14 出港許可下りず
イシュマール号の貨物室では、ジスとエイカが積み込まれた物資の最終確認をしていた。
「ドクター、どうしました? 購入したもので何か不足がありましたか?」
「ねぇ、これ見て。なんだと思う?」エイカが大きくため息をつく。
コンテナの蓋を開けてジスに見せると、そこには沢山の種類の袋ラーメンがびっしりと詰め込まれていた。更に隣には、さまざまなスナック菓子のケースが山積みになっている。
エイカはコンテナの蓋を手に持ったまま、ドカドカと階段を上ってラウンジへ上がり、ウェンが寝転がっているソファーを思い切り蹴飛ばした。
「うわあ! なにすんだ!」
「数日分の生鮮食品、長期間保存用の携帯食、そして浄水器が故障したとき用の飲料水って、私言ったわよね?」
彼女がこのトーンで話す時は、本気で怒っていることをウェンは数々の経験から学んでいた。
「大体合ってるだろ?……わー! よせ、ソファーを蹴るなって!」
「ねぇウェン、どれがジュースだっけ? このオレンジのは、あ、これはお酒だ」
キッチンで冷蔵庫のドアを開け、リゲルがのんびりとした声で言った。
「カーマイン・ニコラス・ウェン!! いったい何考えてるのあなた?」
「一応食えるものを買ってあるだろうが……あ、イテッ!」
エイカがコンテナの蓋を再びウェンの頭に振り上げたそのとき——
ガタン!
大きな音とともに船体が揺れた。
「なんだ?」ウェンがソファーから飛び起きた。
「アームが再度ロックされたようです」
貨物室から駆け上がってきたジスが、UNIを確認しながら言った。彼はそのまま操舵室へ急いだ。ウェンたちも慌てて後を追う。
「どうしたの?」リゲルが不安そうに聞いた。
「出港許可、1時間前に下りていたはずよね?」
「おいおいおい、なんだあれ、船の周りがセキュリティ・ドローンだらけだぞ」
ウェンが窓を見て声を上げた。
「理由は不明ですが、出港許可は取り消されて、タイタン・セジン・リング(T.S.R.)警察から下船命令が出ています。大人しく従ったほうが良さそうです」
エアロックの外には、T.S.R.P.Dと書かれた制服の警官たちが仏頂面でこちらを睨んで立っていた。
「お訊きしたいことがあるため、同行をお願いします」
右側の警官が無表情に告げ、もう片方が電磁警棒を構えた。
「ちょっと、誰も抵抗してないでしょ? 子供も居るのよ?」
エイカが声を上げたが、警官たちは取り合わなかった。
「では、こちらへ」
彼らは通路の別のエアロックから小型の警察用シャトルに乗るよう案内され、そのまま備え付けの狭いセルに放り込まれた。警察用シャトルはリングの外壁をゆっくりと進んでいった。




