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17  作者: KyaneI-Camel
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ノート

次の日、僕はいつもより早く目が覚めた。

前日、ソワソワして寝付きが悪かったからか、眠った感覚はない。

だが今からもう一度寝るには微妙な時間だ。


僕は仕方なく布団から出ると、朝食を取り朝の支度を済ませた。

いつものクセで中学校の学ランを探すが、当然そんなものは見つからない。

慣れない高校生の制服を僕は纏った。


僕は部活動志望書をリュックに入れたのを確認して家を出る。

まだ夜が明けて1時間ほどなので、歩道はまだ建物の影に隠れていた。

昨日とは少し違った雰囲気の通学路を進む。

学生はまだ誰一人としていなかった。

この時間ならまだ校門が開いていないかもしれない。


道中、昨日は下を向いていて気が付かなかった桜に気がつく。

こんなに立派に堂々と咲いているのに気が付かなかった僕は、よほど余裕がなかったようだ。

人通りがほとんどないその道は、なんだか世界を独り占めしているような気がして気分がいい。


少しだけ足を止め、桜を眺める。

桜の花弁がひらひらと散り、新しい門出を示しているようだった。

学校に着くと予想通り、校門はまだ空いていない。


僕は少し引き返して、寄り道をすることにした。

買い食い…というやつをやってみたかったのだ。

中学生の頃は、お金を持ち運ぶことなんて出来なかった。

だから、高校生が少しだけ羨ましかったのだ。

昨日帰り道に美味しそうなお店をいくつか見かけた。

僕は道をゆっくりと引き返し、買い食いが出来る店を探す。


しかし、期待を裏切るようにめぼしい店は皆準備中だった。

仕方なく僕はコンビニでアイスクリームを買う。


外へ出ると、昨日見た猫と目があった。

僕を見ると警戒するように後退りしていく。

そのあまりの過剰反応に思わず笑ってしまう。


「大丈夫だよ。襲ったりしないから」


猫は威嚇しながら僕のことを見る。

僕の何を感じ取ったのだろう。

やはり動物は勘がいいのだろうか。


「にゃー」


猫の鳴き真似をしてみるも、効果はなかった。

鳴き真似には少し自身があったのだが、これでも無理ならどうしようもない。

仕方なく僕は諦めて、アイスの梱包を剥がす。

桜を見ながら食べるアイスはいつもよりも甘い気がした。


暫くゆっくりとしていると、少しずつ人が増えてきた。

コンビニの前に煙草を吸うおじさんが来たので、僕はゴミを捨てその場を去る。


学校へ向かうと、どこかから掛け声が聞こえてきた。

朝練というやつだろうか。

すごい熱意だなと僕は思う。

何かに熱中出来るということは、素敵なことだ。


校門は空いており、守衛室のおじさんに挨拶をして、僕は教室へ向かった。

誰もいない教室。

荷物だけ置くと、僕は教室を出た。


そういえば、演劇部は朝練をしているのだろうか。

疑問に思い、向かってみる。

窓が閉じ、風通しの悪い校内は、時間すらも停滞しているように思えた。

それでも、ふとした拍子に時間は動き出す。


「やっ。昨日ぶりだね」


後ろから声をかけられ、またびっくりさせられる。

そこにいたのは、昨日の女の子だった。

廊下の影に顔が覆われた彼女は、まるで全てを見透かしているような目で僕のことを見ている。


「き、昨日ぶりですね。先輩。」


「また私のこと覗きに来たの?」


「そ、それは…」


まるで僕がいやらしいことでもしているかのような言葉に返す言葉が出てこない。

焦ってまた何も言えなくなってしまった。


「ふふ。冗談。」


そう言って彼女は笑った。

素敵な笑顔だった。

怒りは不思議と湧いて来なくて、むしろ僕は見惚れていた。

この先輩のことを少しだけ分かった気がする。

そんな気がした。


「先輩こそ、朝練ですか?」


「そ。本当は他の部員とやる予定だったんだけど、その子来なくなちゃったの。だから一人で練習してる。」


彼女は僕のことを少しだけ見つめて、見つめ合う。

そして手を差し出した。


「一緒にやる?練習。」


返事の代わりに、僕はその手を取った。

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