南門の外
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それでは、どうぞお楽しみください。
郊外実習の朝、男子寮の棚から4つの杯がなくなった。
俺たちは水を飲み、杯を洗って背負い袋へ1つずつ入れた。
学園の備品ではなく、自分が飲む時に使う物だ。
エリオットは短い縄と笛を確かめる。
ルシアスは水袋を持ち上げ、中で水が偏らない位置へ紐を結び直した。
ローディは盾を背負った後、包帯と厚布を入れた袋を左側へ移す。
「長い縄は?」
ローディが聞いた。
「持たない」
俺は答えた。
選んだ道具は、短い縄、小型の水袋2つ、長さの違う添え木2本、包帯、厚布、笛2つ、新旧の地図、記録紙、火床の蓋だ。
長い縄と大きな水袋は紙の裏に残してある。
「必要になったら?」
「持っていない物は使えない。今の条件で持つ物を使う」
俺が言うと、エリオットは短い縄を袋へ戻した。
「じゃあ行こう。南門に遅れる」
食堂へは寄らない。
朝食は包んでもらった黒パンと干し肉を、低い丘の確認地点で食べる予定だ。
南門には、基礎課程の生徒が3列に並んでいた。
荷物の大きさも、持っている武器も違う。
剣を腰へ下げる者、杖を袋の横へ結ぶ者、盾を背負う者がいる。
カレンは名簿を見ながら、2つの班を1つの組として呼んだ。
俺たちの班は、俺、エリオット、カシア、アステラ、ローディ。
隣の班には、ルシアス、ノエラ、レイナと、同じ教室の生徒2人が入った。
門の外では2班が離れすぎない。
狭い場所では1班ずつ通り、前の班が止まった場合は後ろの班も退路を塞がない位置で待つ。
「今日の目的は討伐ではありません」
カレンが言った。
「南門から低い丘まで歩き、道、水場、休息場所、退路、周辺の痕跡を記録します。危険を見つけることより、見つけた物が何か、どこまで確かめたかを分けること。魔物を見た場合は交戦せず、笛を3回鳴らして教員の位置へ戻りなさい」
カレンの他に教員が2人、補助員が3人いる。
1人の教員が1つの組だけを見続けるのではなく、3つの組の間を移動する。
「私が見えない時間もあります。各班の停止条件と、判断範囲を使ってください」
門が開いた。
街道を外れるまでは、荷車2台が並べる幅がある。
先頭の組から間を空け、俺たちも歩き始めた。
エリオットが前方と道を見る。カシアは前後の人数と歩き方。ローディは荷と足場。
アステラは地図と記録。俺は班同士の距離と、判断範囲へ出る影響を伝える。
紙の表には『南門から街道を南へ』『石標で東の道』『2班の間は荷車1台分』だけがある。
俺が決めた内容ではない。
南門から出る前に5人で確認し、アステラが現在の欄へ書いた。
街道の石標を過ぎると、道幅が半分になる。
土の両側へ草が伸び、朝露の残っている場所と乾いて白くなった場所が混ざっていた。
「右の草、折れてる」
カシアが言った。
道から3歩入った場所で、草が同じ方向へ倒れている。
先に歩いた班の跡か、荷が触れた跡か、動物が通った跡かは分からない。
俺は足跡を探した。
柔らかい土に浅い窪みが2つあるが、輪郭は崩れている。
「人か魔物かは分からない。新しさも決められない」
「現在の道へ影響する?」
アステラが聞く。
「道には入っていない」
エリオットが答えた。
「今は東の道を進む。折れた草は裏へ」
アステラが『道から南へ3歩、草の倒れ。種類と時刻は未確認』と裏へ書いた。
俺なら、幅、深さ、草の折れた位置をさらに測る。
だが、現在の道を選ぶために必要な事実ではない。俺たちは進んだ。
最初の休息地点は、石積みの水場だった。
水は細い管から流れ続け、下の桶へ溜まっている。
カレンは先頭の組を確認するため、坂の上へ移動していた。
俺たちの近くには補助員が1人だけ残る。
レイナが水場の縁へ手を置いた。
「飲む前に、色と匂いを確認します」
隣の班が水を確認する間、俺たちは持ってきた水袋を使う。
カシアは2つの水袋を、俺とローディから1つずつ受け取った。
「両方とも同じだけ減ってる。次は後ろの水袋から使う」
「なぜだ」
「前の人が転んだ時に、後ろへ水を残すため。今は前の班が多く使ったから、次を後ろにする」
俺なら2つを同量のまま保つ。どちらが離れても半分残る。
だが、次の道は細く、先頭側にエリオット、最後尾側にカシアがいる。
カシアは人と移動の範囲で、後ろへ水を残すと決めた。
「分かった」
俺は水袋の位置だけを表へ書いた。
水場を過ぎた先で、道は岩壁と斜面の間へ入る。
2人が並べず、左には乾いた草の斜面、右には肩より高い岩が続く。
先頭の組が戻ってきた。
「上の道、別の班が降りてる!」
前の生徒が言った。
道の先から、確認を終えた別の組が下りてくる。互いに通り抜けられる幅はない。
エリオットが笛を1回鳴らした。位置確認の合図だ。
ローディが盾を岩側へ寄せる。
カシアは後ろを振り返り、隣の班がまだ水場にいることを確かめた。
「戻る。水場の手前なら2班とも空けられる」
カシアが言った。
「この場で待つ方が距離は短い」
俺は答えた。
「後ろの班が来たら、逃げる場所がなくなる。今なら全員見えてる」
人数と退路はカシアの範囲だ。
「水場まで戻る」
俺は班同士の距離を伝え、最後尾へ回った。
2班は水場の手前まで下がった。下りてきた組が通り過ぎる。
ローディは盾が荷へ当たらないよう身体を半分ひねり、エリオットは先頭の人数を数えた。
誰もカレンを呼ばなかった。必要な事実は見えていた。
道が空いてから、同じ順番で登り直す。
狭い道を抜けると、風が変わった。
南から吹いていた風が、丘の斜面へ当たり、西から横へ流れている。
乾いた草の穂が、俺たちの進む向きと反対へ倒れた。
「笛の音、後ろへ流れる」
ローディが言う。
エリオットが前の笛を吹いた。短い音が聞こえる。
カシアが後ろの笛を鳴らすと、風に押されて音が薄くなった。
「前から後ろは届く。後ろから前は弱い」
俺は伝えた。
「見えなくなる曲がり角では、後ろの合図を1回増やす?」
エリオットが聞く。
増やせば、以前のように合図が多くなる。
ローディは首を振った。
「増やさない。聞こえない距離まで開けない。後ろからの停止は笛じゃなく、前の人の肩へ順に伝える」
「時間がかかる」
「聞き間違えるよりいい」
現在の欄には『間隔を狭める』『後方停止は前へ順に触れて伝える』と書かれた。
低い丘の手前に、黄色い杭が立っている。杭の外側には、古い足跡が残されていた。
雨の後に固まり、縁が崩れた4つの窪みが2列に並んでいる。
ノエラが古い地図を開いた。
「この印、リッジハウンドの確認域ね。昔の地図だと、もっと南東に線がある」
「今の地図では丘の東側まで入ってる」
アステラが新しい地図を重ねた。
足跡の形だけなら、別の四足獣にも似る。
黄色い杭には『5日前確認、教員記録済み』と札がある。
「ここにいたことは確認済み。今いるかは分からない」
俺は言った。
ノエラは頷いた。
「昔より活動域が変わった理由も、これだけでは分からない」
表には黄色い杭の位置だけを置く。活動域の違いと理由は裏へ回した。
カレンが坂の上から戻ってきた。
「狭い道で何を変更しましたか」
カシア、ローディ、エリオットが順に説明した。俺は2班の位置と風向きを加える。
アステラが表を見せた。
カレンは合図を増やさなかった箇所で手を止めた。
「この先も教員は各組の間を移動します。見えないことを、いないことと同じにしないように。必要なら笛を3回。必要でなければ、自分たちの範囲で進みなさい」
低い丘の北側が、今日の確認場所だった。
3つの組が同時に使うため、俺たちの2班は西の斜面を割り当てられる。
学園の屋根はもう見えない。南門から通った道も、丘の起伏に隠れている。
それでも、表には戻る道が1つだけ残っていた。
石積みの水場、狭い岩壁、黄色い杭。裏には使わなかった判断と、未確認がある。
アステラが紙を閉じ、俺へ差し出した。
「持つ?」
「ノエラが持った方がいい。新旧の地図と一緒に確認できる」
ノエラが紙を受け取り、地図入れへ挟んだ。
俺は空いた手で、丘の西側にいる2班の人数を数えた。
10人。全員いる。
先頭では、エリオットとカシアが最初の確認地点を決めていた。
俺は2人の後ろへ進んだ。
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