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17  作者: KyaneI-Camel
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空白

今日から、新しい人生が始まる。

少し大げさだけど、いままでとは違う、ずっと大きな何かが僕の前に立ちふさがっている気がした。

3度目の新1年生。今日僕は高校生になった。


初めての高校生活。

なんとなく、充実した楽しい高校生活になることを願って、僕は家を出た。

入学式早久、遅れるのは嫌なので、すこしだけ早めに家を出る。

ネクタイを付けたのも初めてだった。


いつもとは違う、歩き慣れない道を歩く。

街路樹の木々が揺れ、春を告げる。

眩しい太陽の光を浴びながら信号を待っていると、コンビニの横で野良猫が日向ぼっこしているのが見えた。

微笑ましい気持ちで猫を眺めていると、信号が変わった。

僕は再び歩き出す。


すこし早めに家を出たが、既に周りには僕と同じ、新入生と思われる人たちの姿が見えた。

道を間違えていないということに安堵し、辺りを見渡す。

この人たちが、これから高校生活を共にするかもしれない人たち。

そう思って観察していると、知らない誰かと目があって、なんだか気まずくなって目を反らした。

あんまりジロジロ見ないほうがいいかもな…

そう思って僕は下を向く。

同じ制服を来た前に人にピッタリとついて行く。

そうすれば学校につくはずだ。


…暫く歩くと、学校が見えてきた。

ここが、これから僕が通う学校…

そう思うと、なんだか大げさな気がしてきた。

期待と不安を抱えながら、僕は体育館へと向かった。

ポケットからメモを取り出す。

9時から入学式、9時45分から始業式、10時15分から新入生歓迎会。

新入生歓迎会では部活動紹介、簡単なレクリエーションが行われるそうだ。

今の時間はまだ8時14分。

開始までまだ46分もある。

すこし早く来すぎてしまったようだ。


校門をくぐり、人の流れのまま進むと、中庭に人が集まっていた。

新学期のクラスが張り出されているらしい。

えーと、僕の名前は…あった。1年c組17番。

同じクラスの人たちの名前を見ながら、どういう人かを想像しようとするが、僕の乏しい妄想力で作られた顔はまたたく間に記憶からこぼれ落ち、そして消えてしまった。

待ち時間をどうやって過ごすか。

周りの人に話しかけたほうがいいだろうか。

でも、知らない人と喋るのはすごく緊張する。

僕は中庭の影に隠れて、話そうか話そうかとオドオドしていた。

でも結局、話しかけることはできなかった。


僕は少しだけ、学校を探検してみることにした。

高校生にもなって探検だなんてずいぶん幼稚だと思ったが、他にやることもない。

椅子に座って待っていればよかったが、少しの好奇心が僕を揺らした。


体育館シューズを履いたまま、僕は校舎へと立ち入る。

校舎の中は誰もいなかった。


「あのー。」


返事はない。

廊下に音が反響して、風の吹く音が聞こえた。

なんだか僕は恐ろしくなって引き返そうとする。

そんな時に、あるものが目に入った。


……これは…ツルギ?

一見丈夫で硬そうな光沢を放っているが、硬いわけでは無さそうだった。

ツルギがあった部屋のプレートを見てみる。

そこには”演劇部”と書いてあった。


「この学校、演劇部なんてあったんだ。」


演劇部なんて聞いたことがなかった。

学校見学でも、僕は気づかずにスルーしたのだろう。


演劇か…


そういえば、小学生でやった以降、関わる機会がなかった。

他の子供達は劇とか嫌だとか練習したくないとか色々言っていたけど、僕は演劇が意外と好きだ。

演じている間だけは、何者でもない自分から、誰かになれるような気がする。


「何をしているの?」


僕が演劇部を覗いていると、後ろから声をかけられ飛び上がる。

心臓が飛び出るかと思った。


振り向くとそこにいたのは、春の日差しを体に纏った、綺麗な顔立ちの女の子だった。


「き、綺麗ですね」


咄嗟に出た言葉はそんな口説き文句のような一言で、言ってすぐに後悔が押し寄せる。

軽蔑されるんじゃないか。

そして、問の回答にもなっていない。

恐る恐る彼女の方を見ると、目線を下に反らし、頬を赤く染めていた。


「恥ずかしいです…」


その仕草に思わずドキッとしてしまう。


「あ、あの…!こ、ここれはっ」


必死で何か弁明しようとするもいい言葉が出てこない。

挙動不審になりながら眼の前の女の子をどう扱うべきか、必死で考えていた。


「フフ。私の演技どうだった?」


「え?」


彼女は自慢げにそう言った。

一瞬理解が追いつかなかったが、すぐに理解した。

からかわれたのだ。

恐らく、この学校の演劇部の部員なのだろう。


「すごい演技です。一瞬本当に照れたのかと思いました。」


「褒められるのには慣れてるの。あなたもぜひ演劇部に入部してね。あなたの挙動不審な演技、上手だったわ。」


演技じゃないんだけどな…

そんな風に言ったかと思うと、彼女は部室へと入っていった。

僕はこの場にいてはいけないような気がして、この場を離れた。

その日受け取った部活動志望書にはいつの間にか演劇部と書かれていた。

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