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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第八章 ひとりではない学び
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書いていないこと

ご覧いただきありがとうございます!

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それでは、どうぞお楽しみください。

救助基礎から寮へ戻ると、俺は共有票を机へ並べた。レイナの状態確認、カシアの人物観察、アステラの記録、ノエラの古い言葉。その横へ、エリオットの剣、ルシアスの魔力放出、ローディの盾と書き足す。


誰へ何を任せるか分かっていれば、班が変わっても迷う時間を減らせる。俺は別の紙を開き、明日の授業後に確かめる順番を決めた。


「エリオットに剣を見てもらう。次にルシアスの放出を俺が止める。ローディとは盾の後ろから合図を出す練習をする」


窓際で剣帯を外していたエリオットが、こちらを見た。


「明日?」


「授業が終わったあと。剣は30分。魔法は量を決めて5回。盾は廊下ではできないから訓練場を借りる」


「僕、明日は資料室へ本を返しに行くよ」


ルシアスも棚へ本を置きながら言った。


「僕は筆記具を買い足したい。店が閉まる前に行くつもりだった」


ローディは寝台の脇に立てた盾の革紐を持ち上げた。表面が白く乾き、金具の近くに細いひびが入っている。


「俺はこれを手入れする。今すぐ切れるほどじゃないけど、訓練で使う前には終わらせたい」


3人の予定は、俺の紙のどこにもなかった。


「なら、順番を変える。エリオットは朝。ルシアスは買い物のあと。ローディの盾は、革紐を直してからにする」


「朝なら空いているとは言ってないよ」


エリオットが笑う。俺は筆を止めた。


「空いてないのか」


「朝食前は自分の訓練をする。君と剣を合わせるなら、その内容も変わる」


「先に聞けばいいだろ」


ローディが革紐を引きながら言った。


「誰に何を任せるかは書いてある。でも、いつならできるかは聞いてない」


「必要な時間と回数は決めた」


「僕たちに必要かは?」


ルシアスの問いに、すぐ答えられなかった。エリオットなら剣の練習を断らないと思った。ルシアスは放出を止める練習が必要で、ローディとは合図を確かめた方がいい。どれも間違ってはいないはずだった。


ただ、3人が明日何をしたいかは、一度も聞いていない。


夕食の鐘が鳴り、ローディが盾の革紐を寝台へ置いた。


「先に飯にしよう。今日は早く行かないと、窓際が埋まる」


「窓際がいいのか」


「出入口と配膳台が見える。あと、4人で座れる机がある」


食堂へ着くと、ローディは壁際の長机ではなく、窓の近くにある小さな机へ向かった。椅子は4脚あり、1脚だけ少し脚が短い。座ると揺れたが、ローディが折った紙を挟むと止まった。


「寝台だけじゃなく、椅子も見るんだな」


「揺れるものは気になる」


俺たちはそれぞれ食事を受け取った。今日の皿には豆と根菜の煮込み、黒パン、薄い肉が載っている。ルシアスは煮込みに入った香草を端へ寄せ、ローディはそれを見て自分の空いた皿を差し出した。


「食わないならくれ」


「香りが強いものは苦手なんだ」


「昨日も残してたな」


「見ていたなら、昨日言ってくれればよかったのに」


「今日も残すか分からなかった」


ローディは香草を受け取り、自分の肉を1切れ返した。ルシアスは断ろうとしたが、ローディはもう食べ始めている。


向かいでは、エリオットが黒パンを煮込みへ浸していた。


「硬いまま食べないのか」


「朝ならそのまま食べる。夜は顎が疲れてるから浸す」


「剣の訓練で?」


「授業中もずっと喋っていたからじゃない?」


ルシアスが言うと、エリオットは否定しなかった。剣の間合い、魔力の量、盾の正面。共有票に書かれたことは、3人ができることの一部だった。食べ方も予定も苦手な匂いも、そこには書かれていない。


食事を終え、俺は4人分の皿を重ねた。持てる量だったのでそのまま配膳台へ運ぼうとすると、上から1枚ずつ皿が減った。


エリオットが自分の皿を持ち、ルシアスも続く。最後にローディが残った2枚のうち1枚を取った。


「俺が運べる」


「知ってるよ」


エリオットは先に歩き出した。


「でも、自分の皿くらい自分で戻せる」


部屋へ戻ると、俺は机の紙を開き直した。剣、魔力放出、盾と並べた項目は消さず、その横へ3人の予定を書く。エリオットは朝に自分の訓練。ルシアスは放課後に買い物。ローディは盾の手入れ。


「空いている時間は?」


今度は、書く前に聞いた。


エリオットは少し考える。


「本を返したあとなら剣を見られる。でも、30分ずっと君の練習にはしない。僕も試したい動きがある」


「分かった。交代でやる」


「僕は買い物に付き合ってくれるなら、その帰りでいいよ」


ルシアスが言った。


「筆記具を買うだけじゃないのか」


「店の場所は分かる。でも、同じ値段でも紙の厚さが違うらしい。レオンは帳面をたくさん使っているから、見てほしい」


「なら行く」


ローディは新しい革紐を盾へ通しながら、口で端を引いた。


「俺はこれが終わったらだ。合図の練習より先に、後ろから声をかけられたときの向き方を見たい」


「盾の横と後ろが見にくいから?」


「それもある。お前、足が速いから、声を出す前に横へ来るだろ。あれは困る」


俺は紙へ書こうとして、やめた。


「どこから声をかければいい」


「それを一緒に試すんだよ」


ローディが笑った。


消灯前、机の端には洗った木の杯が4つ並んだ。ローディが棚へ移し、同じ間隔で置いていく。俺の杯だけ縁に小さな欠けがあった。


「それ、俺のか」


「昨日から使ってるだろ。場所を決めた方が取り違えない」


右からエリオット、ルシアス、ローディ、俺。役割ではなく、4人分の場所だった。


俺は予定を書いた紙を閉じず、机の中央へ置いた。

お読みいただきありがとうございました!

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それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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