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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第八章 ひとりではない学び
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五つ目の皿

ご覧いただきありがとうございます!

よろしければ、この話の読み終わりにでも【ブックマークへの追加】や【★★★★★評価】をポチッと押していただけると、今後の執筆の大きなモチベーションになります!


それでは、どうぞお楽しみください。

食堂の窓際には、5つの席がある。


4人用の卓へ椅子を1つ足したため、端の席だけ脚の高さが違っていた。


俺はそこへ座り、昨日の紙を卓の中央に置いた。


まだ誰も来ていない。


表には、俺が観測台へ行く前の道と、いない間に4人が決めた道が続けて書かれている。


俺が戻った後の欄もある。途中で筆跡は変わるが、空白はなかった。


紙の裏を開く。


使わなかった道、布袋を2つ同時に運ぶ案、風向きを遠くから見た時の未確認が残っている。


食事を取りに立つ前に、エリオットが盆を持って来た。


「先にいた」


「ああ」


「紙は?」


「ここだ」


「じゃあ、スープ取ってきなよ。席は見てるから」


エリオットは俺の向かいへ座った。


紙ではなく、空いている椅子の背へ自分の上着を掛ける。


俺が食事を受け取って戻ると、ルシアスとローディも来ていた。


アステラは少し遅れて現れ、脚の高さが違う椅子を引く。


「そこは揺れる」


俺が言うと、アステラは椅子の脚の下へ折った紙片を挟んだ。


「これでいいわ」


ローディが実習の紙を裏返した。


「俺なら、布袋を置く時に板じゃなくて短い杭を2本敷いたな。板を紙に使うかもしれない」


「昨日は紙を僕が持ってたから、板は空いてたよ」


ルシアスが答える。


「なら昨日は板でいい。次に同じとは限らないって裏へ書くか」


アステラが短く記録した。


誰も、俺がいない間に動けたことを話題にしなかった。


誰も、俺が戻ったことも確かめなかった。


パンが1つ余った。エリオットが半分に割り、片方を俺の皿へ置く。


「明日、朝は走る?」


「12周だ」


「僕は6周。その後は剣を振りたい」


「僕は走る前に魔力を細くする。疲れた後だと、最初から崩れるから」


ルシアスが言う。


ローディはスープを飲んでから、首を振った。


「俺は走らない。盾の革(ひも)を締め直す」


3人は俺に必要な役割を聞いていない。


「分かった」


俺は予定帳へ、4人の朝食の時間だけを書いた。


練習の内容は、それぞれが決めている。


翌日の課題は、訓練場の南区画で行われた。


5本の支柱へ長い横木を渡し、麻布で作った狭い通路が3つ並んでいる。


班は木製の水桶を中央の台まで運び、途中に置かれた札3枚の内容を記録する。


昨日と同じ5人だ。


ただし、誰が中間報告へ行くかは、2枚目の札を開くまで分からない。


俺たちは開始前に判断範囲だけを決めた。


エリオットが前方と道、ローディが水桶と足場、ルシアスが水の動きと魔力、アステラが記録と変更条件、俺が全体の位置と範囲同士への影響を見る。


不在になる者の代わりは決めなかった。


「昨日と同じで、空いた範囲を残る4人へ分ける」


エリオットが言った。


「誰が抜けるか分からないから、その時に見えている人で決める」


「決めるための条件は?」


俺は聞いた。


「見えること、持てること、記録できること」


ローディが水桶の持ち手を上げる。


「それが足りなければ止まる。足りるなら進む」


表には、今使う中央の通路だけを書いた。


左は横木が低く、水桶を傾ける必要がある。


右は曲がり角が2つあり、前後が見えなくなる。中央は最も短いが、幅が狭い。


開始の笛が鳴った。


ローディと俺が水桶を持つ。中身は半分だが、歩くたびに水面が揺れる。


エリオットが中央通路の幅と床板を確かめ、ルシアスは水が縁へ届く動きを見る。


アステラが1枚目の札を開いた。


『水をこぼした場合、こぼした量を記録する』


今は縁まで届いていない。アステラは表へ『こぼれなし』と書いた。


中央通路へ入る。麻布の壁で、隣の通路は見えない。


横木の影に2枚目の札があった。


エリオットが札を外し、アステラへ渡す。


『中間報告者――ローディ。水桶を置いて北の受付へ行くこと』


ローディは水桶から手を離した。


「俺か」


「受け取る」


俺が片側の持ち手を両手で持つ。


重さは支えられるが、このままでは反対側が下がる。


エリオットは前方にいる。ルシアスは後ろで水面を見ている。


アステラは札と紙を持っている。


「アステラ、持てるか」


ローディが聞いた。


「短い距離なら。でも、片手では記録できない」


「紙はルシアス。水面は俺が見る」


俺が言った。


「道は?」


「僕がそのまま見る」


エリオットが答える。


ローディの範囲を4人へ分けた。


俺とアステラが水桶を持ち、エリオットが足場、ルシアスが人数と記録、俺が水面と全体の位置を見る。


「戻るまで止まる条件は、持ち手が緩むか、アステラが記録を必要とした時」


ローディが水桶の持ち手を引いて確かめる。


「それ以外は進め」


ローディは札の写しを持ち、北の受付へ向かった。


4人で水桶を持ち上げる。アステラの歩幅はローディより短い。


俺が先に合わせると、水面の揺れは小さくなった。


エリオットが中央通路の先で止まった。


「床板が1枚浮いてる。左足を置くと動く」


「右側は?」


「水桶を持った2人が並ぶ幅はない」


中央を進むなら、浮いた板をまたぐ必要がある。


アステラの歩幅では、水桶を持ったまま越えると片側が下がる。


俺ならアステラから水桶を受け取り、1人で板を越える。その後、別の者へ渡せる。


だが、ローディがいない間に片側を持てる者は、俺しかいない。


俺が両側を持てば、全体の位置と水面を同時に見る範囲が狭くなる。


「左へ戻る」


エリオットが言った。


「横木は低いけど、入口まで戻れば水桶を置いて通し方を変えられる」


「距離は増える」


俺は答えた。


「増える。でも、床板を越えるより、確認できる」


道の担当はエリオットだ。


「左へ戻る」


俺たちは入口まで下がり、水桶を台へ置いた。


ルシアスが『中央――床板1枚浮き、現在は使わない』と表へ書く。


最短の中央通路は裏へ移った。


左の通路は横木が胸の高さにある。水桶を持ったままでは通せない。


「持ち手へ短い縄を通す」


俺は備品の縄を取った。


「片側ずつ引けば、桶を低く保てる」


「水面はどうなる?」


ルシアスが聞く。


「引き始めに揺れる。弱く引いて、横木の下だけ一定にする」


「僕が揺れを言う。止めるのは1回だけ」


アステラは水桶を持たず、記録へ戻った。


俺とエリオットが縄を持ち、ルシアスが横から水面を見る。


ローディの持っていた運搬範囲を、ローディと同じ方法では埋めていない。


1回目は、俺が強く引きすぎた。水が縁へ当たり、少量が床へ落ちる。


「止めて」


ルシアスが言った。


俺は縄を止めた。


アステラが濡れた範囲を指2本分と記録する。


失敗を消さず、引く強さだけを下げた。


2回目で水桶は横木の下を通った。


3枚目の札は、左通路の出口にあった。


『中央の台は使用不可。西の低い台へ変更』


エリオットが西の道を確認する。


アステラが現在の目的地を書き替え、ルシアスは水桶を置く時の揺れを見る。


俺は4人と、北の受付にいるローディの位置を伝えた。


西の低い台へ着く前に、ローディが戻った。


「どこまで行った?」


「左通路を抜けた。水は少しこぼした」


俺が答える。


ローディは水桶の縄を見る。


「俺なら縄じゃなく、盾を下に滑らせた」


「盾は受付まで持っていっただろ」


エリオットが言う。


「ああ。だから俺がいない間は使えないな」


ローディは縄の結び目を引いた。


「これは緩んでない。今のまま運ぶ」


戻ったローディは、自分なら選んだ方法へ変えなかった。


俺が水桶の片側を渡すと、ローディは受け取る。


5人で西の台まで運び、制限時間を14秒残して課題を終えた。


カレンは紙の表を確認した。


中央の通路、左への変更、縄で低く通した方法、西の台。


途中からルシアスの字になり、ローディが戻った後はアステラの字へ戻っている。


「不在でも進める範囲は、誰のために作りましたか」


誰もすぐには答えなかった。


昨日は俺がいなかった。今日はローディがいなかった。


「班のためだ」


俺が答える。


カレンは(うなず)き、次の班へ向かった。


実習後、俺は縄をほどき、水桶を返却台へ運んだ。


ローディは盾を戻し、ルシアスが濡れた床を拭く。


エリオットとアステラは札を順番どおり重ねた。


作業が終わった時、他の4人は先に入口へ集まっていた。


「遅いよ、レオン」


エリオットが言った。


「縄を元の長さへ戻していた」


「それは見れば分かる。食堂、席が埋まる」


俺がいなくても、4人だけで返却の分担はできる。


昨日も、俺がいないまま紙は進んだ。


それでも4人は、入口で止まっていた。


必要な事実が足りないわけではない。俺の判断を待っているわけでもない。


「先に行ってもいい」


俺が言うと、ローディが首を振った。


「一緒に行くって決めただろ」


いつ決めたのかは聞かなかった。


5人で食堂へ向かう。窓際の卓には、脚の高さが違う椅子が1つある。


アステラが昨日挟んだ紙片は、そのまま残っていた。


俺はその椅子を引いて座った。


翌週から始まる郊外実習の注意書きが、食堂の掲示板へ貼られている。


南門から低い丘まで歩き、複数の班が同じ区画を使う。


乾いた草、風向き、狭い退路を各班で確認すること。


エリオットが掲示板を見て言った。


「次も、同じ班になるところは一緒に組もう」


「役割が足りないのか」


「足りるかどうかは、班が決まってから見る」


ルシアスが笑った。


「今は食べる人が1人足りない」


俺の前に、5つ目の皿が置かれた。


紙を開く前に、俺はパンを取った。

お読みいただきありがとうございました!

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感想や「ここが良かった」といったご意見もお待ちしております。

それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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