残り三日の使い方
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それでは、どうぞお楽しみください。
筆記試験まで残り3日。資料室の机には、覚え切れない言葉がまだ並んでいた。
「全部は無理だ」
俺が呟くと、向かいのアステラが顔を上げた。
「最初から全部を覚える予定でしたか」
「残すのが怖い」
「私は知らない条件を推測で埋める方が怖いです」
「試験では、空欄になる」
「確定している部分まで空欄にする必要はありません」
職員へ許可を取り、時間を決めた模擬問題を解いた。最初の計算には休憩時間が混ざり、次の地理には知らない地名が出た。
地名の前で手が止まる。アステラの言葉を思い出し、横へ小さな印をつけて先へ進んだ。
魔物の痕跡に関する問題では、足跡の大きさも数も示されていない。大型【魔物】と決める根拠はない。確認できる痕跡、考えられる危険、追加で見る項目を分けて書く。
鐘が鳴り、筆記具を置いた。最後の設問まで届いたが、書き直す時間は少なかった。
「どうでしたか」
アステラが聞く。
「知らない地名へ戻れなかった。でも、最後まで見た」
「私は野外安全に時間を使いすぎました。可能性を残すほど文章が長くなります」
「最初に危険と行動を書けば、理由は短くできる」
「あなたは保留するのが遅い。私は結論を一つに絞るのが遅い」
「同じやり方にはならない」
「同じにする必要はありません」
翌日は、午前に読み書きと計算の間違いだけを直した。午後は会場まで歩き、門、教室棟、掲示板、付き添いと別れる場所を確認する。
宿へ戻ると、ゼノが持ち物を並べていた。
「受験者番号」
「ある」
「筆記具」
「2本」
「水筒」
「ある」
「剣」
「持ち込まない」
「案内を読んだな」
俺は残りの予定を見せた。新しい専門書は開かない。前日は午前だけ短い問題を解き、午後は掲示と持ち物を確かめる。
ゼノは紙を見て言った。
「夜の勉強が消えている」
「寝る」
「不安ではないのか」
「不安だ。でも、不安な分だけ増やしたら、明日の自分が疲れる」
「なら、それでいい」
前日の夕方、会場までの道をもう一度歩いた。建物の間を風が抜け、角で向きを変える。流れを追いかけたくなったが、魔力は動かさなかった。
「使わないのか」
ゼノが聞いた。
「今は必要ない」
「成長したな」
「2年前も、必要がなければ使ってない」
「2年前なら、練習になると言った」
言い返せなかった。
宿で袋の中身を確かめ、灯りを消す。知らない問題は出る。間違えるかもしれない。それでも、条件を拾い、止まりすぎず、最後まで紙を見る。
明日、今まで積んだものを紙の上へ置く。
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