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竜に焼かれた村をぽんこつ守り神と魔物をテイムしながら復興します  作者: かんあずき


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7 弾んだスライムの物騒な会話

翌朝──


「まさかお前たちが、テイムすら出来ないなんて思わないだろう。かつては、みんな見えずとも精霊を感じて暮らすのが当たり前、魔物も共通の利点はないかを話し合って、お互いの境界を尊重したものだ」


「話し合い?」


アレクと私は、魔物と?話し合う?誰が?という顔で、目をぱちぱちと瞬かせた。


「はあっ?お前たち、会話もできぬのか?」


湖に戻されたアグリは、軽くひと泳ぎした後、一息ついたように顔を再び水面から出した。


「お前たち、口を開けろ」


「口?」


私とアレクは、少し口を開く。


「ばかもん!口を開けろと言われて、口を開くやつがあるか!開けろと言われたら大きく開けるのだ」


私とアレクは、仕方ないなあと呟く。


あーーーーーんっ!


私たちが大口を開けたその瞬間――


プシュッ!


私たちの口に、アグリの尻尾から繰り出される水が勢いよく入る。


「ん!」


「うぐっ!」


思わず私とアレクの二人はごくんと飲み込んだ。


「仕方ないから、私の力の爪の先をお前たちにやる。これで魔物との会話も精霊との会話も出来る。しっかりその存在を見つけたら、この村に連れてくるのだ!さあ行け!」


アグリはそういうが……


「ねえ、何か変化を感じる?」


私はアレクに聞いてみる。

申し訳ないが、爪の先にも変化を感じない。


そう言えば、錦鯉に爪なんてないものね……


「悪いが、俺も同様だ……」


アレクも、キャラメル色の髪の毛をかきあげながら、困ったなあと顔を曇らせるしかなかった。



追い出されるように、私とアレク、そして愛馬のラッキーに幌馬車を引かせて、ブルースライムを探そうとするが……


「うおっ!道がないぞ!」


「ええっ!全部畑なんですけど……」


一晩の間に、焼けた廃屋の後もなくなり、なんだったらご丁寧に、煉瓦、石、廃材、瓦と分別の山ができている。


残りは焼け落ちた家の跡も、道も関係なく全て耕されていた。


そのあちこちに、それぞれの家庭で使っていたと思われる井戸が見える。


「道がないから幌馬車が引けないぞ……」


たしかに……


すべてがふかふかな土に変わり、歩くだけでも精一杯。

幌馬車なんてハマってしまう。


私は、こんなことになるとは思わず、困ったように眉を顰めた。


「ええっ!どうしよう……家づくりより道作りが急務だし、あと、アレなんとかしないと……」


アレとは……


綺麗に耕した畑のあちこちに、にゅっと何本もの泥ミミズが立ち上がってこちらを伺っている。


「あの……とてもふかふかの畑をありがとう。これ以上の畑は……いや、ありがたいのよ……」


私は、どう伝えたら良いのだろうと思った。


アグリ様の神通力で動いているだけだから、きっと心はないのだろうけど。


「帰ってから、またアグリ様に相談しよう。そうしないと、何か植えても喰われそうだ」


「たしかに……」


私も、分裂させすぎたとしょんぼりする。


仕方ないので、ラッキーはお留守番になり、私はアレクと共に歩くことにした。


「だけど、日帰りなら行くことができる距離に限界があるわよね」


「ブルースライムだから、そこまで歩かなくても広い野原があれば見つかると思うよ。問題はテイムできるかだよ」


「スライムの攻撃ってどんな感じなの?」


丸くてぷるんとしたゼリーのような魔物だというのは知っている。だが、その攻撃力も分からなければ、どう防げば良いのか全く想像がつかない。


「スライムの特技は体当たりだ。まさにぷるんとしたその体型を使って体当たりしてくる。」


「体当たりだけ?」


それならなんとかなりそうだけど……


「ただし、猪レベルの突進力はある。あと、稀に酸を吐く。ブルースライムは水だから軽い火傷で済むが、グリーンスライムは毒を含むから腫れ上がるし、ブラックスライムは皮膚が溶けるレベルの酸だからすぐ治療が必要だ」


「何それ!無茶苦茶怖いじゃないの」


私は、さらっと話すアレクにドン引きする。


「ただ、そこまで強くない。跳ねるだけだから動きも予想できる。一定の距離を保って会話になるか試してみよう」


私は、それを聞いて頷いた。



アグリ村だったところを出発してから1時間。


「本当にアグリ村だけやられたのね。竜にとって宝玉は心だって言っていたわね。話し合いができてお返しできたら良いんだろうけど……」


そう言いつつ、目の前に両親や仲間を殺した竜がいたら、私は死ぬと分かっていても殺しに行くかもしれない。


いや、間違いなくそうする気がした。


「自我を失っているんなら会話にならないよ。それに、宝玉がどういう経過でアグリ村に来たのかもわからない」


「そうね……」


あんなにアグリ村は真っ黒になって、色のない世界に存在するかのようだったのに、ちょっと離れたら普通に野草が生えていて、花も揺れている。


「あれ……見えるか?」


私は、立ち止まったアレクの目線の先を追う。


「ああ、スライム……しかもブルー」


ぷるんとした体を、ぴょん、ぴょんと飛び跳ねるようにして移動している。


「ダメなら殺す。俺の後ろに隠れてて!」


アレクの言葉に、私は頷いてそっと後ずさる。


「おい!こっちだ!スライム、こっちを見ろ!」


アレクは、遠くにいるスライムに呼びかけたが……


「人間だ!」


「おい、人間だ!」


「呼ばれたぞ」


「なんだ?何のようだ?」


どこに隠れていた?


ぴょんぴょんと跳ねて、私とアレクは囲まれる。


「ちょっと……アレク、聞いた?私は、スライムの声が聞こえるんですけど……」


「そうか、俺もスライムってこんな弾んだ声してるんだなって感じたところだ」


私はそっと、短剣を懐から出した。


「ええと……囲まれましたよ。アレク……こういう状況ってどうなのかしら?」


「やばい、それしか言いようがないな……」


アレクは、少し緊張しているようだった。


私をどう守ろうかと思っているようだが、完全に円状に囲まれている。


「殺す……」


「殺す……」


「殺す……」


スライムの「殺す」コールが、弾むような可愛い声で聞こえる。


「アレク……」


「何もいうな。俺にも聞こえる……」


だよね……アグリ様、効果あったわ。


何も変わってないなんて思ってごめんなさい――


でも……どう説得すれば良いのか?


魔物の説得方法なんてわからないわよ


「あの……私、アグリ村からきたの。アグリ村……知ってる?そこの神様のアグリ様から、みんなと話せる力をもらったの」


そう、ブルースライムに向かって声をかけようとすると……


「アグリ?」


「この間龍に燃やされた村」


「知ってる、みんな死んだ」


「でも、ここに村の人間って……」


おおっ!スライムにちゃんと言葉が通じてるんだわ。


「生きてるの、私は違うところにいて、生きているのは、村では私だけなのだけど、村の神様に手伝ってもらって村を再建しているの」


私は、あわあわしながら一生懸命説明した。


「村の再建?」


「無理無理、竜に焼かれて真っ黒焦げ」


ブルースライムは、ぷるんと揺れて無理無理と震えることで表現した。


「そうかもしれないけど、私は亡くなったみんなとの思い出があるアグリ村を復活させたいの。でも、それにはブルースライムの力が必要って言われたの」


「ブルー……スライム?」


ぷるんと震えて、何それ?という顔で見る。


よく見るとスライムって目があるのね……


私は、へぇーっと思わずその目を見た。


「ブルースライムっていうのは、人間があなた達の呼ぶ時の名前よ。スライムという魔物で、青いから……」


そう伝えたが、色の識別がつかないのか?


ぷるん


そう震えただけだ。


「まず、その武器を仕舞え!そうしないと警戒を解いてやらないぞ!」


ぴょんぴょん跳ねながら、ブルースライムが私の横に近づいてくる。


「危ない!」


アレクが、思わず私の前にやってきて長剣を構える。


すると、他のブルースライムの目が三角になり、一斉にみんな怒り始めた。


「こいつら敵!やっつけるのみ!」


「やっつけるのみ!」


えーっ!


アレク、ダメじゃん!何で私を守ろうとするのよ


完全にスライムを怒らせてしまった。

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