表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アキヒトバトルアドベンジャーズ  作者: モフきのこ
第1章 『出会いと別れの一年間』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
111/302

アキバトEX 「クリスマスサンタデイ」

 クリスマス——————そうそれは、聖夜の日の物語。


 実際的な話で言えば、インドネシアの祝祭日。

 かのイエス・キリストが降誕した日となっている。


 今ではリア充達が外をたむろして、我々のような寂しい人たちを追いやっている悪魔のような行事なのだが、子供にとっては違う。


 ケーキを食べて、サンタさんからプレゼントを貰う一年に一度のハッピーデイ。


 だからこそ、招待が気になる気持ちを押しやってサンタさんからのプレゼントを寝て待つ。


 鈴の音と共に煙突ではなく、窓が開けられる。


 犯罪ではなく、慈善活動。


 一年に一度の伝統行事には、ヒーローは付き物なのだ。


 @@@@@


 ヒーローには一年の行事には、何度も呼ばれるケースがある。


 ハロウィン然り、七五三然り、天皇誕生日然り、どのようなケースでも呼ばれる。


 その中でクリスマスは最も『参加したくない』行事と言われている。


 その理由は2つあり、1つは家族、恋人と付き合う時間がガクッとなくなり、俗に言う『性の6時間』そのすべてが働きに走らなければいけない。


 2つ目を話す前に、スウェーデンの方面のクリスマスについて話しておこう。

 クリスマスにチキンやケーキを食べるのはさして変わりないが、どでかい事に、一杯の牛乳と2、3枚のクッキーが置かれている。


 そしてそれは、各家庭どこにも置かれているらしく、これどうやって処理するんだ?と思ったのは8才くらいの頃。


 実際は——————、


「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク!!——————おえっ······」


 最後の言葉が「ぷはぁ!」のような活気の良い声ではなくて済まない。

 だって、これ58杯目だぜ?

 吐くわ。

 よくよく考えて見ると、コップ一杯200mlくらいだから単純計算で10600ml——————10.6lだ。

 国から補給される『空飛機械トナカイ』を乗るのを諦めて(そもそも誰も乗っていないらしい)、走って汗をかいているが、お腹たぷんたぷんの状態じゃ吐くのが今か次かを何度も往復している感じだ。


 ヒーローは1人辺り100人分のプレゼントを持たされ、牛乳を飲んでプレゼントを渡すと言う地獄のループをハロウィンの如く政府に選ばれて走る。


 俺——————アキヒトは久々にと言うか、始めてイベントを投げかけられ、弟が用意してくれたホワイトシチューも置いていって、いつもは着ない真っ赤な服を着て走り回る。


「······メリークリスマス」


 流石に子供の部屋には入らないで、クリスマスツリーに配られたプレゼントを置く。


 今崎 心美ちゃん、プレゼントは『くまのぬいぐるみ』か······。


 俺は袋から首にリボンをくくりつけられたくまを取り出して置き、そのまま部屋を出る。


 俺はサンタ特別に用意された特別キーで開けて、扉を閉じる。


 するとがチャリと音がなって、鍵がしまった感触を感じた。


 このキーはサンタ特別用のプレゼントを渡す為だけに用意された物。

 一度開けたら、飛行機の検査機のような者に扉が変わり、勝手にサンタが持ち出さないように保険をとっている。


 例外は牛乳もクッキーなのだが、コップに注がれている牛乳を持ち出すような勇気は何一つ無く。グビグビと喉に白い液体を入れる作業を繰り返す毎分。


 牛乳一杯のカルシウムは少ないらしいけど、この量は過密だろう。

 もうしばらく飲まなくて良い。

 具体的に言うならば1月間は絶対に飲まない。


 吐き気を意思力で抑え、次の所へと向かう。


 たとえリバースするのなら、せめて家のトイレで······!!


 この瞬間だけ、戦闘による死よりも圧倒的な恐怖に陥っていた。

 頑張れ!耐えろ!あと42杯だ!!


 ぱっと聞いてギブアップしそうな単語を自らに叫びながら、走っていく。


 トナカイのソリに乗らず、その足で——————


 @@@@@


「おじさんだあれ?」


「············ho······」


 それは90杯目を超えた頃、最早意識が朦朧として牛乳が白ではなく透明に見えてきた頃だった。


 彼女の様子を見ると、どうやらトイレに行きたかったらしく、モジモジとしている。


 サンタに会いたかったから、夜ふかししました!


 と言うような状態ではなく、そもそも論、俺をおじさん呼ばわりしている。


 まあ、俺は今更ながらに言うが、赤い服以外に帽子や髭を装着していて、おまけに長い黒髪が漏れ出さないように白のカツラをしている。

 ここでバレたのならこの子は将来、探偵が向いている。


 お父さんかお母さん······!どちらかでもいいからこの子を回収して!


 そう心の中で叫ぶも、寝室っぽい扉から物音一つない。

 寧ろ親がサンタに隠れて騙していたかのように感じるレベルだ。


「ホウホウホウ······お嬢ちゃんや、こんな夜中に起きるなんて悪い子じゃないか······」


「おじさんこそ、テレビが言ってた泥棒さんじゃないの······?」


 この職業に就いた時には覚悟してたけど結構きついな!


 泥棒······泥棒って!吐きそうになるほど牛乳飲んでしっとりしているクッキーが褒美なんだぞ!


 だがここで俺のやることは、膝を折って倒れる事でもなく、親を必死に呼ぶことではなく、プレゼントを渡すことだ。


「お嬢ちゃんや······わしはサンタの代理として来ているんじゃ、だから悪い人じゃあないよ。さあ······プレゼントをあげよう」


 ··················。

 ························。

 ······························。


「でもそう言って変な所へつれてくんでしょ······?」


 お父さんお母さん〜〜〜!今だけ躾を忘れさせてくれませんかね〜〜!?


 身が硬すぎると言うか、安全で安心出来ると言うか······。


 そりゃあ親もぐっすり寝れるよ。


「ダダダダダダダ大丈夫だよ!ほら、サンタの袋!この中にはねぇ······夢や希望が(絶望が)入ってるんだよ!!」


「その中に私を入れてつれてくんでしょ······?」


 心底怯えだす小鳥遊 小雪ちゃん(メモに載っていたので覚えた)。


 チョロチョロ············。


「?」


「ふぇ······」


 漏らした〜〜!止めすぎた〜〜!まずい、不味いぞ!暗躍組織のシークレット中のシークレットであるサンタがバレた以外にお漏らしまでさせてしまうなんて······!!


「くそっ······!こうなったら、誰かのプレゼントで補うしかない!」


 そう言って、俺は袋を漁りだすとポロッとレッドデータブックである子供機密文書がポトリと落ちた。


 この文書は終わった家は自動的に消える。だからこそ、一番上にあったのは、今現在俺が修羅場化したこの家『小鳥遊家』だ。


 その文書に載っていたのは——————!


【小鳥遊 小雪】プレゼント——————『うさぎのパジャマセット』


 ······ちょっと準備良すぎじゃないですかね?


 @@@@@


 その後、レインボーに頼んで素早く着替えをしてもらい(レインボーは、ふふふ······いつかはこれが日常的になるのですね、と含み笑いをしていた)、牛乳とクッキーを素早く食べて、さも本物の泥棒の如く飛び出した。


 そして、91人目から99人目までの子供達には全て渡し終えたのだが、ここで一つ問題がある。


 最後の子が、住所だけしか貼られていないのだから。


 基本的に窓から入るサンタクロースヒーローだが、時折苗字が無いと分からないケースがある。

 これでは本当に泥棒扱いになってしまうので、政府も顔写真は貼らないが、苗字は貼ることになっている。


 つまりこれは、例外中の例外か······。


 住所をよく見ると、マンション特有の番号(301などの3、4桁)が載っているのでマンションである事は確実だろう。


 問題はそこだ。

 俺はこの住所を知っている。

 言うならば、始めて彼女と知り合った時に(具体的に言えば殴り飛ばされる前に)貰っていた。


 だからこそ——————、


「これは何かの策略を感じるんですが。そこはどうでしょうレインボーさん」


「ふむ······それでは、貴方はこの一年いい子ではありませんでした。と言うことにしてプレゼント拒否しません?」


(出来ねーよ!そんなことしたら、来年までやらされるぞ、こんなクソ企画!!)

(それは嫌ですね。私の感覚もある程度アキヒトと繋がっているので、胃の辺りの不快感が未だに拭えません)


 叫びそうになるのを必死に堪えて、小声でレインボーに話す。


 まっ、まぁ······牛乳飲んで(一番キツイ)クッキー食べて(意外とキツイ)プレゼント渡せばいいんだから(正直これだけでいい)大丈夫だろう。


 ————————————


 こうして俺は、数時間前に『クリスマスイブパーティー』を行っていた会場であるカレンが借りている部屋に入った。


 先にプレゼントを渡しておこう、ただでさえカレンの直感は危ないんだ。それに——————、


「···························」


 俺の眼前には、こたつに包まって寝ているカレンとクリスマスツリーと()()1()0()()()()()()()とクッキーが置かれていた。


 よし、逃げよう。


 ブ〜〜!ブ〜〜!ブ〜〜!!


 警報アラーム(サンタ担当にしか聴こえない)が鳴り響き、俺は思わず耳を塞ぐ。


 このアラームはサンタ担当が逃げ出さないように用意された物で、正直牛乳を吐きそうなので帰りたいと言う気持ちを無理矢理抑えこんでいる地獄の兵器。

 国の言い分だと、戦時中、密告兵が嘘をつかないようにする拷問器具らしいが、それを国を護るヒーローに付けては駄目だろと俺は思う。


「仕方ない······片付けるか」


「は〜い」


 俺は、牛乳を飲むとか飲まないかの話ではなく、パーティーによる汚れた部屋を片付ける事で現実逃避を図ろうとした。


 ————————————


「はい······終わった············」


「なんですか?その人生が終わったかのようなテンションは。それよりもさっさと愛の巣へと帰りましょう」


「帰るも何もコレ飲まなきゃならないだろ?無理じゃない?」


「いつだって逆境を乗り越えてきたじゃないですか!!ガンバレですよ!」


 フレーフレーと腕を上げ下げするレインボーに俺は——————


「じゃっ、じゃあ!まずカレンをベッドに置いてくるから!そこからにしよう!!」


 どこまでも逃げる姿勢でいる。


「はあ、でもアキヒト、カレンの布団部屋?って言うの分かりませんよね」


「···························」


 こたつの熱による汗がカレンの体のラインを際どく見せていた。


「何モノローグを進めているのですか!!」


 俺はカレンの軽い体をお姫様抱っこで持ち上げ、入口近くの部屋。寝室へと入る。


「無視しないでください!!」


 そう、俺はサンタ。

 子供の夢の住民だ。

 故に俺はレインボーの子供の妄言を見事なスルースキルで、


「私、アキヒトよりも年上ですよ」


「えっ、マジで!?」


 じゃあ、その幼女な見た目は何なんだよ!?と俺はミニスカロリサンタに思う。


 しかし、その声は思ったよりも響いたようで。


「ふにゅ······who?」


「············アメリカでは寝起きの、誰?はwho?になるのか?」


「············それは私達は深く触らないでおきましょう。怖いですし」


 カレンは目覚めたが、カレンのボケ(強制)で意外と冷静になれた。


「あぅ······おと〜さん?」


「あの人パパとは言わせてないのかな?寝起きでも呼び方がお父さんだ」


「アキヒトは親父呼びですもんね。ところでですが、私とアキヒトの子にはなんて呼ばせますか?」


「ん〜やっぱパパかな」


「フェっ!?」


 俺のナチュラルスルースキルが発動していたせいで、レインボーが言っていた事を深く考えないで返答したが、これは最早失敗か?


 まあ、今はレインボーよりもカレンだ。起こしてはまずい、むしろ魔力まで感知できるまで目覚められたら一瞬でバレる。


「違うよ、サンタクロースだよ」


「じゃあおと〜さん?」


 ······まぁ、この年になれば分かるよね。


「おと〜さんじゃないけど、カレンちゃんの知り合いだよ。それじゃあプレゼントを······」


 俺はなろう系主人公特有の『朴念仁(ただの意思力)』を発動しているが、本来ならば危険だっただろう。


 だって、やっぱり際どすぎるもん!!


「ん〜暑い〜〜」


「だめだから!冬だから!俺がちょっとファイアで温めただけだから!!」


「サンタ······ファイア······なでなでして?」


 こいつ気づいているじゃないんだろうな?


「はいはい」


 俺は言われるがままに頭を撫で、布団をかける。


 なでなでを10回くらい繰り返した後、再び夢の世界にかえったらしく、寝息が聞こえる。


「それじゃあ、そろそろプレゼントを······」


 俺は袋の中から、最後のプレゼントとカレンのプレゼント内容が書かれた紙を取り出す。


【余島 花恋】プレゼント——————『包丁』


 ピタッ、チラッ、チラッ(二度見)


 背筋が一瞬ゾッとしたが、よく考えればクリスマスイブパーティーの時、カレンがあんなこと言っていた気がする。


『ん〜〜、やっぱり道具かな!私の料理ポテンシャルはもうちょっと上げられる気がするんだな〜〜!!』


『ふん······だったらやっぱり『包丁』じゃない?』


『だよね!私もそう思って国のプレゼントにさ!銘刀のさ『包丁』を頼んだんだよね!やっぱり『料理人に包丁』って必要だよね!!』


『『鬼に金棒』のように言わないでよ。——————でも、まあ美味しく作れるのに、道具よりも愛情じゃない?』


 俺はその時『じゃあ吉田の料理には愛情が1ビットも入ってないのか?』と言ってボコボコにされたが、よく覚えていた。


 俺は包丁が入っているであろうラッピングされた四角の箱を彼女の枕元にあるどでかい靴下に入れて——————


「メリークリスマス。良いご飯を」


 ちょっとキザッぽく言いたかったが、ダサくなってしまったな。まあ、それでいいだろう。


 そう俺は結論づけて、いつの間にか消えていたレインボーが待機しているであろうリビングに行く。


 そこには正座しているレインボーと2本に増えた徳用10リットル牛乳が机に置かれていた。


「··················さあ、覚悟は出来ましたね」


 こいつ······目が死んでやがる······!


「もう持って帰って明日の朝ごはんにでも置く?」


「············パキッ(キャップを砕く音)」


「·································」


 レインボーは牛乳の掴み部分を持って俺に近づき、


「さあ、一緒に死にましょう?」


 悪魔のような事を言った。


 @@@@@


 プルルルルルルルル······ガチャ


「はい、モフです」


『あれ?モフちゃん。私アキヒトくんの携帯に電話かけたのに』


 どうやらカレンさんは知らなかったのかもしれないですね。ならば、


「現在マスターはトイレと友達中ですよ。どうやら最後の最後に徳用10リットル牛乳に当たってしてまったそうで······」


 モフは未だに『宮田家』のトイレの一つを占領している存在を思い浮かべて言った。


『あちゃ〜それは不運だね〜〜。大丈夫なのかな〜〜』


「大丈夫だったらトイレと友達なんてしませんけどね······——————ところでカレン上機嫌ですね。鼻歌でも歌って」


 モフは携帯越しでも聴こえるカレンの鼻歌を聴いて言った。


『あ〜それね〜!サンタさんから包丁を貰ったから今絶賛料理番組見て作ってるんだぁ』


 電話しながら料理しないでくださいよ、とまで言ってモフは通話を切る。


「うぷ······」


 バケツを持ちながら移動するレインボー抜けて、モフはアキヒトが籠もっているトイレにノックをすると、


「············はい······」


 生気が一欠片も感じられない返答が聴こえ、モフはカレンから託された伝言を言う。


「カレンさんから『次はクリスマスイブパーティーよりも美味しい料理作るから期待してね!』だそうです」


「そうか······はは······おえっ」


 ここはしばらく換気とスプレーが必要ですね。


 @@@@@


 カレンは鼻歌を歌い、リズミカルにトントンと豚肉を銘刀『朧』で切っていた。


 ······あの時モフちゃんには黙ったことがある。


 カレンは豚肉肉を切り終え、番組が言うように鍋の中に入れて、しばらく待機する。

 その間に手を洗う中で、途中から垂れ落ちた前髪を摘み——————あのよるサンタクロースに扮したアキヒトに撫でて貰った事を思い出す。


 あの時カレンはもうほとんど目覚めていて、ちょっとした我儘を言った。


『メリークリスマス。よいご飯を』


 あの時アキヒトくんが言っていたように、もっともっと料理の腕を上げておかないと······!


 そして、クリスマスイブパーティーの時にアキヒトが用意したクリスマスローズを優しくつついた。


 美味しい!と驚く彼を思い浮かべながら。



アキヒトは基本的に珍しい花が好きです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ