止まった判断
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それでは、どうぞお楽しみください。
翌朝、俺は4人分の役割を紙へ書き終えてから、3人が起きるのを待った。
エリオットは前方の道。ルシアスは記録と標識。ローディは荷と停止。
俺は全体の確認と変更判断。
昨日までと同じ並びだ。
違うのは、それぞれの下に「自分で変えてよい範囲」を書いたことだった。
エリオットは見える範囲の迂回。ルシアスは標識の位置と記録順。
ローディは荷の持ち方と停止場所。
危険が増えた場合、目的を変える場合、2つ以上の役割が重なる場合は俺へ戻す。
「もうできてる」
起きてきたルシアスが紙を覗いた。
「昨日のうちに考えた。足りない条件も足した」
「僕たちが起きる前に?」
「書いてから確認した方が早い」
エリオットは水差しから杯へ水を注ぎ、紙を上から読んだ。
「僕が別の道を見つけて、ローディが荷を運べそうだと言ったら?」
「2つの役割が重なる。俺へ戻してくれ」
「レオンが近くにいなかったら?」
俺は紙の最後を指した。
「その場で止まる。俺が戻るまで、荷は動かさない」
危険なまま進むより、止まった方がいい。3人も反対はしなかった。
野外基礎の区画には、高い木壁の間へ灰色の麻布が張られていた。
入口から見える道は1本だけで、奥で3つへ分かれている。
壁の向こうでは別の班が準備をしているらしく、木箱を置く音と短い声が重なっていた。
カレン・フェルは入口へ大きな白い板を立てた。
板には区画の形と、3つの確認地点が描かれている。
「青い箱を奥の台へ運び、途中の確認地点3か所へ木札を置きなさい。赤い旗の道は使えません。白い旗が上がった場合、班の代表者1人が入口へ戻り、途中経過を報告してください」
「代表者が戻っている間も、作業は続けていいんですか」
俺が聞くと、カレンは頷いた。
「続けても、止めても構いません。ただし、誰が何を判断するかは開始前に決めなさい」
俺たちは白い板の前へ集まった。中央の道が最短で、左右は曲がり角が多い。
青い箱は2人で持てる大きさだが、蓋の上に小さな木球が4個置かれている。
傾けずに運ぶ必要がある。
「エリオットは先に中央を確認。ルシアスは3つの地点へ札を置いて、通った道を記録する。ローディは俺と箱を持つ」
「代表はレオン?」
「俺が途中の位置を全部見ている。報告も早い」
白い旗が上がった場合、俺は入口へ戻る。
それまでの間、3人は各自の役割を続けられる。
道の変更と箱の移動が重なった場合だけ止まる。
紙に書いた条件を読み上げ、3人の返事を確認した。
開始の笛が鳴った。
エリオットが中央へ進み、最初の角で右手を上げた。道の端に青い杭がある。
ルシアスが木札を置き、帳面へ入口からの歩数を書く。
俺とローディは青い箱を持ち上げた。木球は動かない。
中央の道は箱を通せる幅があり、足元も乾いていた。
2つ目の確認地点は、左の脇道にあった。
ルシアスが札を置きに向かい、エリオットは中央の先を見に行く。
俺は3人の位置と戻れる道を順に置き直した。
麻布の向こうは見えず、聞こえる足音も別の班のものと混じっている。
「中央は通れる。奥で少し狭くなるけど、箱も入ると思う」
戻ってきたエリオットが報告した。
「思う、じゃなくて幅を見たい。箱の横より広いか」
「両側に手の幅1つずつある」
「通る。ローディ、右を少し上げる」
箱を進める。狭い場所を抜けたところで、頭上に白い旗が上がった。
俺たちは箱を地面へ置いた。
木球が動かないことを確かめ、俺は入口までの道を振り返る。
「報告へ戻る。エリオットは3つ目の地点を探していい。ルシアスは2つ目までの記録を続ける。ローディは箱をここで守る」
「道が変わったら?」
ローディが聞いた。
「箱は動かさず止まる。俺が戻るまで待ってくれ」
俺は入口へ走った。
曲がり角ごとに見えている生徒を避け、置かれた札を踏まないよう進む。
走行を使えば、往復に長い時間はかからない。
入口ではカレンが記録板を持っていた。
「確認地点2か所。青い箱は中央の狭路を抜けた位置です。全員に負傷なし。木球4個。退路は中央を戻れます」
「未確認は?」
「3つ目の地点と、中央奥から台までの道です」
答えた時、区画の中で鐘が鳴った。短い音が2回。道の条件が変わった合図だ。
俺はすぐに向きを変えた。
中央の道を戻る途中で、赤い旗が見えた。箱を置いた場所と入口の間ではない。
箱から奥の台へ進む道が通行禁止になっている。
角を曲がると、エリオット、ルシアス、ローディは箱の周りに集まっていた。
エリオットの後ろには左へ入る細道があり、ルシアスの足元には3つ目の確認地点を示す青い杭がある。
ローディは箱の取っ手を握らず、赤い旗を見ていた。
「どこまで確認した」
「左は台まで続いてる」
エリオットが答えた。
「途中に低い板があるけど、箱は越えられると思う。ローディにも見てもらった」
「幅はある。だが、板の向こうが少し下がってる」
「3つ目の札は置いたよ。左へ回るなら、記録の線も変える」
ルシアスの帳面には、新しい道の入口まで線が引かれていた。
「なら、左へ変える。エリオットが先、ルシアスは後ろ。俺とローディで箱を持つ」
3人が動き出す。箱を細道へ入れ、低い板の前で一度止めた。
俺が板の向こうへ回り、地面の傾きを確かめる。
ローディが箱の前を上げ、木球を転がさずに越えた。
奥の台へ箱を置いた時、終了の鐘が鳴った。
制限時間を示す砂時計は、すでに最後の線を越えていた。
カレンは3つの木札と箱の状態を確かめた。
木球は4個とも残り、通行禁止の道にも入っていない。
「課題の内容は達成しています。時間は47秒超過です」
俺は赤い旗から左の細道までの距離を見た。
俺が戻ってすぐ動いたなら、47秒もかかっていない。
「白い旗の報告から戻るのが遅れました」
「戻るまで、3人は何をしていましたか」
エリオットが左の道を指した。
「道を見つけて、ローディと幅を確認しました」
「札を置いて、変更した場合の線を途中まで書きました」
ルシアスが帳面を見せる。
「箱は動かさなかった。レオンが戻るまで止まると決めていたからな」
ローディの答えを聞き、俺は紙を開いた。2つ以上の役割が重なる場合は俺へ戻す。
俺がいない場合は止まる。3人は決めた通りに動いている。
「条件は守れています」
「そうですね」
カレンは否定しなかった。
「道を見つけた人、箱が通ると確認した人、記録を変更できる人が揃っていました。それでも、箱を動かす判断はここにありませんでした」
彼女の指が、俺の名前の上で止まった。
「止まったのは間違いではありません。持っていない情報で進まなかったのですから。ただ、なぜ3人が判断に必要な情報を持っていて、判断だけを持っていなかったのかは考えなさい」
俺は紙の3つの欄を見た。エリオットは道を見つけた。
ローディは箱が通る幅を確かめた。
ルシアスは札を置き、記録を変える準備をしていた。
俺が戻ったあとに見たものは、3人が先に見ていたものと同じだった。
放課後、寮の机へ紙を置いた。
遅れた47秒を縮めるなら、入口までの戻り方を変えるか、報告を短くすればいい。
けれど、カレンが指したのはそこではなかった。
「2つ以上の役割が重なる場合は、レオンへ戻す」
その行の下に、ルシアスの文字が増えていた。
「レオンがいない場合は、止まる」
エリオットが食堂へ行こうと声をかけた。
ローディは壁へ盾を立て、ルシアスは帳面を閉じる。
俺は2本の線が引かれた紙を畳んだ。3人は間違えずに止まった。
それなのに、俺が戻るまで箱は動かなかった。
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