↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第八章 ひとりではない学び
PR
230/265

止まった判断

ご覧いただきありがとうございます!

よろしければ、この話の読み終わりにでも【ブックマークへの追加】や【★★★★★評価】をポチッと押していただけると、今後の執筆の大きなモチベーションになります!


それでは、どうぞお楽しみください。

翌朝、俺は4人分の役割を紙へ書き終えてから、3人が起きるのを待った。


エリオットは前方の道。ルシアスは記録と標識。ローディは荷と停止。


俺は全体の確認と変更判断。


昨日までと同じ並びだ。


違うのは、それぞれの下に「自分で変えてよい範囲」を書いたことだった。


エリオットは見える範囲の迂回(うかい)。ルシアスは標識の位置と記録順。


ローディは荷の持ち方と停止場所。


危険が増えた場合、目的を変える場合、2つ以上の役割が重なる場合は俺へ戻す。


「もうできてる」


起きてきたルシアスが紙を(のぞ)いた。


「昨日のうちに考えた。足りない条件も足した」


「僕たちが起きる前に?」


「書いてから確認した方が早い」


エリオットは水差しから杯へ水を注ぎ、紙を上から読んだ。


「僕が別の道を見つけて、ローディが荷を運べそうだと言ったら?」


「2つの役割が重なる。俺へ戻してくれ」


「レオンが近くにいなかったら?」


俺は紙の最後を指した。


「その場で止まる。俺が戻るまで、荷は動かさない」


危険なまま進むより、止まった方がいい。3人も反対はしなかった。


野外基礎の区画には、高い木壁の間へ灰色の麻布が張られていた。


入口から見える道は1本だけで、奥で3つへ分かれている。


壁の向こうでは別の班が準備をしているらしく、木箱を置く音と短い声が重なっていた。


カレン・フェルは入口へ大きな白い板を立てた。


板には区画の形と、3つの確認地点が描かれている。


「青い箱を奥の台へ運び、途中の確認地点3か所へ木札を置きなさい。赤い旗の道は使えません。白い旗が上がった場合、班の代表者1人が入口へ戻り、途中経過を報告してください」


「代表者が戻っている間も、作業は続けていいんですか」


俺が聞くと、カレンは(うなず)いた。


「続けても、止めても構いません。ただし、誰が何を判断するかは開始前に決めなさい」


俺たちは白い板の前へ集まった。中央の道が最短で、左右は曲がり角が多い。


青い箱は2人で持てる大きさだが、蓋の上に小さな木球が4個置かれている。


傾けずに運ぶ必要がある。


「エリオットは先に中央を確認。ルシアスは3つの地点へ札を置いて、通った道を記録する。ローディは俺と箱を持つ」


「代表はレオン?」


「俺が途中の位置を全部見ている。報告も早い」


白い旗が上がった場合、俺は入口へ戻る。


それまでの間、3人は各自の役割を続けられる。


道の変更と箱の移動が重なった場合だけ止まる。


紙に書いた条件を読み上げ、3人の返事を確認した。


開始の笛が鳴った。


エリオットが中央へ進み、最初の角で右手を上げた。道の端に青い杭がある。


ルシアスが木札を置き、帳面へ入口からの歩数を書く。


俺とローディは青い箱を持ち上げた。木球は動かない。


中央の道は箱を通せる幅があり、足元も乾いていた。


2つ目の確認地点は、左の脇道にあった。


ルシアスが札を置きに向かい、エリオットは中央の先を見に行く。


俺は3人の位置と戻れる道を順に置き直した。


麻布の向こうは見えず、聞こえる足音も別の班のものと混じっている。


「中央は通れる。奥で少し狭くなるけど、箱も入ると思う」


戻ってきたエリオットが報告した。


「思う、じゃなくて幅を見たい。箱の横より広いか」


「両側に手の幅1つずつある」


「通る。ローディ、右を少し上げる」


箱を進める。狭い場所を抜けたところで、頭上に白い旗が上がった。


俺たちは箱を地面へ置いた。


木球が動かないことを確かめ、俺は入口までの道を振り返る。


「報告へ戻る。エリオットは3つ目の地点を探していい。ルシアスは2つ目までの記録を続ける。ローディは箱をここで守る」


「道が変わったら?」


ローディが聞いた。


「箱は動かさず止まる。俺が戻るまで待ってくれ」


俺は入口へ走った。


曲がり角ごとに見えている生徒を避け、置かれた札を踏まないよう進む。


走行(そうこう)を使えば、往復に長い時間はかからない。


入口ではカレンが記録板を持っていた。


「確認地点2か所。青い箱は中央の狭路を抜けた位置です。全員に負傷なし。木球4個。退路は中央を戻れます」


「未確認は?」


「3つ目の地点と、中央奥から台までの道です」


答えた時、区画の中で鐘が鳴った。短い音が2回。道の条件が変わった合図だ。


俺はすぐに向きを変えた。


中央の道を戻る途中で、赤い旗が見えた。箱を置いた場所と入口の間ではない。


箱から奥の台へ進む道が通行禁止になっている。


角を曲がると、エリオット、ルシアス、ローディは箱の周りに集まっていた。


エリオットの後ろには左へ入る細道があり、ルシアスの足元には3つ目の確認地点を示す青い杭がある。


ローディは箱の取っ手を握らず、赤い旗を見ていた。


「どこまで確認した」


「左は台まで続いてる」


エリオットが答えた。


「途中に低い板があるけど、箱は越えられると思う。ローディにも見てもらった」


「幅はある。だが、板の向こうが少し下がってる」


「3つ目の札は置いたよ。左へ回るなら、記録の線も変える」


ルシアスの帳面には、新しい道の入口まで線が引かれていた。


「なら、左へ変える。エリオットが先、ルシアスは後ろ。俺とローディで箱を持つ」


3人が動き出す。箱を細道へ入れ、低い板の前で一度止めた。


俺が板の向こうへ回り、地面の傾きを確かめる。


ローディが箱の前を上げ、木球を転がさずに越えた。


奥の台へ箱を置いた時、終了の鐘が鳴った。


制限時間を示す砂時計は、すでに最後の線を越えていた。


カレンは3つの木札と箱の状態を確かめた。


木球は4個とも残り、通行禁止の道にも入っていない。


「課題の内容は達成しています。時間は47秒超過です」


俺は赤い旗から左の細道までの距離を見た。


俺が戻ってすぐ動いたなら、47秒もかかっていない。


「白い旗の報告から戻るのが遅れました」


「戻るまで、3人は何をしていましたか」


エリオットが左の道を指した。


「道を見つけて、ローディと幅を確認しました」


「札を置いて、変更した場合の線を途中まで書きました」


ルシアスが帳面を見せる。


「箱は動かさなかった。レオンが戻るまで止まると決めていたからな」


ローディの答えを聞き、俺は紙を開いた。2つ以上の役割が重なる場合は俺へ戻す。


俺がいない場合は止まる。3人は決めた通りに動いている。


「条件は守れています」


「そうですね」


カレンは否定しなかった。


「道を見つけた人、箱が通ると確認した人、記録を変更できる人が(そろ)っていました。それでも、箱を動かす判断はここにありませんでした」


彼女の指が、俺の名前の上で止まった。


「止まったのは間違いではありません。持っていない情報で進まなかったのですから。ただ、なぜ3人が判断に必要な情報を持っていて、判断だけを持っていなかったのかは考えなさい」


俺は紙の3つの欄を見た。エリオットは道を見つけた。


ローディは箱が通る幅を確かめた。


ルシアスは札を置き、記録を変える準備をしていた。


俺が戻ったあとに見たものは、3人が先に見ていたものと同じだった。


放課後、寮の机へ紙を置いた。


遅れた47秒を縮めるなら、入口までの戻り方を変えるか、報告を短くすればいい。


けれど、カレンが指したのはそこではなかった。


「2つ以上の役割が重なる場合は、レオンへ戻す」


その行の下に、ルシアスの文字が増えていた。


「レオンがいない場合は、止まる」


エリオットが食堂へ行こうと声をかけた。


ローディは壁へ盾を立て、ルシアスは帳面を閉じる。


俺は2本の線が引かれた紙を畳んだ。3人は間違えずに止まった。


それなのに、俺が戻るまで箱は動かなかった。

お読みいただきありがとうございました!

「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、画面の下(または目次ページなど)にある**【ブックマーク登録】と、【★★★★★評価】**で応援していただけると本当に嬉しいです!


感想や「ここが良かった」といったご意見もお待ちしております。

それでは、次回の更新でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。