俺の字の答え
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それでは、どうぞお楽しみください。
夕食の卓で、ローディは折った紙を皿の横へ置いた。
表には、実習で使った3つの道と停止条件だけが残っている。
裏を開けば、使わなかった案と名前が並んでいた。
俺の案が4つ、エリオットが1つ、ルシアスとローディが2つずつ。
「これ、明日も持っていく?」
ルシアスが聞いた。
「ああ。別の課題でも使えるか試す」
ローディは答え、紙を俺へ差し出した。
「レオンが持つか?」
「俺でいいのか」
「一番早く来るだろ」
俺は紙を受け取った。
頼まれたのは、判断することではなく、教室まで運ぶことだった。
翌朝、外周の確認項目は増やさなかった。
見落とした色杭と、修正が遅れた左足だけを予定帳へ残し、水滴と足音は前の数へ戻した。
12周を終えた後、折った紙が汗で濡れていないことを確かめてから食堂へ向かう。
3人は窓際にいた。昨日より早く着いたため、朝食はまだ運ばれていない。
「今日は同じだね」
エリオットが言った。
「何がだ」
「4人とも、食べ始める前にいる」
必要な条件ではない。俺は返事をせず、運ばれてきた皿を自分の前へ置いた。
最初の授業では、郊外実習で使う訓練用の携行品を選ぶことになった。
教室の後ろには、長さの違う縄、布、水袋、木製の添え木、包帯、方位板、地図入れ、火床を覆う蓋、小型のシャベル、予備の杭、笛が並べられている。
実物と同じ重さになるよう、中身を入れた訓練用の道具だ。
カレンは空の背負い袋を各班へ1つずつ配った。
「持てる重さには上限があります。すべては入りません。班の役割と、配られた経路条件から選びなさい」
俺たちの班は、俺、エリオット、カシア、ノエラ、レイナだった。
ローディから預かった紙を広げる。
前の課題で使った『前方と道』『運搬と足場』『魔力と水桶』のままでは、携行品を選ぶ範囲に合わない。
エリオットが表を指でなぞった。
「前方と道は使える。僕が見る」
「人と移動もいる」
カシアが続けた。
「負傷と搬送は私が持ちます」
レイナは包帯と添え木の前へ立った。
ノエラは配られた経路図を開く。
「記録と現在の道名。古い地図が混ざっているなら分けたい」
4つ決まった。
残る1つには、道具の重さ、全員の位置、役割同士へ出る影響を入れた。俺が持つ。
アステラはいない。5人で範囲の言葉を決め、表の上へ自分たちで書いた。
配られた経路条件は6つある。南門から低い丘まで歩く。
道の両側には乾いた草が多い。途中に幅の狭い退路が1か所ある。
風向きは変わりやすい。水場は到着地点にあるが、途中にはない。
教員は複数の班を同時に確認する。
「水は必要だ」
俺は大きな水袋を取った。
「途中に水場がない。火が出た場合にも使える」
「飲む分と、他に使う分を同じ袋にするの?」
カシアが聞く。
「分けるなら小さい水袋2つになる。重さは少し増える」
「増えても分けたい。1人が遅れた時に、水まで一緒に離れたら困る」
カシアは大きな袋を戻し、小さい袋を2つ並べた。
俺は重さを確かめる。袋自体の分だけ、小さい2つの方が重い。
だが、2人に分ければ水の位置も分かれる。
「重さは上限の4分の1を使う」
「それも表に書いて」
ノエラが言った。
俺は『水袋2つ――別の者が持つ』と表へ書いた。
レイナは包帯2巻、添え木2本、三角に折った厚布を選んだ。
「添え木は1本で足りる」
俺が言うと、レイナは長さの違う2本を見せた。
「腕と脚で使う長さが違います。脚用だけを持って、腕を傷めた人に合わせると固定しにくいです」
「厚布を折れば長さを調整できる」
「できます。でも、その布は固定以外にも使えます。止血と保温に残したいです」
すべて持てば重くなる。俺なら包帯1巻、長い添え木1本、厚布1枚を選ぶ。
包帯は分けて使え、長い添え木は短く持つ位置を変えられる。
レイナは違う。
「負傷と搬送の範囲は私が決めてよいですか」
昨日までに作った紙では、担当範囲の者が変更を決める。
「いい」
俺は表へ、レイナが選んだ5つを書いた。
自分なら減らす物も、そのまま現在の欄へ置いた。
ノエラは新しい経路図、12年前の地図、白紙の記録紙を1枚ずつ選ぶ。
「古い地図は必要か」
「新しい図に書いていない脇道がある。でも、今も使えるかは分からない。使う道ではなく、確認する候補として持つ」
「裏へ書けばいい」
エリオットが紙を裏返した。
ノエラは古い地図にある2本の脇道を『後で確かめる』へ記した。
実物の地図は薄く、重さはほとんど変わらないため、袋へ入れる。
「縄は長い方を1本」
俺は道具の列から太い縄を取った。
「狭い退路で前後を繋げられる。荷を引ける。足場が崩れた場合にも使える」
エリオットが縄を持ち上げた。
「これだけで、添え木2本分より重いよ」
「用途は多い」
「道の条件には崖も急斜面もない。狭い退路はあるけど、縄で全員を繋ぐと、前が止まった時に後ろも止まる」
「離れない利点がある」
「離れたら笛で止める。僕は短い縄を1本でいいと思う」
短い縄では、5人を繋げない。荷を引く場合も届く範囲が減る。
「長い方を持てば、短くも使える」
「使わない分まで持つことになる」
エリオットは太い縄を元へ戻し、細い縄を取った。
前方と道の担当はエリオットだ。
俺は長い縄を使う条件と、短い縄で足りる条件を伝えた。
今の経路では、エリオットは短い縄を選んだ。
表へ書く手が止まった。
長い縄は、危険が増えた場合に使える。
教員が複数班を見ているなら、すぐ助けが来ない時間もある。
持っていない道具は、条件が変わった後で表へ戻せない。
「レオン?」
カシアに呼ばれた。
「重さを計算している」
「縄のところ、まだ空いてるよ」
俺は『短い縄1本――道の補助』と書いた。
長い縄は裏へ回し、『崩れた足場、長い距離の牽引がある場合』と条件を添えた。
自分の考えた道具を、自分の手で現在の欄から外した。
残る重さで、笛2つ、火床を覆う蓋、小型のシャベル、予備の杭のどれを入れるか決める。
乾いた草と変わりやすい風を考えれば、火床の蓋とシャベルは必要だ。
だが、今回の条件には火を使うとは書かれていない。
「笛は2つ欲しい」
カシアが言った。
「前と後ろ。列が曲がって見えなくなっても止められる」
「1つでも、中央なら届く」
「誰が中央にいるか、ずっと同じとは限らないよ」
エリオットが経路図を指した。
「狭いところでは縦に長くなる。前後に分けよう」
笛2つが表へ入った。
ノエラは火床の蓋を選ぶ。
「火を使わなくても、他の班が使う可能性はある。乾いた草へ火の粉が移った時、上から覆える」
「シャベルなら土をかけられる」
俺は答えた。
「土を掘る時間がいる。蓋なら置くだけ」
「火床より広がれば蓋では足りない」
「広がった後はそうね。でも、広がる前に使う道具を1つ入れたい」
ノエラは蓋を持ったまま、俺を見る。
記録と現在の条件を扱う範囲はノエラだ。
乾いた草と風向きから、火床の蓋を選んだ。
「蓋を入れる」
俺は表へ書いた。
袋を秤へ載せると、上限まであとわずかだった。シャベルと長い縄は入らない。
予備の杭も全部は入らず、2本だけを選んだ。
表には、俺が最初に選ばなかった物が多い。小さい水袋2つ。
長さの違う添え木2本。短い縄。笛2つ。火床の蓋。
それでも、文字はすべて俺の字だった。
カレンが変更条件の札を配った。
『班員1人が右腕を使えない』『狭い退路で前後が互いに見えない』『到着地点の水場は使用できる』『火は使用しない』。
レイナは短い添え木と包帯を、右腕を使えない者へ使うと決めた。
長い添え木は袋に残す。
カシアは水袋を前後へ1つずつ分け、エリオットは先頭と最後尾が笛を持つようにした。
火床の蓋は使わない。ノエラは表から外し、裏の『後で確かめる』へ移した。
空いた重さへ何を戻すかを決める。
俺は長い縄を考えた。腕を使えない者の荷を引く場合、短い縄より扱いやすい。
だが、レイナは厚布をもう1枚選んだ。
「腕を固定した後、背負い袋の紐が当たらないよう肩へ挟みます」
「荷は他の者が持てる」
「持てます。でも、本人が歩けて、軽い物を持てるなら、全部を取り上げない方が姿勢を保ちやすいです」
カシアも頷いた。
「遅れたら私が持つ。最初から持てないと決めなくていい」
俺なら荷をすべて3人へ分ける。
片腕が使えなくても歩けるなら、本人の速さを落とさず、手を空けた方が転倒時に支えやすい。
レイナの判断は違う。
「現在の欄へ厚布を追加します」
レイナが言った。
俺は紙の表へ『厚布1枚――肩と固定具の間』と書いた。長い縄は裏に残した。
次の札が渡される。
『先頭が道名を読み違えた』『古い地図の脇道は現在も通行可能』『班は分かれずに進む』。
ノエラが裏に書いた脇道を確認し、新しい経路図と重ねた。
道名は異なるが、曲がり方と水路の位置が一致している。
「脇道を現在へ戻す。元の道より短いけど、入口の幅は未確認」
「僕が先に入口だけ見る。全員はここで待つ」
エリオットが決めた。
カシアは待機する4人の位置を水場の近くへ移す。
レイナは右腕を固定した者を列の中央へ置く。
俺は脇道へ進んだ場合の全体の距離、先行するエリオットと残る4人の位置、笛が届く範囲を伝えた。
裏にあったノエラの案が、表へ移った。
俺の長い縄は移らなかった。
班は制限時間内に道具の選択と変更報告を終えた。
カレンは袋の中身を1つずつ出し、表の記録と照らし合わせる。
「誰がこの組み合わせを決めましたか」
「5人です」
ノエラが答えた。
「水はカシア、負傷者用の道具はレイナ、道と縄はエリオット、地図と蓋は私が決めました。全体の重さと影響はレオンが見ています」
「表を書いたのは?」
「俺です」
カレンは紙を俺へ返した。
「書いた判断は、すべてあなたの判断ですか」
「違う」
俺の字で、小さい水袋2つ、短い縄、添え木2本、笛2つ、厚布が書かれている。
自分なら別の物を選んだ箇所もある。
「では、この表は誰の答えですか」
俺は5つの範囲と、その横にある名前を見た。
「班の答えだ」
教室を出る前に、紙をローディへ返した。ローディは表を読み、裏を開く。
「長い縄は使わなかったのか」
「条件に合わないとエリオットが決めた」
「レオンは?」
「俺なら持った」
「じゃあ、違うまま残ったんだな」
ローディはそれだけ言い、紙を折った。
表に見えるのは俺の字だ。だが、そこに残っている判断の多くは俺のものではない。
俺は予定帳を開き、長い縄の条件を書き足そうとした。
すでに紙の裏へ、俺の名前と一緒に残っている。
予定帳の空欄には何も書かず、表に使われた5人の名前だけを写した。
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