三人の見方
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それでは、どうぞお楽しみください。
班の一覧で、俺の隣にはエリオットとカシア・ロンドの名前があった。
「久しぶり、レオン」
赤茶色の髪をまとめたカシアが、俺の肩から足元まで見る。
「怪我は?」
「ない」
「無理は?」
「今日はまだしてない」
「今日は、ね」
エリオットが笑った。
「再会して最初にそれ?」
「前に会ったとき、怪我してたから」
「もう治ってる」
「見れば分かる。でも、聞くのは別」
課題には、倒れた草、浅い足跡、木の擦れ、2人の証言、水場までの距離が記されていた。俺は紙へ、確認事実、証言、推測、未確認の欄を作る。
「足跡は水場へ向かってる」
俺が言うと、エリオットが定規を当てた。
「方向は近い。でも、同じ時期の足跡とは書いてない」
カシアも証言を指す。
「『新しい擦れに見えた』は、見た人の判断。擦れが新しいこと自体は確定してない」
「2人とも、先に止めるな」
「止めたんじゃないよ」
エリオットが言う。
「前提を足しただけ」
「私は、欄を移しただけ」
カシアが続ける。
俺は足跡と水場の関係を推測の欄へ書いた。
「同じ個体が水場へ向かった可能性。ただし、時期と個体は未確認」
「それならいい」
エリオットが足跡の間隔を測る。
「次は距離と時間を出したい」
「何の時間?」
カシアが聞く。
「移動にかかった時間」
「歩幅も速度も分からない」
「だから範囲を出す」
「その範囲の根拠は?」
2人の言葉が重なった。俺は間へ手を置く。
「待って。エリオットは計算できる条件を探してる。カシアは、その条件が確定してるか見てる」
「レオンは?」
「水場と痕跡を繋げようとした」
「3人とも急いでるね」
カシアが言い、少し笑った。
追加確認には、足跡の深さと土の乾き、擦れの状態、水場周辺の痕跡、証言者の位置、天候を書いた。項目が増え、俺は紙を見つめる。
「多すぎる」
「今、種類を決める必要がある?」
「ない」
「なら、優先順位を決めればいい。分からないことが多いのと、何もできないのは別でしょ」
カシアの言葉に、俺は頷いた。
報告では確認事実から話し、証言、推測、未確認、次に見る項目の順で伝えた。セルドが尋ねる。
「3人は同じ結論でしたか」
「違いました」
エリオットが答える。
「僕は数と距離を先に見た」
「私は証言と前提」
カシアが言う。
「俺は足跡と水場の関係です」
「では、なぜ1つの報告になりましたか」
「意見の違いはそのままにして、どれが事実でどれが推測かを分けて整理したからです」
セルドは頷いた。
「班の目的は、全員を同じ意見にすることではありません。違いを残し、次の行動に使える形へ整えることです」
昼休み、カシアが俺の帳面を覗いた。
「昔より、人の話を聞くようになったね」
「昔も聞いてた」
「聞いて、自分で全部やってた」
「今は違う」
「そうみたい」
その返事が、なぜかエリオットの言葉より長く残った。
3人の見方は最後まで同じにはならなかった。それでも、1人では見つけられなかった不足と、次に確かめる順番を共有できた。
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