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ギルドへ報告 6

お待たせしております。


 俺が人様の店で商売敵を作ろうと考えていたら、奥から人がでてくる気配を感じた。ああ、この感じは。


「おやおや、随分と立派な枝肉じゃないかい。これは迷宮産だね」


「あ、ばあちゃん」


「これは、女将さん。確かに迷宮産です、さすがによくご存知で」


()()を見たのは初めてさ。だが、こんな大きな枝は自然じゃ採れないからね、それに噂も届いているよ」


 含みのある顔をした女将さんだったが、それを聞く前に隣のバーニィが立ち上がって深い礼をした。



「お初に御目にかかります。白炎(びゃくえん)のアシュリーさんですね。お会いできる日を楽しみにしておりました」


「これはこれは。ご丁寧な挨拶痛み入るね。名高い暗黒騎士様に名前を覚えていただけるとは光栄だね」


 俺は最敬礼で挨拶するバーニィを見て気になった事を聞いてみた。


「ああ、やはり女将さんは有名人なのか?」


「この国では知る人ぞ知る、って感じだけど他国じゃ”白炎”の名は今だ威武を誇っていますよ。世界中から猛者が集まる総本部でも誰一人知らぬ男はいませんでした。同じ国の出身というだけでそれなりの扱いをされましたから。現役を退いてなお威光は衰えてないですよ」


「ほほほ、若気の至りというやつじゃの」


 だから私達への要求が高くて大変なのよね、と小声で呟くリノアを見れば彼女は他の女性陣に店の奥に連れ込まれている。すぐに戻ったかと思えば、今度は俺がリノアに連れられて人気の無い奥の卓に座らされる。おいおい、一体何の用だ?


「昨日からまことしやかに流れている噂があるんだけど……なんでも大きな蜂蜜と色々な種類の蜂蜜が存在するらしいじゃない? あんた何か知ってる?」


「ああ、これのことか? 欲しけりゃ一つだけだがやるよ」


 リリィから一つまでなら許す! との実にありがたいお達しがあったのでリノアの前に置いてやったのだが


「!!」


 その瞬間、殺気にも似たいくつもの視線が蜂蜜詰め合わせに突き刺さる!


 ここで働いている多くの女性たちが、一人残らずこの蜂蜜に注目しているようだ。


「えーと、後はそっちでよろしく。あと果物も置いていくから適当に分けてくれ」


 なにも考えずに手当たり次第に色々置いていくと、蜂蜜だけに集中していた視線がバラけ始めた。

 さて、女の戦いは俺のいない場所で静かにやってくれ。


「あれ?このブドウは少し違うな」


「ああ、それワイン用の奴じゃない? 食べる分には甘くないけどワインにするには適してるんだってさ」


「そうか、じゃあ、ここで出さない方がいいな。間違って食べたら渋い味に驚くだろうし」


 ワイン生産者を紹介しようか? という声を断り、残りの野菜や魚を置いていく。王都は海が近いので魚はあまり喜ばれないと思ったが、生息する種類が違うらしく見たことのない魚の美味さに料理人達も驚いていた。

 俺が持っていても使われもせずにしまわれ続けるだけなので、盛大に持っていってほしい。俺は根が貧乏性なのか、実っている作物を採れるだけとる質なので毎日えらい量が貯まっていくのだ。


 リノアたちは対価を出そうとするが、それは冒険者ギルドの規約に抵触するので断った。その代わりかつてから頼んでいた依頼の追加料金として考えてもらった。依頼の件は今のところ目立った動きはないが、まだ始めて7日程度だ。本格的に始めてさえいないかもしれないから、ソフィア達が王都から出発するまでに終らせておいてくれれば問題ない。


「こんなに貰ってしまって何も返せないなんて、なんだか悪いわ」


「むしろ使ってくれるとこっちが助かる。どうせギルドに持ち込んでも安く買い叩かれるだけだしな。毎日こっちに食材送っても良いくらいだが、そっちも付き合いのある業者がいるだろうし」


 長年の付き合いの店が、いきなり在庫充分あるから今日から取引しないといわれたら困るだろう。余計なお世話だろうが、恨みつらみとはどこで買うかわかったもんじゃない。何事も程々が一番だ。



 伝説の人物と出会えて興奮冷めやらぬバーニィを連れて店を出た。店内では色々と無遠慮な視線(主に女たちから)を浴びたが、怒り出すほどではなかったので無視を決め込んだ。何かあるなら向こうから行ってくるだろう。


「ユウ、口を出すのもどうかと思って黙っていたんだが、もしあの組織の有する極秘拠点を譲り受けたら

君の事情や秘密が筒抜けになってしまわないかい? それが解らない君ではないと思うけど」


「ああ、さすがにそのまま借り受けることはしないさ。彼らが持つ拠点はどのような基準や特徴があるのかを知りたいだけだよ。気に入った場所があればそこの近くの物件を探すさ」


 そういう意味でもバーニィの家が持つあの保管場所は最適なのだが、そこを貸してくれと言う訳にもいくまい。さらにいえば教会地区にあるので少し遠いのが難点か。


「ウチを使えば話は早いだろうに」


「もし深夜とかに移動する時迷惑だろう? とりあえず今は他の候補を探すさ」


 物件も急ぐ話ではないし、ソフィア達もまだ公爵邸に着いていないようなので、先に俺の用事をすませよう。

 ほぼ行きつけになっている雑貨屋、家鴨亭で誘引香を補充するのだ。その際に二人の子供たちとも挨拶をする。俺が教えた魔力鍛錬は欠かさず続けているようで、前に会ったときよりも魔力が増えている。本当に将来が楽しみな二人だった。


 魔導具の亜種扱いである誘引香は中々補充が出来ないそうで、今日は一つしか手に入らなかった。誘引香を作成する人間も材料も年々減る一方らしいので、ある程度金を積んでも確保して欲しいと頼んだ。ウィスカのダンジョンで使用すれば、金貨一枚の誘引香でその百倍は稼げるはずなのだ。これは絶対に欲しい。


 他には作りのしっかりした釣竿は特注になってでも欲しいので依頼したり、逆に店主から子供達の将来について相談を受けたりしたら時間になったので公爵邸に向かった。



 その後は約束通りソフィアたちと過ごしたのだが……なにかがおかしかった。嫌にこちらにまとわりついてくる割には、不意にこちらの顔を窺ってきたりする。

 なにか目的があってそうしているのは明らかだった。普段ならば諫める立場のジュリアやメイド達が一切口を挟まなかったからだ。


 だが、リリィにも理由を告げていないみたいなので深くは追求しないでおいた。ソフィアには、用件が済めば説明してくれるだろうと思えるだけの信頼がある。


 結局、ソフィアとは王都を共に歩いて買い物をしただけで終わってしまった。てっきり転移環でウィスカにつれていってほしいと言われると思っていたので拍子抜けだった。


 その日は王都で遊んだだけで終わってしまった。だか、有意義な日であったことは間違いない。ソフィアには抱きつかれたり、腕をつねられたりと謎の行動を繰り返していたが何を試していたのだろうか。


 夕食は公爵邸で腕自慢のシェフの力作を味わった。礼を言いに行ったら逆に肉の感謝をされてこちらが困ってしまった位だ。

 ソフィア達を王城まで送り届けたあと、またも伯爵家に転移環を置かせてもらってウィスカへ帰還した。しばらくはバーニィに甘えるしかないようだな。本人は気にするなといってくれるが、何時までもそうするわけにも行かないし、俺もいざというときの誰も知らない拠点を持ちたいとは思っている。

 


 リリィと二人、そんな事を思いながら帰途に着いた。さあ、明日からまたダンジョンで稼ぎまくってやるとするか。転移門を利用すればどれほど稼げるのか楽しみだ。



 残りの借金額  金貨 14991210枚


 ユウキ ゲンイチロウ  LV278 


 デミ・ヒューマン  男  年齢 75


 職業 <村人LV323〉


  HP  3684/3684


  MP  3322/3322


  STR 695

  AGI 691

  MGI 706

  DEF 632

  DEX 628

  LUK 406


  STM(隠しパラ)825


  SKILL POINT  1155/1165    累計敵討伐数 11952


楽しんで頂ければ幸いです。


店はみんなだいすき奴隷少女を買って始めるつもりなんですが……

話が進みません(怒)! お前が言うなではありますが。


次からようやく21層への挑戦です。ダンジョン攻略の本番が始まります。


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