒りは尋常じゃなかったという。
『配下』と言う下の呼び方を初代キング——————レオン·ハザァードは言っているが、彼らは見返りを求めず、この島を創り、地球の光源とも言える『陽樹イヴ』にくっつけ沈めた。
さらに、星のトップであるキングの言葉になると、他の人間達も口にはしとも、行動にはせず。
結果、彼らに平和が戻った。
「——————しかし、人間達の魚人嫌いが止むわけじゃない······!お前さんらも日常のどこかに知っているはずじゃ······現実をな」
「ニュ〜〜〜······」
「おかしな話······1度権力を手に入れた者程、変化を恐れるもの。魚人と人間の決別を決めた"始まりの地„に近づく程に、差別体質は深く根付いて変わる事はなかった······!」
そんな中、この魚人島の腐った歴史を変えようと二人の人物が立ち上がった。
一人は、『オトヒメ王妃』——————人間と『共に暮らす』事を島民達に説き続けた女性であり、ウバボシ達の母親。
そしてもう一人は、奴隷解放の英雄『ワルヒード·ロジャー』——————人間との『決別』を叫び······当時最も植民地や奴隷制度の高かった北アメリカ大陸やヨーロッパ大陸を襲撃し、多くの奴隷達を救った人物。
「ワルヒード·ロジャー······!?聞いたことある。でも、魚人だなんて聞いたことがなかった」
ユウスケは唖然として言った。
俺は聞いている中で、『大人の事情』でここ数年で何度も隠されていた事を思い出し、知らない、と言うことに納得がつく。
「——————彼は、その後に元奴隷の魚人達を連れ······『"日の下„の解放軍』を結成する男じゃ······」
だからこそ、ディザスター達は"新„解放軍って言っていたのか······。
すると、リュウギョウは着ている着物を緩め、胸元を見せる。
そこには、ルゥの額と同じように太陽の刻印が彫ってあった。
「わしもライダーも——————当然ルゥも······その『日の下の解放軍』に所属する事になる······」
だが地上の人間に激しく盾ついた『魚人軍団』が海にいる事は、同時に人間との友好を実現しようとするオトヒメ王妃の首をしめる結果となってしまったのだ。
「——————今を耐え忍び、未来を変えようとするオトヒメ王妃に対し······未来を捨てて、今苦しむ同族よ奴隷達を救い出したワルヒード·ロジャー······どちらか正しいなど······とても決められん」
「——————じゃがわしは······」
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『59年前——————地上』
魚の顔が船首に付けられた一つの船の上で、当時14歳のルゥが慌てて船長を呼ぶ。
「お頭ぁ〜〜〜!敵船だぁ〜〜〜!!」
「うるせぇなァ······ルゥ······」
「全く騒がしい······」
船長室にはワルヒード·ロジャーを始め、リュウギョウやライダー、そしてその他大勢の魚人が集っていた。
「——————敵船か?」
ただ、一言だけ聞き、立ち上がる男こそ。数年前、北アメリカ大陸とヨーロッパの主要都市をたった一人で半壊させ、奴隷を解放させた男。
タイの魚人——————ワルヒード·ロジャーである。
次話、12月26日午後予定




