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無道戦術 共振の波

蒼生軍と神聖国軍は、互いに動かず対峙していた。

あと数分。

号令が下れば、戦場は一瞬で地獄へ変わる。

神聖国の陣は――完璧だった。

隊列の間隔。

詠唱の呼吸。

法撃の同期。

そのすべてが、異様なほど統一されている。

無駄がない。

乱れがない。

迷いがない。

その秩序は、もはや芸術の域だった。

だが――

草薙は、その完璧さの中に“揺れ”を見ていた。

「勝利の歴史故か……今なら」

静かな声。

「崩せる」

武を振るわない。

陣も敷かない。

ただ――風を動かした。

それは暴風ではない。

砂塵を巻き上げるほどでもない。

微弱。

一定。

止まらない風。

地表を撫でるように吹き抜け、瓦礫を鳴らし、旗布と装備をわずかに揺らす程度。

最初は、誰も気づかない。

神聖国兵は思う。


――風が吹いている。

只、それだけ

だが問題は、“向き”と“周期”だった。

風は常に同じ角度から吹き続ける。

同じ強度で。

同じ間隔で。

そのリズムが、徐々に神聖国軍の行動周期へ侵食していく。

その刹那だけ、足元がわずかに狂う。

兵士は踏み直す。

重心を戻す。

隊列を修正する。

誰も異常とは思わない。

だが、その“修正動作”そのものが、次の揺れを呼び込む。

共振が始まった。

神聖国軍は、秩序正しい。

ゆえに――

同じタイミングで重心を移し、

同じタイミングで地を踏み、

同じタイミングで装備を鳴らす。

その統一性が、逆に地盤の固有振動数と噛み合っていく。

低い音が鳴り始めた。

振動と呼ぶには微細。

だが、止まらない。


蓄積する。

繰り返される。


「……何だ?」

誰かが呟いた瞬間。

法の水平軸が、わずかに傾く。

陣の紋様が、ほんの数センチずれる。

本来なら、致命傷には程遠い誤差。

だが、神聖国の陣は“完璧”であるがゆえに、その数センチが全体へ波及する。

指揮官が異常を察知する。

だが原因が見えない。

敵襲ではない。

破壊工作でもない。

風だ。

只の、風。


そこへ――蒼生軍の舞踏部隊が前進する。

美女戦闘員たちは、武器を構えない。

突撃もしない。

ただ、歩く。

同じリズムで。

同じ歩幅で。

地面を鳴らすように。

揺れる法装。

鳴る装具。

同期した足音。

その振動が、すでに発生していた共振へ正確に重なる。

視線が奪われる。

呼吸が乱れる。

神聖国軍の秩序は、自らのリズムで完成されていた。

だからこそ――

外部から“同じ周期”を与えられると逃げ場がない。


共振が秩序の戦場を喰らおうとしていた

挿絵(By みてみん)

世界、人物、引用、元ネタ、テキスト等【引用、参考文献等】

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cien(全年齢)

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