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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第八章 ひとりではない学び
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任せる手

ご覧いただきありがとうございます!

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それでは、どうぞお楽しみください。

翌日の魔法基礎では、ルシアスとローディと同じ班になった。


課題は、水槽の水を溝のある板へ流し、3つの容器へ基準線を越えない量で分けること。開始前に役割を決め、変更した場合は理由を記録する。


《水弾》や《水鞭》なら、形を作って放つまでの工程は決めてある。だが、分かれ続ける流れを3つとも調整するのは別の操作だった。


「俺が《水操作》を使う」


紙を読み終えてすぐ言うと、ルシアスが板を横から見た。


「全部?」


「水を動かす課題だから」


「右の溝が深い。強く流すと、分かれたあとで右へ寄るよ」


ローディは空の容器を持ち上げた。


「俺は魔法で動かせない。容器を押さえる役か?」


「流れている間に位置を変えていいかは確認する必要がある」


ルシアスが水槽へ手を向けた。水面が大きく持ち上がり、板へ届く前に端が崩れる。


「多い」


俺が言うより先に、ルシアスは流れを切った。落ちた水が水槽の外へ跳ねる。


「少量を出すのが苦手なんだ」


「魔力が足りないんじゃなくて?」


ローディが聞く。


「逆。出すのは簡単だけど、少ないまま保つと揺れる」


生来の魔力量が多く、一度に外へ出すことへ慣れているルシアスと、魔力の少ない俺では、同じ操作でも難しい場所が違う。


「俺がやった方が早い」


言った直後、ローディが眉を上げた。


「それ、班にする意味あるか?」


「失敗したら俺が直せる」


「お前が失敗したら、誰が直す?」


答えが止まった。


ルシアスが濡れた板を拭きながら言う。


「最初は僕が出す。ただし、レオンが量を見て止める。分岐したあとはレオンが動かす。ローディは3つの容器を見て、全体を止める。それなら?」


「最初の流れを任せて大丈夫か」


「多ければ止めて。出せないわけじゃない。少なく保つのが難しい」


教員のリディア・ノルクへ計画を伝え、開始する。ルシアスが水を持ち上げ、俺の合図に合わせて細くする。最初は揺れたが、板へ落ちる前に余分な流れを切った。


「右が速い」


ローディが言う。


「少し左へ寄せる」


俺が分岐後の水を動かす。今度は中央で水が溜まり始めた。


「止めろ」


ローディの声で、ルシアスが流れを切る。勢いが残り、板の上の水が右へ寄った。


俺は容器の高さを見る。


「次は右を途中で止める」


「どこまで任せる?」


ローディが聞いた。


「ルシアスは板へ入れるところまで。俺は分岐後の右側。ローディは3つを見て、基準線の手前で停止を言う」


「最初からそう言え」


2回目。ルシアスの流れが一度太くなったが、俺の合図で止まり、少ない量へ戻る。右へ流れた水だけを《水操作》で細くし、左と中央へ回した。


「右を止める」


俺が流れを切る。


「左も多い」


「止める」


「待て」


ローディの声で手を止めた。


「板に残った水が中央へ回る。今切ると中央が足りない」


3人で流れを見る。残った水が中央へ落ち、3つの高さが近づいた。


リディアが終了を告げ、記録を確認する。


「最初の役割から変えましたね」


「はい」


「レオン。なぜ自分で最初の流れを作らなかったのですか」


「ルシアスは必要な量を一度で出せます。多くなったときに止める人を決めれば、俺が最初から全部を動かすより早かった。俺は分かれた後の流れを直す方が合っていました」


「ローディへは?」


「3つを見る範囲と、止める合図を任せました」


ローディが腕を組む。


「途中からな。最初は何も言われてない」


「そこは俺の失敗です」


リディアは記録へ線を引いた。


「任せるなら、役割だけでなく範囲と戻す条件まで共有しなさい。中心にいる人が倒れても、班が動ける形にすること」


昼休み、ルシアスが言った。


「僕に任せるの、不安だった?」


「少し」


「僕もだよ。止めるのが遅れることがあるから」


ローディが笑う。


「だから声を出せばいい。黙って失敗される方が困る」


「ローディは水を動かしてない」


俺が言うと、ローディは3つの容器を指した。


「でも止めた。魔法を使う手だけが役割じゃないだろ」


使えることと、自分がやるべきことは同じではない。任せることは放棄でもない。相手の得意な範囲を知り、戻す条件まで伝え、その結果を一緒に引き受ける選択だった。

お読みいただきありがとうございました!

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感想や「ここが良かった」といったご意見もお待ちしております。

それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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