最初の教室
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それでは、どうぞお楽しみください。
入学手続きでは、書くものより聞くことの方が多かった。
「冒険者登録は続けられます。ただし基礎課程の在籍中は単独受注できません」
職員が規則を指で示す。
「学校とギルドへの届け出、成人の同行が必要です。Bランク相当以上や長期依頼は特別許可になります」
「空いている日に低危険度の依頼を受ける場合は?」
「授業と寮の予定に支障がないことを確認してください」
ゼノが俺を見る。
「聞いたな」
「聞いた。今まで通りには動かない」
「『動けない』ではなく?」
「規則を確認して選ぶ」
寮は4人部屋だった。扉を開けると、窓際からエリオットが手を上げた。
「本当に同じ部屋だ」
「うん」
「もう少し驚いてもいいよ」
壁際では紫髪の少年が本を棚へ並べ、大柄な少年が寝台の脚を揺らしていた。
「ルシアス・フェルド」
紫髪の少年が名乗る。
「ローディ・ガーン。こっちの寝台は揺れない。さっき全部見た」
「レオン・アルヴェイン。よろしく」
ローディが俺の荷物を見る。
「剣、細いな」
「俺のは細身だよ」
エリオットが自分の剣を示す。
「誰も君には聞いてない」
ルシアスが言うと、エリオットは肩をすくめた。
「同室なら、そのうち聞かれる」
ゼノは窓の鍵、廊下、避難経路を確認した。
「何かあれば管理人へ報告しろ。依頼へ出るなら届け出。勝手に遠くへ行くな」
「分かってる」
「食事を抜くな」
「分かってる」
「訓練を増やすときは」
「翌日の予定と身体を見る」
「ならいい」
ゼノが扉へ向かう。俺は呼び止めた。
「手紙は?」
「ギルド経由で出せ」
「返事は?」
「必要なら書く」
「必要じゃなくても書いて」
ゼノは少しだけ黙った。
「善処する」
「それ、書かない返事だろ」
「遅刻するな、学生」
扉が閉まった。窓から見下ろすと、黒い外套が通りの向こうへ小さくなる。
「師匠?」
ローディが聞いた。
「師匠で、保護者」
「怖そうだな」
「怖いよ」
エリオットが笑う。
「僕は何度か見たけど、レオンには甘いと思う」
「甘くない」
「手紙を書けと言えるなら甘い」
翌朝、4人で教室へ向かった。担任のセルド・アレンは黒板へ、事実、証言、推測、未確認と書いた。
「同じ教室に入ったからといって、同じ速さで理解できるわけではありません。分からないことは聞きなさい。ただし、自分で考える部分まで相手へ押しつけてはいけません」
最初の課題は、森の道に残った痕跡と短い証言の整理だった。
「大きな影なら大型【魔物】じゃない?」
前の席から声が上がる。
セルドは答えず、教室へ尋ねた。
「大きさを比べるものは記録されていますか」
俺は手を挙げる。
「ありません。確認できるのは、草、浅い足跡、音と証言です。影が何か、足跡と音が同じ原因かは分かりません」
「次に何を確認しますか」
「足跡の大きさと向き、草が倒れた時期、音の位置、証言者の場所と距離」
隣でルシアスが小声で言った。
「慣れてるね」
「教わった」
エリオットが紙へ別の項目を書く。
「僕は視界を見たい。木が多ければ影の形も変わる」
ローディは道幅を指した。
「盾を持って通れるかも必要だろ」
1枚の紙から、4人が違う不足を見つけた。
授業の終わり、セルドが告げる。
「明日は3人班です。組み合わせは掲示します。班内で必要な情報は自分の言葉で伝え、相手の判断まで奪わないこと」
寮へ戻る道で、エリオットが笑った。
「同室4人で組めないのか」
「違う相手とやるためだろ」
俺が答えると、ローディが背中を叩いた。
「だったら夜に答え合わせしようぜ。誰が一番ひどく失敗したかも含めて」
知らない部屋は、もう少しだけ話し声のある場所になっていた。
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