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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第七章 選んだ先へ
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倒れたあと

ご覧いただきありがとうございます!

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それでは、どうぞお楽しみください。

テンペストドレイクが倒れても、ゼノはすぐに剣を下ろさなかった。頭部、前脚、首の器官を順に見てから、岩壁と斜面へ視線を動かす。巨体が動かないことと、周囲に別の個体がいないことは別だった。


俺たちも支えの手前に残った。最初に数えたのは討伐した相手ではなく、こちらの人数だった。ガイウス、レムス、調査担当者、対応隊員、俺、ゼノ。全員から返事があり、自分で立っている。


「負傷を確認する」


ガイウスの盾には石と圧力で増えた浅い傷がある。腕は動き、握る力も残っていた。調査担当者と対応隊員に出血はなく、レムスも弓を下ろして周囲を見続けている。


ゼノの脇腹には鉤爪が掠めた裂傷があった。服は切れているが、血は細い線に沿って滲む程度で、立っている姿勢も崩れていない。左前腕は剣を握り直す動きが普段より遅く、指を開くまでに一拍かかった。


「さっきの、《極点》ってやつのせい?」


「それだけじゃない」


ゼノは答えたあと、後方で鳴った呼子へ一拍遅れて顔を向けた。音を聞いていないわけではない。位置を確かめ、身体をそちらへ向けるまでが遅い。視野と音の処理が戻り切っていなかった。


俺はゼノも確認する人数へ入れた。いつもゼノが俺たちを数えるからといって、本人を外していい理由にはならない。


「傷の手当てと支えの再測定が終わるまで、死体へ近づかない」


ゼノは俺を見たが、反対しなかった。ガイウスが脇腹へ布を当て、強く巻きすぎないよう呼吸を確認する。左前腕は骨の変形や大きな腫れがないものの、今は剣を振らせず、柄から手を離させた。


その間に、俺と調査担当者は支えを測った。杭は1本が朝の線を越え、追加した板の谷側に砂が溜まっている。歩いて渡る幅はあるが、担架へ人を載せて通すなら補強が必要だった。


「全員が歩けるうちに戻る。担架は使わない」


ガイウスが決めるのではなく提案し、ゼノが周囲と道を見て頷いた。討伐後も最終判断を一人へ押しつけず、見た状態を合わせて帰る形を作る。


テンペストドレイクの死亡確認は、離れた位置から始めた。呼吸による胸部の上下はなく、首の器官もしぼんだまま動かない。一定時間を置いてからゼノと対応隊の者だけが近づき、目、口、前脚へ長い棒を触れさせても反応がないことを確かめた。


確認できたのは1体の死亡だけだった。斜面や谷の向こうに別個体がいないとは言えない。最初の崩落と死亡者の傷、白い傷をこの個体が残したかどうかも決まっていない。


身体には、戦闘でついた傷とは別に、首から肩へ長く閉じた古傷があった。板状鱗の一部も以前から欠けているように見える。原因をその場で決めず、位置と形だけを記録した。


素材を取る話は後に回した。首の器官、鱗、鉤爪には価値があるかもしれないが、身体を動かせば足場と支えへ新しい力がかかる。今いる人数と道具で始める作業ではない。


帰路へ入る前、俺は最後にゼノの目の動きを確かめた。さっきより呼子への反応は戻っているが、左右を同時に見るときにわずかな遅れが残る。


「俺の前を歩いて」


「必要ない」


「今は必要だ」


ゼノは一度黙り、俺とガイウスの間へ入った。


ゼノが俺を見た。


「何を見てそう言った」


「左脚を着く時間が長い。息も、戦う前より浅い」


「歩けなくなったわけじゃない」


「歩けるうちに順番を変える。倒れてからじゃ遅い」


ガイウスが二人の間へ入り、盾を背へ回した。


「今日は坊主の方が正しい。お前は俺の横だ」


ゼノは反論せず、剣を納めたままガイウスの横で歩幅を確かめた。


討伐できたことと、安全になったことは同じではない。勝った者が自分で歩けることと、普段どおり動けることも違う。


俺たちは死体を残し、人数、傷、道を持ち帰った。倒れたあとに確かめたものまで含めて、ようやく一度の討伐が終わりへ向かい始めた。


ゼノの脇腹を手当てしたあと、俺は左前腕の状態をもう一度見た。指は開閉できるが、強く握ったあとの戻りが遅い。痛みの場所を聞くと、ゼノは前腕の外側を示した。骨折とは決めず、町へ戻るまで剣を持たせない。


《極点》と呟いたあとに見えた変化は、腕だけではなかった。左右から同時に声をかけると、ゼノは近い方へ先に顔を向け、反対側を確認するまで一拍かかる。視野が欠けたのではなく、複数の情報を処理する速さが一時的に落ちているように見えた。


「歩く順番を変える」


俺はゼノを先頭から外し、ガイウスの後ろへ入れる案を出した。ゼノは自分で歩けると言ったが、自分で歩けることと先頭で周囲を判断できることは違う。レムスも後方から賛成し、最終的にゼノが頷いた。


死体の確認では、長い棒を使って目、口、前脚の順に触れた。反応はなく、胸部も動かない。一定時間を置いて同じ確認を繰り返し、死亡と記録した。それでも身体の下や岩陰へ別の危険がないとは言えないため、接近する人数は2人に限った。


調査担当者は頭部、鉤爪、板状鱗、首の器官を遠くから写した。戦闘でできた亀裂とは別に、首から肩へ閉じた古傷がある。古いことは形から推測できても、いつ、どこで、何に傷つけられたかは分からない。


素材の回収は保留した。八メートル近い身体を動かせば、道と支えにどれほど力がかかるか分からず、解体の経験者もいない。価値があるからと触れば、記録と退路の両方を失う可能性がある。


帰る前に、俺は倒れた位置とゼノの戦闘位置を地図へ置いた。確認した個体は1体。周囲で別個体の姿と音は確認できない。ただし不在とはしない。最初の崩落と死亡者の傷に関与したかも、まだ未確定のまま残す。


討伐という大きな結果の近くへ、分からないものを集めない。勝った勢いで原因まで決めれば、次に調べるべきものが消える。


俺たちは巨体を山へ残し、歩ける者だけで隊列を作った。先頭は対応隊員、次にガイウスとゼノ、調査担当者、俺、最後尾にレムス。役割を今の身体状態へ合わせて変え、同じ人数で町へ戻る。


倒れたあとに残った仕事は、戦う前より多かった。それでも一つずつ分ければ、今やるべきことと、次の人へ渡すことを選べた。

お読みいただきありがとうございました!

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それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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