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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第七章 選んだ先へ
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208/265

使ってみる

ご覧いただきありがとうございます!

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それでは、どうぞお楽しみください。

翌朝、俺は訓練場へ行く前に、昨日作った予定表を見直した。


朝は剣と走り込み。昼前に読み書きと計算。午後は魔法の確認と短い野外調査。最初に書いた予定には、全部を詰め込んだあと、さらに復習の時間まで入れていた。


「多すぎる」


ゼノが紙を見て言った。


「昨日、減らしたはず」


「減らしたあとに増やした」


確かにそうだった。足りないものが見えると、その分だけ時間を足したくなる。けれど、睡眠と食事と移動の時間は消えない。


「剣を減らした分へ、復習を二つ入れた。でも、減らしたことにはならない」


俺が答えると、ゼノは紙の端を指した。


「それを減らしたとは言わん」


「じゃあ、今日はどれを外す」


「俺に聞くな。明日の自分が続けられないものを選べ」


俺は予定を見直し、野外調査のあとに置いた追加の走り込みへ線を引いた。


「これは、今日できても明日の剣が減る」


「なら外せ」


「復習は一つだけ残す」


「理由があるなら、それでいい」


俺は復習を翌日に回し、午後の野外調査を短くした。全部を一日で終わらせるより、続けられる形にする方が必要だった。


訓練場では、いつもの走り込みと剣を行った。身体を動かしている間も、頭の端には午後の予定が残っている。けれど、剣を振りながら計算問題を考えるような真似はしなかった。


一つを終えてから、次へ移る。


それは、以前なら遅さとして直そうとしていた部分だった。今は、同時に扱うべきものと、分けた方がいいものを選ぶ必要があると分かっている。


午前の終わりに、ギルドの職員から地図を借りた。東門の外にある倉庫まで、2つの道のどちらを使うかを決める課題だ。片方は距離が短いが、坂と狭い橋がある。もう片方は遠いが、荷車が通れる道になっている。


「到着時刻を出してください」


職員が言った。


「歩く速さは一定ではありません。坂では遅くなり、橋の手前で人が止まる可能性もあります」


俺は距離だけを見て短い道を選びかけた。けれど、紙に書かれた条件を読み直す。荷物がある。橋の幅が狭い。途中で待つ時間がある。


距離が短いことと、早く着くことは同じではなかった。


「遠い方」


「理由は?」


「荷車が通れる。道幅がある。止まる時間を見積もりやすい」


俺は距離を区間ごとに分け、速度を変えて計算した。最初の答えは、坂道の時間を平地と同じにしていた。職員に指摘される前に気づけたが、計算の途中で条件を見落としていた。


「前よりは早く気づきましたね」


「でも、最初は落とした」


「落としたことより、どこで落としたかを残してください」


俺は紙の端へ、距離だけを先に見た、と書いた。答えが合っているかだけではなく、間違えた順番も必要だった。


昼過ぎ、ヴェラのところへ向かった。昨日聞いた内容を使い、木片を決めた場所へ動かす。目的は倒すことではなく、線から外へ出さないことだった。


「風を強くしないで」


ヴェラが言う。


「今日は動かす距離を短くする。対象を見て、必要な方向だけへ流す」


魔力を左手へ運ぶ。昨日までは、魔力の流れを説明しようとすると動作が遅くなっていた。今日は言葉を全部頭の中で繰り返さず、始める前に目的だけを決める。


木片の右側へ弱い風を当てる。少し動いたところで止める。風を続ければ線を越える。止めるのも操作の一部だった。


「今のは、使ったあとに止めた」


「そう。使い続けるより、必要なところで終える方が難しいこともある」


次は外から風が入る。木片が先に動いたため、俺は魔力を足さず、風の向きを合わせて流れを弱めた。


「魔法で押し返さないの?」


「押し返す必要がないから」


「半分は成功ね」


ヴェラは木片の位置を戻した。


「自分の力で全部を動かそうとしなくなった。周囲の条件を使うことも、制御の一部よ」


魔力を使わなかったことを、何もしていないとは扱わない。これも昨日まで知らなかった考え方だった。


午後の後半は、オルドと町の外れまで歩いた。遠くへ行かず、短い範囲で足跡と音を確認する。俺は最初に、見たものと予想を紙へ分けた。


倒れた草。浅い足跡。木の皮についた擦れ。林の奥から聞こえた短い音。


「音は鳥だと思う」


俺が言うと、オルドはすぐに否定しなかった。


「根拠は?」


「高さが上から聞こえた。短く、2回続いた」


「見たか?」


「見ていない」


「なら、未確認のままだ」


俺は紙の欄を変えた。音の位置と回数は確認。鳥は推測。姿は未確認。


その直後、枝の間から灰色の小さな動物が出てきた。鳥ではなかった。地面を走り、倒れた草の向こうへ消える。姿を見たのは短い時間だけで、種類までは分からない。


「今のは?」


「灰色の小型【魔物】らしいもの。四足に見えた。角と尾は確認できない」


「いい」


オルドは足跡へ近づいたが、追わなかった。


「見えたものが増えても、名前を急がない。今の目的は分類じゃない」


目的を決めてから、必要な情報だけを見る。魔法の訓練でも、地図の計算でも、野外の確認でも同じだった。


町へ戻ると、俺は3つの結果を並べた。地図では、距離だけで道を選びかけた。魔法では、周囲の風を使い、必要な場所で止めた。野外では、聞こえた音を鳥と決めず、姿を見たあとも種類を断定しなかった。


「覚えたことは使えた?」


ゼノが聞いた。


「一部は。でも、使うと別の間違いが出た」


「なら、次に直せる」


「学んだだけで終わらせない方がいい」


「そういうことだ」


帳面へ結果を書く。今日できたことだけではなく、できなかったことも残した。


距離と時間を別に扱う。魔法を使わない選択を残す。見ていないものを分類しない。目的に必要な情報と、まだ必要でない情報を分ける。


項目は違っても、根にあるものは同じだった。見て、考えて、使って、結果を確かめる。間違えたら、次に直す。


夜、予定表を開いた。朝の剣、計算、魔法、野外確認。全部を行ったが、最後まで続けられたのは、最初から量を決めていたからだ。


学ぶことを増やすために、無理を増やす必要はない。使える形へ整え、明日も続けられる場所で止める。


俺は新しい紙へ、学園の名前と、その下に3つの言葉を書いた。


知る。使う。確かめる。


その下には、まだ空白が残っている。


試験の日も、受ける年も、合格も決まっていない。けれど、向かうために今できることは、少しずつ見えてきた。


俺は紙を帳面へ挟み、灯りを消した。明日も、剣を振る。魔力を動かす。知らないことを調べる。


どれか一つへ逃げないために、全部を続けられる形で積んでいく。

お読みいただきありがとうございました!

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感想や「ここが良かった」といったご意見もお待ちしております。

それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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