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ルミナ☆オーバードライブ  作者: コルミ
第12話 英雄と人形(ふれあい)
65/67

ep.65 からあげ

 公園を目指して歩く三人。ベルトで琴乃の腰に繋がれたノワールがフワフワと、あえてヒロ男の目の前で風船のように揺れている。

 ヒロ男は死んだ魚のような目で揺れるノワールを眺めながら歩く。


「……。今日もいる(・・)ね」

「うん。警察署があんなになっちゃったしね、どさくさに紛れて逃げたみたいだ」


 琴乃とコーセーはチラッと後方を確認すると、電柱の影を渡り、長い黒髪をゆらゆらはみ出させながら、警察に連れていかれたはずの疑似ちゃんがしっかりついてきていた。


「警察は後片付けと情報操作でいっぱいいっぱいみたいだし、逃げた疑似ちゃんを探す余裕が無いんだろうね」

「あんな大事件なのにぜんぜんニュースに流れないもんね。私、日本でもこういう情報操作やるんだって初めて知った…」


 そう話す琴乃の表情には少し落胆の色が浮かぶ。少なからずメディアの情報を信用していたのだろう。


「俺の友達に海外の時事ネタ漁ってるやつがいるんだけど、そいつ曰く日本でも情報操作は日常茶飯事らしいよ? もちろん全部が全部って訳じゃないけど、情報の正否や真偽は気に掛けた方がいいかもね」

「ふーん…。なんか寂しいね…」

「そうだね…」


 少ししんみりした雰囲気になる二人。そんな雰囲気を変えるため、コーセーは琴乃が喜びそうな情報を提供する。


「そういえばSNSに上がってた魔法少女ティアと魔法少女ルナの動画が軒並み消えてるの気づいた?」

「あ、うん! 朝見たら綺麗さっぱり無くなってて三度見くらいしたよ! すごくうれしい!」


 その話に嬉しそうに食いつく琴乃。

 そう、今回の警察署での大事件でも姿を現した例の二人の魔法少女。その存在をネットから抹消すべく、過去の動画もすべて消されたのだ。そして実は新たにアップロードすることもできなくなっている。完全な情報操作だ。


「おっかけの二人、今頃どんな顔してるのかな…。ちょっと可哀想かも」

「あんなのに同情することないよ! ノワールは『必要経費』とか言ってたけど、私は納得してなかったんだから!」


 二人の魔法少女に脳を焼かれ、ひたすらに二人の動画を撮影することに心血を注いだ馬鹿《リーダー》と小田。二人は今、動画を全削除したSNSの運営会社と不毛な争いの真っ最中である。


 コーセーと琴乃がおっかけの話で盛り上がる中、ヒロ男はじ…と疑似ちゃんを見ていた。ササッと隠れる疑似ちゃん。


「………、ふむ…」


 少し考え前を歩く二人に声を掛ける。


「なぁ、ちょっとコンビニ寄っていいか?」

「ん? いいけど、どうした?」

「お腹空いた?」

「ま、そんなとこ」


 ヒロ男の要望で三人は道すがらのコンビニに立ち寄り、皆でホットスナック(からあげ)を買った。そしてヒロ男だけ二人分買った。


「おーが、お前まさか…」

「あぁ、なんかあいつ顔色悪い気がしてさ(・・・・・・・・・)」


 そういうヒロ男は疑似ちゃんを見る。疑似ちゃんは再びササッと隠れ、チラ…と顔を覗かせている。


(……確かに少し顔色が悪いですね。おーがさんよく気がつきましたね?)

「昨日の元気な顔見てるからな」


 サラッと言うヒロ男だが、コーセーも琴乃も、そして身体の持ち主であるティオリアですら気がつかなかったのだ。すごい観察眼だった。


「で、どうやってそれ(・・)渡すんだ?」

「んー…、呼んでみるか?」

「呼ぶ???」


 琴乃が首を傾げる。するとヒロ男はおもむろに疑似ちゃんに向かってちょいちょいと手招きをし始めた。


「おいおーが…、いくらなんでもそれは…」

「敵だよ…? 来るわけないでしょ…」


 しかしヒロ男の手招きを見た疑似ちゃんは少し首を傾げたかと思うとひょいっと電柱の影から出てきて、てててーと小走りしてきた。


「うそだろ…、素直か…」

「えぇぇぇ…」


 今まで隠れてついてきていたのが嘘のように大胆に姿を現した疑似ちゃんに、コーセーと琴乃は困惑を隠せない。


「はは、ほんとに来やがった」


 呼んだ張本人のヒロ男も苦笑いを浮かべた。



「………」


 目の前に立ち、無言でヒロ男を見る疑似ちゃん。そんな疑似ちゃんにヒロ男はからあげが入った紙の器を持たせる。


「ほれ、食え。うまいぞ」

「……??」


 首を傾げている。持たされた物がなんなのかよくわかっていないようだ。


「食い物だよ。楊枝で刺して口に放り込め」


 ヒロ男は疑似ちゃんに見せるようにからあげを付属の楊枝で刺して持ち上げ、自分の口へ放り込む。


もぐもぐ

「うん、うまい」

「………」


 それを見て疑似ちゃんは手に持たされたからあげを凝視する。少し瞳孔が開いているように見える。


「我慢するなよ。食え食え」

もぐぅ


 ヒロ男が疑似ちゃんが持つからあげに楊枝を刺し、持ち上げたからあげを疑似ちゃんの口に捩じ込む。


もぐもぐもぐもぐ

「……! ……! ……!」


 もぐもぐ咀嚼する疑似ちゃんの目がキラキラと輝く。溢れ出る肉汁の虜になったようだ。

 疑似ちゃんはヒロ男が持っていた楊枝を貰い、自分でからあげを口に運び始める。


もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ

「……! ……! ……!」

「ははは! うまいか! 良かったな!」


 幸せそうにからあげを頬張る疑似ちゃんを見て、ヒロ男も笑いながらからあげを食べる。

 その様子を見守っていたコーセーと琴乃は微笑んで小さくため息をつき、一緒にからあげを食べ始めた。

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