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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第七章 選んだ先へ
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受けると決めた日

ご覧いただきありがとうございます!

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それでは、どうぞお楽しみください。

学園の公開資料を読み終えるまでに、数日かかった。


入学できる年齢、申請に必要な書類、試験の科目、合格後の手続き。書かれていることは多かったが、すべてが決まった未来として並んでいるわけではない。受験できるのは満12歳を迎えたあと。試験を受けても、合格するとは限らない。推薦や特別な枠もない。


「ここまで調べた」


俺は机の上へ紙を並べた。


読み書きと計算。地理と暮らし。魔法の基本。魔物と野外の安全。実技。どれも、今の自分が全くできないわけではない。けれど、試験に必要な範囲をすべて扱えるわけでもなかった。


フィナは紙の端を揃えた。


「申請の時期は、受験する年にもう一度確認してください。内容や日程が変わる場合があります」


「今から準備しても、変わるかもしれない?」


「変わる可能性はあります。ただ、読み書きや計算、魔法の基本のように、変わりにくい土台もあります」


土台。


俺はその言葉を帳面へ書いた。試験の内容が変わっても、学んだことが全部消えるわけではない。地図の読み方、条件を落とさず計算すること、魔法の目的と動作を分けること。どれも依頼や訓練で使える。


学園へ入るためだけに積むものではなかった。


「受けるのか?」


ギルドを出たあと、ゼノが聞いた。


俺はすぐに答えなかった。


受けると言えば、そこへ向かう準備が必要になる。今までのように、目の前の依頼と訓練だけを見ていればいいわけではない。勉強の時間を作り、知らないことを聞き、聞いたことを使って確かめる。休息を削らず、続けられる量へ整える。


それでも、前より迷いは少なかった。


「受ける」


ゼノは黙っている。


「合格するとは言わない。入れるとも思ってない。でも、満12歳を過ぎたら、一般入学試験を受ける」


自分の口から出た言葉を、俺は一つずつ聞いた。


「そのために、今から足りないものを積む」


「決めたな」


「うん」


「決めた。でも、一人では準備できない」


俺はフィナとゼノを順に見た。


「分からない資料は聞く。魔法はヴェラに、野外の記録はオルドに教わる。ゼノには、続けられない予定になったら止めてほしい」


フィナが紙を揃える。


「質問する前に、自分で調べた範囲も持ってきてください。どこで分からなくなったか分かるように」


「うん」


ゼノは短く息を吐いた。


「止めるだけじゃない。決めたなら、やらない日も自分で決めろ」


「休む日も予定に入れる」


「それで二年続けろ」


ゼノはそれ以上、何も言わなかった。けれど、歩く速度を少しだけ落とした。俺が隣を歩ける速さに合わせたのだと思う。


次の日から、予定表を作り直した。


朝は走り込みと剣。身体の状態を確認し、無理に量を増やさない。昼前に読み書きと計算を一つずつ。午後はヴェラから魔法の基本を聞く日と、オルドから野外や魔物の記録を学ぶ日を分ける。依頼へ出る日は、学習の量を減らして、現地で見たものを帰ってから整理する。


ガイウスやレムスと動くときは、連携の訓練を続ける。シオンとまた会えたときは、届かなかった距離へ挑む。どちらも、学ぶことと別ではない。


一つの目標を決めたからといって、他の積み重ねを捨てるわけではなかった。


ヴェラへ、学園の試験を受けるつもりだと伝えると、彼女は木片を机へ置いた。


「なら、魔法の基礎を飛ばさないで。知っているつもりで先へ進むと、後で戻る時間が増えるわ」


「分かった」


オルドへ伝えると、地図の上へ新しい道を描かされた。


「学園へ行くなら、町の中だけ見ていても足りん。地形も、人の暮らしも、魔物の移動も繋がっている」


「全部、覚える?」


「全部は無理だ。だから、必要なものを見分けろ」


フィナには、月ごとの学習記録をつけるための紙をもらった。できたことだけではなく、間違えたこと、まだ説明できないこと、誰に聞くかを書く欄を作る。


俺はその紙を訓練帳の後ろへ挟んだ。


剣の記録と同じ場所に、計算の間違い、魔法の説明、地図の読み方、魔物の分類を書く。以前なら、剣以外の不足を同じ帳面へ並べることに違和感があったかもしれない。


今は違う。


生き残るために必要なものは、剣だけではない。知識があれば避けられる危険がある。記録があれば、自分が見落としたものを他人から教わることができる。人に任せるだけではなく、受け取ったものを自分で確かめて次へ渡すこともできる。


夜、宿の机で、俺は学園の名前を書いた紙を開いた。


まだ2年近くある。試験の詳しい内容は、受ける年に変わるかもしれない。今の勉強量で足りるかも分からない。途中で依頼が入り、身体を休める日が増えることもあるだろう。


それでも、目標が曖昧だから何もしない理由にはならない。


受けると決めた。


合格を決めたわけではない。入学を決めたわけでもない。ただ、自分で試験へ向かい、今の自分に足りないものを積むと決めた。


俺は、紙の下へ予定表を重ねた。


剣を振る。魔力を扱う。依頼へ出る。休む。読み、聞き、使い、確かめる。


以前は、強くなるための道は自分で歩くしかないと思っていた。


今は少し違う。


自分で歩く。そのために、誰かが積み重ねた知識を受け取り、自分の足で確かめる。


それも、自分で選んだ努力の形だった。


俺は灯りを消した。


明日になれば、また足りないものが見つかる。間違いも増える。試験の日が来るまでに、何度も予定を直すことになるだろう。


それでも、向かう先は決まった。


俺は、満12歳を過ぎたら、一般入学試験を受ける。

お読みいただきありがとうございました!

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感想や「ここが良かった」といったご意見もお待ちしております。

それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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