試験までの七日
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それでは、どうぞお楽しみください。
学園に近い宿は、料金表を見ただけで候補から外れた。
「ここなら歩ける」
俺が少し離れた通りの宿を指すと、ゼノは紙へ数字を書いた。
「部屋代は収まる。食事は朝だけだ」
「昼と夜は市場で買う。共同の炊事場も見る」
「試験まで7日ある。全部を今日決めるな」
宿へ荷物を置き、俺は5科目を書き出した。読み書き、計算、世界・社会基礎、魔物・野外安全、魔法基礎理論。その横へ、残りの日ごとに確認する項目を並べていく。
「朝から全部やる」
「何時間だ」
「午前に3つ、午後に2つ。夕方は実技」
「食事は」
「間に入れる」
「移動は。休息は。掲示の確認は」
予定表には空欄がなかった。2年間続けたものを確かめるために、7日で身体を壊す予定になっている。
「作り直す」
「新しく積む量ではなく、持ってきたものを崩さず出せる形にしろ」
翌朝、一般利用できる資料室へ向かった。棚は高く、本の分類もラグナードのギルドとは違う。最初に取った魔法書は、数ページで言葉を追えなくなった。
職員へ声をかけると、代わりに薄い本を渡された。
「これは専門課程向けです。先にこちらを説明できるか確かめてください」
「簡単そうです」
「簡単な本を説明できるなら、次へ進めます。読めない本を抱えることが勉強ではありません」
地図の棚へ移り、街道記録と地域図を机へ広げた。崩れやすい斜面へ印をつけていると、向かいに座った少女が紙を見た。
「その道幅は、どの資料から取りましたか」
濃い藍色の髪を耳へかけ、少女は俺の地図と開いた本を交互に見る。
「街道記録の第2巻」
「それは3年前の記録です。こちらの地域図は今年のものなので、同じ条件として使うなら、道が変わっていないか確認した方がいいと思います」
本の奥付を見る。年が違っていた。
「見落としてた。ありがとう」
「いえ。私も、その三角の意味を聞いていいですか」
「崩れやすい斜面。野外安全の資料に載ってた」
「資料名を教えてください」
互いの紙へ答えは書かず、調べた場所だけを交換した。少女はアステラ・リュネと名乗り、資料名、発行年、確定している条件を別々の欄へ並べていた。
昼から、職員の許可を得て短い模擬問題を使った。新しい足跡、折れた枝、遠くの音。種類も数も示されていない。
アステラは筆を止めた。
「情報が足りません。原因を一つに決められません」
「決めなくても、今できることはある」
「何をしますか」
「退路を確認する。見えた痕跡を分ける。追うなら、人数と戻る時間を先に決める」
アステラは紙へ書き足した。
「正解が確定しなくても、安全のための暫定判断は作れる」
「暫定だと分かる形で残せばいい」
今度は計算問題を渡された。荷車の速度、坂道、2度の休憩が混ざっている。俺は距離だけを先に式へ入れ、アステラから使っていない条件を指摘された。
資料の年を確かめること。答えを出したあと、使っていない条件を見ること。分からないままでも、決められる範囲を残すこと。
宿へ戻ると、俺は7日分の予定を書き直した。今日見つけた不足だけを直し、夕方の実技は行わない。
「それで終わりか」
ゼノが聞く。
「終わりにする。明日も確認する」
「やっと予定らしくなったな」
1人で読んでいたときには見えなかった間違いが、説明すると形を持った。残り6日。新しく全部を覚える時間ではない。それでも、積んできたものの置き方は変えられる。
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